サービス管理責任者(サビ管)の兼務について、「常勤かつ専従が義務」と説明されることがあります。しかし指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)の条文を読むと、サビ管に「常勤かつ専従」を一律に義務づける規定はありません。専従には「利用者の支援に支障がない場合」という例外が条文上あり、常勤は「サビ管のうち一人以上」が要件です1。
兼務の可否で迷う場面の多くは、国の基準が明示的に決めている部分と、指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の判断に委ねられている部分が混ざって語られていることが原因です。本記事では、条文で確定できる範囲と、確認が必要な範囲を分けて整理します。
国の基準が定めていること(結論)#
就労継続支援A型・B型を例にすると、根拠は次のとおりです(B型は第199条によりA型の第186条等を準用)12。
| 論点 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 専従 | 第186条第3項 | 従業者は専ら当該事業所の職務に従事する者でなければならない。ただし、利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない |
| 常勤 | 第186条第5項 | サービス管理責任者のうち、一人以上は常勤でなければならない |
| 管理者の兼務 | 第51条(A型は第187条、B型は第199条により準用) | 管理者は専らその職務に従事する者。ただし管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所・施設等の職務に従事させることができる |
| 多機能型 | 第215条第2項 | 一体的に事業を行う多機能型事業所を一の事業所とみなし、利用者数の合計60以下ならサビ管1以上(61以上は40人ごとに1加算)。うち一人以上は常勤 |
| 従たる事業所 | 第79条第2項(A型は第187条、B型は第199条により準用) | 主たる事業所・従たる事業所それぞれ1人以上を常勤かつ専従とする義務の対象から、サービス管理責任者は除かれている |
読み取れる結論は3つです。
- 専従は「原則」であって絶対ではない。条文自体に「利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない」という例外が置かれています。
- 常勤義務は事業所単位で「一人以上」。サビ管を複数配置する規模なら、2人目以降が非常勤であることは条文上許容されます。
- 管理者との兼務は、管理者側の条文が明示的に許容しています(管理上支障がない場合)。
多機能型・従たる事業所での扱い#
多機能型は「1つの事業所」とみなせる#
多機能型事業所は、一体的に行う事業所を一の事業所とみなして、利用者数の合計に応じたサビ管を配置すれば足ります2。合計60人以下なら1人で複数サービスをカバーできる、という趣旨です。
これを裏側から支えるのが告示第544号第二号で、配置されるサビ管が2以上のサービスに係るサビ管の要件に該当する場合の多機能型事業所を、厚生労働大臣が定める多機能型事業所としています3。つまり、就労継続支援B型と生活介護を多機能型で行うなら、そのサビ管は両方のサービスの実務経験要件を満たしている必要があります。実務経験の判定は「サビ管の実務経験要件 判定ガイド」を参照してください。
従たる事業所ではサビ管が明示的に除かれている#
主たる事業所と一体的に管理運営する従たる事業所を置く場合、それぞれ1人以上を常勤かつ専従とする義務がありますが、この条文は括弧書きで**「サービス管理責任者を除く」**としています1。サビ管を主・従の両方で見る体制が想定されている構造です。
国の基準が定めていないこと#
一方で、次の論点は指定基準・告示のいずれにも明示の規定がありません。
- サビ管と職業指導員・生活支援員など直接処遇職員との兼務の可否(「不可」と書かれた条文はありません。第186条第3項の「利用者の支援に支障がない場合」の解釈問題になります)
- 管理者・サビ管・世話人等の3職種兼務の可否(共同生活援助でよく問題になる論点)
- 常勤換算上の按分方法(兼務した場合に、それぞれの職務にどう時間を割り振るか)
これらは指定権者ごとの手引き・Q&Aで扱いが示されており、同じ体制でも自治体によって判断が分かれることがあります。指定申請前に、事業所所在地の都道府県・指定都市・中核市の手引きで確認してください。本記事で「条文上こうなっている」と書いた範囲を超えて、全国一律の正解を提示することはできません。
人員配置が足りなくなったときの打ち手#
兼務の可否と併せて押さえておきたいのが、告示第544号のみなし規定です3。
- サビ管が配置されている事業所では、個別支援計画の作成等の業務を基礎研修修了者に行わせることができ、サビ管に加えて基礎研修修了者を置くことで、置くべきサビ管の数に達しているものとみなすことができます。
- やむを得ない事由によりサビ管が欠けた場合、事由発生日から1年間は、実務経験者である配置者を「みなしサービス管理責任者」として要件充足とみなします(基礎研修修了者が事由発生日以前から配置されていた場合は、実践研修修了者となるまで最大2年)。
欠如が続いた場合の減算は「サービス管理責任者等欠如減算」で扱っています。
実務チェックリスト#
- サビ管を複数配置している場合、1人以上が常勤である体制になっているか(全員常勤である必要はない)
- 兼務させる職務について、「利用者の支援に支障がない」と説明できる勤務実態(時間配分・記録)があるか
- 管理者と兼務させる場合、管理業務に支障がないことを説明できるか
- 多機能型の場合、そのサビ管が提供する各サービスの実務経験要件を満たしているか
- 従たる事業所を設置している場合、常勤・専従の要件からサビ管が除かれていることを踏まえた配置になっているか
- 兼務体制について、指定権者の手引き・Q&Aで自治体固有の取扱いを確認したか
- 個別支援計画の作成等を基礎研修修了者に担わせる余地を検討したか
よくある質問#
Q. サビ管は常勤でなければなりませんか?#
事業所に配置するサビ管のうち一人以上が常勤であることが要件です1。サビ管を2人以上配置する場合、全員が常勤である必要はありません。
Q. サビ管は専従でなければなりませんか?#
従業者は専ら当該事業所の職務に従事することが原則ですが、条文には**「ただし、利用者の支援に支障がない場合はこの限りでない」**という例外が置かれています1。「専従が絶対」ではなく、支障の有無で判断される構造です。
Q. 管理者とサビ管を兼務できますか?#
管理者の条文が、管理上支障がない場合に当該事業所の他の職務に従事させることを認めています1。したがって条文上は可能です。実際の運用(勤務時間の按分など)は指定権者に確認してください。
Q. サビ管が生活支援員を兼務することはできますか?#
これを直接禁止する条文はありません。第186条第3項の「利用者の支援に支障がない場合」に当たるかどうかの判断になり、指定権者によって取扱いが分かれる論点です。事前に確認してください。
Q. 多機能型で1人のサビ管が複数サービスを担当できますか?#
できます。一体的に事業を行う多機能型事業所を一の事業所とみなし、利用者数の合計が60以下であればサビ管1人以上で足ります2。ただし、そのサビ管が2以上のサービスに係るサビ管の要件に該当していることが前提です3。
Q. サビ管が急に退職した場合、すぐに減算になりますか?#
やむを得ない事由で欠けた場合、事由発生日から1年間は、実務経験者である配置者をみなしサービス管理責任者として要件充足とみなす規定があります3。
制度上の根拠#
- 指定基準第186条第3項・第5項(従業者の専従、サビ管の常勤)、第51条(管理者)、第79条第2項(従たる事業所/サビ管を除く)、第199条(B型への準用)1
- 指定基準第215条第2項(多機能型の特例)2
- 告示第544号 第二号(多機能型のサビ管要件)、第一号ホ・ヘ(基礎研修修了者によるみなし、欠けた場合のみなし)3