共通速報

令和9年度改定 検討チーム第61回|当事者団体の要望と「障害福祉報酬」への名称変更

公開: 2026年8月4日更新: 2026年8月4日

令和8年8月3日、厚生労働省とこども家庭庁が開く障害福祉サービス等報酬改定検討チームの第61回会合が開かれました。議題は関係団体ヒアリング⑥で、当事者団体・医療系団体11団体が意見を述べています。

あわせて事務局から、報酬の名称を変更する方針が示されました。

本記事は公開された配布資料に記載されている事実のみを扱います。ヒアリングは団体が意見を述べる場であり、述べられた内容が改定に反映されると決まったものではありません


決定事項:「障害福祉サービス等報酬」→「障害福祉報酬」#

事務局資料により、名称を変更する方針が示されました1

項目変更後
報酬の呼称障害福祉報酬
検討チーム名障害福祉報酬改定検討チーム次回より
調査名「障害福祉サービス等経営実態調査」→「障害福祉経営実態調査」など、順次同様の方針で変更(現在実施中の調査等は除く

事業所の書類は書き換え不要#

理由として、次の点が挙げられています1

「障害福祉サービス等報酬」という名称は、法令用語ではないが、現在、本検討チーム名も含め、広く使用されている。 一方で、診療報酬や介護報酬と比べて名称が長く、また、「等」が含まれるなど、わかりづらく、世間に浸透しづらい面がある。

法令用語ではないという点が重要です。障害者総合支援法や指定基準省令の条文が変わるわけではないため、指定申請や請求で用いる正式な用語に影響はありません。変わるのは行政が用いる通称と、調査・会議体の名称です。

なお「等」には、法第5条が定義する「障害福祉サービス」に含まれない障害者支援施設や相談支援、障害児支援の関係が含まれると説明されています1


就労系に直結する意見#

ヒアリングでは、就労系事業者団体ではなく当事者団体から、就労系の報酬構造に踏み込んだ意見が出ました。

B型は「毎日通所できない人を受け入れるほど報酬が下がる」(日本身体障害者団体連合会)#

書面で提出された意見です2

就労継続支援B型は、毎日通所できない利用者を多く受け入れる事業所ほど工賃が低くなり、報酬も下がる仕組みのため経営が厳しい。 最低賃金は大幅に上がる一方、サービス費はほとんど増えず一部は減額(令和3年から令和7年までに約21%上昇しているが、就労継続支援B型のサービス費(Ⅳ)は令和6年度の改定時に約1%上昇したものの、(Ⅴ)〜(Ⅵ)は、約4%減じられている。)され、人材確保も困難である。

B型の基本報酬は平均工賃月額で区分が決まる仕組みです(B型の報酬体系平均工賃月額の計算方法)。平均工賃月額は工賃支払総額を延べ利用者数で割って算出するため、通所日数の少ない利用者を多く受け入れると分母が増え、平均が下がる構造になっています。この構造そのものへの指摘です。

同団体は送迎についても、小規模事業所では1回の送迎で平均10人以上に対応する人員・車両の確保は困難であり、利用定員20人未満の事業所でも半数以上の利用者を送迎する困難性は変わらず現実的ではないと述べています2送迎加算の算定要件に関わる論点です)。

福祉専門職員配置等加算に言語聴覚士を(日本発達障害ネットワーク)#

就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労選択支援の福祉専門職員等配置加算に言語聴覚士を追加3

現行の福祉専門職員配置等加算の対象職種に関する要望です。あわせて自立訓練(生活訓練)の同加算・個別計画訓練支援加算への作業療法士の追加も求めています3

専従要件の緩和・兼務を認める柔軟な対応(日本医師会)#

生産性向上の文脈で、次の指摘がありました4

効率化に向けては、報酬の基準や要件について、サービスの質の担保を前提として、専従要件の緩和や兼務を認める等の柔軟な対応も検討課題である。

現行の兼務ルールはサビ管の兼務ルールで解説しています。


児童系に直結する意見:「18歳の壁」#

全国医療的ケアラインは、児童期と成人期で評価指標が断絶していることを構造的課題として挙げました5

児童期(児発・放デイ)では「医療的ケアスコア」による評価が行われますが、18歳で成人期(生活介護)に移行した途端、食事や入浴を基準とする「障害支援区分」に評価基準が変わります。…それにもかかわらず基本報酬が約40%も急落する構造により、事業所は看護師を雇用できず利用児の受け入れが困難な状況にある。

提案は、児童期の医療的ケア判定スコアを成人期(生活介護等)にもシームレスに適用し、必要な看護師配置と基本報酬を連動させることです5

同団体は、医療技術の進歩により**歩行や不規則な動きが可能な「動ける医療的ケア児者」**が増えている一方、現行制度は「医療的ケア=寝たきり」という前提で設計されている部分が多いとも指摘しています5


その他の主な意見#

団体主な内容
全日本ろうあ連盟視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の継続(ろう重複支援における専門的人材確保の基盤)6
日本視覚障害者団体連合同行援護でガイドヘルパーが運転する車による移動時間を報酬対象に/過疎地の長時間利用に特化した報酬体系の新設/視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の増額・人員配置の緩和/歩行訓練士の配置基準7
日本ALS協会重度訪問介護を担う人材の処遇改善/小規模事業所のICT化投資支援就労・就学時の重度訪問介護利用(「生活支援」と「社会参加支援」の分断解消)8
日本重症心身障害福祉協会療養介護サービス費の抜本的見直し/ICT機器・介護ロボット導入費用の補助充実/医療型短期入所の機能強化/療養介護と生活介護・重度訪問介護等との併用の柔軟化9
全国重症心身障害児(者)を守る会短期入所の拡充(受け入れ先の偏在・地域格差、年齢制限)10
全国自立生活センター協議会通勤・通学支援の見直し/共同生活援助利用者の個別ヘルパー利用の恒久化/意思決定支援の報酬化/基本単価引上げ・物価スライド方式11
日本難病・疾病団体協議会対象疾病名による限定・症状変動が反映されない認定調査・受け入れ事業所の少なさ12
日本医師会地域障害福祉構想」の早急な議論と2040年に向けた提供体制の構築4

ヒアリングはこれで⑥回目#

関係団体ヒアリングは、第56回(令和8年6月15日)から始まり、本日の第61回で⑥回目です。実施要領では6〜7回程度・令和8年6月〜8月に実施するとされ、対象は53団体が挙げられています13

第55回で示されたスケジュール(案)では、令和8年8月は「関係団体ヒアリングの意見まとめ、論点整理」の時期にあたります。ただし第62回の議題は本記事の執筆時点では公表されていません

検討の全体像とこれまでの経緯は令和9年度報酬改定 検討チームの動向で解説しています。


よくある質問#

Q. 名称が変わると、指定申請や請求の書類も変わりますか?#

変わりません。「障害福祉サービス等報酬」は法令用語ではないと明記されており1、法令の条文が変更されるものではありません。変わるのは行政が用いる通称、会議体名、調査名です。

Q. 検討チームの名称はいつから変わりますか?#

資料は「次回より」としています1。したがって第62回からです。

Q. ヒアリングで出た意見は改定に反映されますか?#

ヒアリングは団体が意見を述べる場であり、反映が決まったものではありません。第55回で示されたスケジュール(案)では、この後に論点整理・各サービスの報酬等の在り方の検討が続きます。

Q. B型の報酬が下がるという指摘は事実ですか?#

日本身体障害者団体連合会の意見として、令和3年から令和7年までに最低賃金が約21%上昇する一方、B型サービス費(Ⅳ)は令和6年度改定時に約1%上昇、(Ⅴ)〜(Ⅵ)は約4%減と述べられています2。これは同団体の意見として示された数値です。

Q. 「18歳の壁」とは何ですか?#

児童期は「医療的ケアスコア」で評価される一方、18歳で生活介護に移行すると「障害支援区分」に評価基準が変わり、基本報酬が約40%急落するという構造を指した表現です(全国医療的ケアラインの意見)5


関連記事#


Footnotes#

  1. 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス等報酬の名称について」(第61回 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料1・令和8年8月3日)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731488.pdf 2 3 4 5

  2. 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料・書面実施分)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731490.pdf 2 3

  3. 一般社団法人日本発達障害ネットワーク「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料8)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731417.pdf 2

  4. 公益社団法人日本医師会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料10)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731419.pdf 2

  5. 全国医療的ケアライン「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料6)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731415.pdf 2 3 4

  6. 一般財団法人全日本ろうあ連盟「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料1)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731410.pdf

  7. 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料5)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731414.pdf

  8. 一般社団法人日本ALS協会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料2)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731411.pdf

  9. 公益社団法人日本重症心身障害福祉協会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料3)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731412.pdf

  10. 全国重症心身障害児(者)を守る会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料4)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731413.pdf

  11. 全国自立生活センター協議会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料7)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731416.pdf

  12. 一般社団法人日本難病・疾病団体協議会「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等」(第61回 ヒアリング資料9)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731418.pdf

  13. 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス等報酬改定に向けた関係団体ヒアリングの実施について」(第61回 参考資料)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001731421.pdf

この内容、無料セミナーで専門家がくわしく解説します。

セミナーに申し込む(無料)