人員欠如減算とは#
人員欠如減算は、障害福祉サービス事業所が省令で定められた人員配置基準を満たしていない場合に適用される減算です1。対象となる職種は、サービス提供に直接関わる直接支援職員と、**サービス管理責任者(サビ管)**の2つに大別されます。
人員基準を下回った状態が続くと、報酬が大幅に減額されるだけでなく、最悪の場合は指定取消しにつながる重大なペナルティです。本記事では、減算率・減算開始時期の正確なルールから、実務的な予防策までを解説します。
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サービス提供職員欠如減算#
サービス提供職員(職業指導員、生活支援員、就労支援員など)の配置が人員基準を下回った場合に適用される減算です。
減算率#
| 期間 | 算定方法 |
|---|---|
| 減算開始から2か月目まで | 所定単位数の**70%**で算定(30%減算) |
| 3か月目以降 | 所定単位数の**50%**で算定(50%減算) |
減算は、基準を下回っている月の利用者全員の基本報酬に適用されます2。
減算開始時期(1割ルール)#
人員基準を下回った場合の減算開始時期は、不足の度合いによって異なります。この仕組みは「1割ルール」と呼ばれています2。
| 不足の度合い | 減算開始時期 | 猶予の有無 |
|---|---|---|
| 基準に対して10%を超える不足 | 翌月から減算開始 | 猶予なし |
| 基準に対して10%以内の不足 | 翌々月から減算開始 | 翌月末までに回復すれば減算なし |
たとえば、常勤換算で3.0人必要な事業所の場合を考えます。
- 2.6人に減少(不足率13.3%=10%超)→ 不足が生じた月の翌月から減算開始
- 2.8人に減少(不足率6.7%=10%以内)→ 不足が生じた月の翌々月から減算開始(翌月末までに3.0人以上に回復すれば減算なし)
サービス管理責任者欠如減算#
サビ管が不在となった場合は、直接支援職員の欠如とは異なる減算ルールが適用されます2。
減算率#
| 期間 | 算定方法 |
|---|---|
| 欠如の翌々月から4か月間 | 所定単位数の**70%**で算定(30%減算) |
| 5か月目以降 | 所定単位数の**50%**で算定(50%減算) |
サビ管の欠如については、欠如が発生した月の翌月末までに後任を配置できれば減算は適用されません。この期間内に採用・配置を完了することが重要です。
みなし配置の特例#
やむを得ない事由(退職・病休など事業者の責に帰さない事由)によりサビ管が欠如した場合、告示第544号は次のように「みなし」を認めています3。
- 実務経験の要件を満たす者を、事由の発生日から1年間、研修要件を満たしているものとみなす
- そのうち、事由の発生日以前から引き続き配置されていた基礎研修修了者(事由発生日後に修了した者を除く)は、**実践研修を修了するまでの間(事由の発生日から2年間が限度)**みなす
つまり「最長2年」が使えるのは、欠如前から在籍していた基礎研修修了者だけで、それ以外は1年です。みなしの期間内に、研修要件を満たすサビ管を確保する必要があります。手続きは指定権者に確認してください。
対象となる職種#
人員欠如減算の対象となる主な職種をサービス別に整理します1。
| サービス | 対象職種 | 人員基準の目安 |
|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | 職業指導員、生活支援員 | 合計で利用者10:1(7.5:1は報酬のサービス費区分の要件) |
| 就労継続支援B型 | 職業指導員、生活支援員 | 合計で利用者10:1(6:1・7.5:1は報酬のサービス費区分の要件) |
| 就労移行支援 | 職業指導員、生活支援員、就労支援員 | 職業指導員+生活支援員で6:1、就労支援員で15:1 |
| 生活介護 | 生活支援員、看護職員 等 | 利用者の障害支援区分に応じて異なる |
| 共同生活援助 | 世話人、生活支援員 | 利用者の障害支援区分に応じて異なる |
| 日中活動系など | サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1名以上、61人以上は40人ごとに1名追加(共同生活援助は30人以下で1名以上、30人ごとに追加。自立生活援助は60人ごと) |
常勤換算の計算方法#
人員基準の充足は常勤換算方法で判定します。常勤換算とは、各職員の勤務時間数を常勤職員の所定労働時間で割ることで、非常勤職員も含めた「常勤何人分に相当するか」を算出する方法です1。分母の下限(週32時間)や短時間勤務の扱い、利用者数の数え方は「人員配置の利用者数と常勤換算の数え方」で整理しています。
常勤換算数 = 各職員の1か月の勤務時間の合計 ÷ 常勤職員の1か月の所定労働時間
たとえば、常勤の所定労働時間が月160時間の事業所の場合は以下のとおりです。
| 職員 | 月間勤務時間 | 常勤換算 |
|---|---|---|
| 常勤職員A | 160時間 | 1.0 |
| 非常勤職員B | 80時間 | 0.5 |
| 非常勤職員C | 120時間 | 0.75 |
| 合計 | 360時間 | 2.25 |
人員基準の充足は月単位で判定されます。月の途中で退職者が出た場合でも、その月全体の常勤換算数で基準を満たしているかが確認されるため、退職が分かった時点で速やかに補充の手配を始めることが重要です。
突発的な人員不足の減算猶予(令和8年5月28日の通知改正)#
令和8年5月28日の留意事項通知の一部改正で、突発的な人員不足に対する減算猶予の特例が設けられました4。
特例措置の概要#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、人員基準上必要とされる員数から1割の範囲内で減少した場合 |
| 猶予期間 | 人員欠如の発生が生じた日の属する月の翌々月までの間、減算の適用を猶予 |
| 回数制限 | 1年に1回に限る |
| 報告 | 職員の確保に係る取組と、一時的に職員を確保できないやむを得ない事情を別紙様式に記載し、発生月の翌月までに都道府県知事に報告(報告時点で有効な求人票の写しを添付) |
適用の要件#
特例措置の適用を受けるには、以下の対応が必要です。
- 公共職業安定所(ハローワーク)、または都道府県ナースセンター・福祉人材センター等の無料職業紹介事業を活用して職員の確保に取り組んでいること
- 民間の職業紹介事業者を利用する場合は、適正な有料職業紹介事業者の認定制度による適正認定事業者を含むこと
- 自ら採用情報をウェブサイトで公表するなど、職員の確保に積極的に取り組むことが望ましいとされています
- 一部の職員に過度な業務負担がかからないよう、適正な労働時間管理と体制の整備に努めること
- 上記の取組とやむを得ない事情を別紙様式で、発生月の翌月までに都道府県知事へ報告すること4
この特例は、1割の範囲内の欠如について定めたもので、サービス管理責任者の欠如については触れていません4。
この特例措置は、予期しない退職や病気等による一時的な人員不足を想定した制度であり、恒常的な人員不足に対して適用されるものではありません。
予防策#
採用・配置管理#
- 退職リスクの把握: 職員の退職意向を定期的に確認し、早期に対応する
- バックアップ人員の確保: 非常勤職員の登録や人材派遣の活用を検討する
- 資格取得の計画的推進: サビ管研修の受講計画を立て、複数の候補者を確保する
- 常勤換算の余裕: 基準ギリギリではなく、一定の余裕を持った配置を心がける
定期モニタリング#
- 毎月の常勤換算数の算出を定例業務として実施する
- 基準を下回りそうな場合は採用活動を早期に開始する
- サビ管研修の修了予定者をリストアップしておく
よくある質問#
Q. 退職により基準を下回った場合、いつから減算になりますか?#
減算の開始時期は不足の度合いによって異なります。基準に対して10%を超える不足の場合は翌月から、10%以内の不足であれば翌々月から減算が適用されます2。いずれの場合も速やかな人員補充が必要です。
Q. 産休・育休中の職員は常勤換算に含まれますか?#
産休・育休中の職員は実際の勤務実態がないため、常勤換算数には含まれません。代替職員の配置が必要です。なお、代替職員を確保した場合は、その職員の勤務時間を常勤換算に算入できます1。人員基準で常勤要件がある職員が産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得している期間は、その人員基準で求められる資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで人員基準を満たせます5(詳しくは「人員配置の利用者数と常勤換算の数え方」)。
Q. サビ管が急に退職した場合、すぐに減算されますか?#
サビ管の欠如については、欠如が生じた月の翌月末までに後任を配置すれば減算は適用されません。ただし、翌月末までに配置できない場合は翌々月から所定単位数の70%で算定されます2。
Q. 突発的な人員不足の減算猶予はどのような場合に使えますか?#
突発的で想定が困難な事象によるやむを得ない事情で、人員基準上必要な員数から1割の範囲内で減少した場合に、1年に1回限り、発生月の翌々月まで減算の適用が猶予されます。公共職業安定所等を活用した職員確保の取組などを満たし、発生月の翌月までに都道府県知事へ報告する必要があります4。
Q. 減算が適用された場合、利用者への通知は必要ですか?#
法令上の直接的な通知義務はありませんが、運営規程の変更として重要事項説明書の変更が必要となる場合があります。また、情報公表制度における運営状況の報告対象となります。
Footnotes#
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「障害福祉サービス等報酬に関する留意事項通知」 (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等」(平成18年厚生労働省告示第544号)(やむを得ない事由による欠如時のみなし規定) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8498&dataType=0&pageNo=1) ↩
-
厚生労働省・こども家庭庁「…基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」の一部改正(令和8年5月28日障発0528第1号)新旧対照表 第二 人員欠如に該当する場合の所定単位数の算定について ㈥(p.24) (https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/22e1d393/20260528_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_29.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知・障発第1206001号)第二 総論2(3) 常勤(産前産後休業・育児休業等の期間の非常勤による換算)pp.14-15 (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf) ↩