訂正(2026-10-19):旧版は、記録の保存期間を「完結の日から5年間」とし、文書ごとの「完結の日」の定義表と計算例を載せていました。指定基準が定めるのは「サービスを提供した日から5年間」で、「完結の日」の定義は基準にありません。また、旧版が電子保存の要件として挙げた「見読性・完全性・機密性」も、障害福祉の基準・解釈通知には書かれていません。いずれも一次情報に沿って書き直しました。
電磁的記録による保存とは#
障害福祉サービス事業所は、サービス提供に関する記録を整備し、一定期間保存する義務があります1。指定基準第224条第1項により、基準で書面で行うことが規定されている作成・保存等は、一部の例外を除き、書面に代えて電磁的記録(電子データ)で行うことができます2。
電子保存は、保管スペースの削減や検索のしやすさにつながります。本記事では、保存義務の範囲、電子保存の方法、利用者への電磁的方法による交付を、指定基準と解釈通知に沿って整理します。
この記事の内容を実務で回すならRakuco(ラクこ)の資料(無料)
保存義務のある記録と期間#
指定基準は、記録を2種類に分けています。居宅介護(第42条)、療養介護(第75条)を例にすると次のとおりで、生活介護など他のサービスも、第75条の準用等で同じ構造です1。
| 区分 | 基準の定め | 保存期間 |
|---|---|---|
| 従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録 | 「整備しておかなければならない」 | 基準に期間の定めなし |
| 利用者に対するサービスの提供に関する記録 | 「整備し、当該サービスを提供した日から五年間保存しなければならない」 | サービスを提供した日から5年間 |
療養介護(第75条第2項)では、5年間保存する記録が次の6つと列挙されています1。
- 個別支援計画(療養介護計画)
- サービスの提供の記録
- 市町村への通知に係る記録
- 身体拘束等の記録
- 苦情の内容等の記録
- 事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録
居宅介護(第42条第2項)は、記録の種類を列挙せず「利用者に対する指定居宅介護の提供に関する諸記録」としています1。
💡 保存期間の起算点は「サービスを提供した日」です。基準には、文書ごとの「完結の日」から数えるという定めはありません。請求書類・勤務記録・契約書などの保存期間は、指定基準の上記の規定とは別に、指定権者の条例や他の法令(税法・労働法令など)で定まる場合があるので、それぞれ確認してください。
指定基準の内容は、都道府県等の条例で定められます。保存期間を条例で別に定めている自治体もあるため、事業所の所在する自治体の条例も確認してください。
電子保存の方法(解釈通知)#
解釈通知は、基準第224条第1項による電磁的記録の作成・保存の方法を次のように示しています3。
| 項目 | 方法 |
|---|---|
| 作成 | 事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法、または磁気ディスク等をもって調製する方法 |
| 保存(ア) | 作成された電磁的記録を、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル、または磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法 |
| 保存(イ) | 書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた電磁的記録を、同様のファイルにより保存する方法 |
| その他 | 第224条第1項で電磁的記録により行うことができるとされているものは、上の作成・保存の方法に準じる |
あわせて、電磁的記録により行う場合は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」等を遵守することとされています3。
つまり、紙の記録をスキャンして保存すること(保存(イ))も、解釈通知が明示する方法です。
電子保存の選択肢#
保存先には次のような選択肢があります。どれを選ぶかは基準に定めがないので、事業所の規模や体制で選びます(以下は編集部による整理です)。
| 保存方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| クラウドサービス | 拠点の外にデータがあり、災害時にも残りやすい | 月額費用、通信環境、委託先の安全管理の確認が必要 |
| 社内サーバー・NAS | データを自社内で管理できる | 保守と、同じ建物で被災した場合の備えが必要 |
| 障害福祉の記録・請求ソフト | 記録と保存が一体になる | ソフト変更時のデータの書き出し方法を確認しておく |
個人情報の安全管理#
解釈通知が遵守を求める個人情報保護委員会のガイドラインは、事業者に安全管理措置(組織的・人的・物理的・技術的)を求めています4。電子保存では、たとえば次のような対策が考えられます(具体的な頻度等は編集部の目安で、基準の要件ではありません)。
| 対策 | 例 |
|---|---|
| アクセス制御 | 職員ごとに個別のIDを発行し、共有アカウントを避ける。職種に応じて閲覧・編集の権限を分ける |
| 退職者の管理 | 退職時に速やかにアカウントを無効化する |
| 記録の追跡 | 誰がいつ閲覧・変更したかを残せる仕組みを選ぶ |
| バックアップ | 定期的に自動で取り、事業所とは別の場所にも保管する。復元できるかを時々確かめる |
| 端末・通信 | OSやウイルス対策を更新し、暗号化された通信のサービスを選ぶ |
電磁的方法による交付#
利用者への交付・説明・同意・締結等のうち、基準で書面で行うことが規定されている(または想定される)ものは、相手方の承諾を得て、書面に代えて電磁的方法によることができます。相手方が利用者の場合は、障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ行うこととされています2。
- 承諾を得たことを記録に残しておきます。
- 利用者がデータを受信・閲覧できる環境にあるかを確認し、難しい場合は紙で交付します。
運営指導に備えるポイント#
運営指導では、記録の整備と保存の状況が確認されます。電子保存の事業所は、次の点を日頃から確認しておきましょう(編集部による整理です)。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 保存期間 | サービスを提供した日から5年間の記録が、欠けずに残っているか |
| すぐ出せるか | 指定された利用者・期間の記録を、画面表示や印刷ですぐに示せるか |
| スキャンの品質 | スキャンした記録が判読できるか |
| 個人情報の管理 | アクセス権限やバックアップが運用されているか |
紙からの移行手順#
紙で保管している記録を電子保存に移す場合の進め方の一例です(編集部による整理です)。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 現状把握 | 保管している記録の種類・量・保管場所を棚卸しします |
| 2. 方針決定 | 保存先(クラウド・サーバー等)と、電子化する記録の範囲を決めます |
| 3. 環境構築 | フォルダ構成、アクセス権限、バックアップを設定します |
| 4. 運用ルール | ファイル名の付け方、保存手順、スキャンの手順を文書にします |
| 5. 職員への周知 | 手順と個人情報の取扱いを職員に説明します |
| 6. 移行開始 | 新規作成分から電子保存に切り替え、過去分は段階的にスキャンします |
| 7. 運用確認 | 数か月後に運用状況を確認し、改善します |
移行中は紙と電子が混在するので、どちらが正本かを決めておくと混乱を防げます。
よくある質問#
Q. 紙の記録をスキャンして電子保存できますか?#
できます。解釈通知は、書面をスキャナ等で読み取ってできた電磁的記録をファイルで保存する方法を、保存の方法の一つとして示しています3。判読できる品質で読み取ってください。
Q. 保存期間はいつから数えますか?#
利用者に対するサービスの提供に関する記録は、そのサービスを提供した日から5年間です(例:居宅介護は第42条第2項)1。条例で別の定めがある場合はそちらに従います。
Q. クラウドサービスに保存してもよいですか?#
基準・解釈通知は保存先を限定していません。電磁的記録により行う場合は、個人情報保護委員会のガイドライン等を遵守することとされているので3、委託先の安全管理(アクセス管理、暗号化、データの扱い)を確認したうえで選んでください。
Q. 電子保存に切り替えたら、紙の原本は捨ててよいですか?#
基準第224条第1項は、書面に代えて電磁的記録で保存できるとしています2。廃棄してよいかの判断に迷う書類(署名・押印のある契約書など)は、指定権者に確認してください。
Q. 利用者に個別支援計画をメールで渡してもよいですか?#
利用者の承諾を得れば、電磁的方法で交付できます。障害の特性に応じた配慮が必要です2。
Footnotes#
-
指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第42条(居宅介護・記録の整備)、第75条(療養介護・記録の整備)、第93条(生活介護への準用) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第224条(電磁的記録等) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知・障発第1206001号)第十七 雑則 2 文書の取扱いについて(1)電磁的記録について(pp.253-254) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容 (https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/) ↩
