障害福祉サービスの報酬算定の仕組み#
障害福祉サービスの報酬は、単位数 × 地域区分単価という計算式で算出されます1。この仕組みは介護保険制度と同様の構造であり、サービスの種類・事業所の規模・職員配置・各種加算などに応じて単位数が決まり、事業所の所在地に応じた地域区分単価を乗じることで、最終的な報酬額が確定します。
本記事では、障害福祉サービスの報酬算定に関する基本的な仕組みを、初めての方にもわかりやすく解説します。
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単位数とは#
単位数は、サービスの量と質を数値化したものです。報酬額を構成する要素は、以下の3つに分けられます。
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 基本報酬 | サービスの種類・定員規模・利用者の障害支援区分・職員配置基準等に応じた基本の単位数です |
| 加算 | 一定の要件を満たした場合に基本報酬に上乗せされる単位数です |
| 減算 | 基準を満たしていない場合に基本報酬から差し引かれる単位数です |
報酬額の計算式は以下のとおりです。
報酬額 = 単位数(基本報酬 + 加算、減算があれば反映後)× 1単位の単価
減算の多くは「所定単位数の70%で算定」のように割合で定められているので、単位数を差し引くのではなく、所定単位数に割合を掛けて反映します。
たとえば、就労継続支援B型の基本報酬が600単位で、送迎加算21単位が算定される場合、合計621単位に地域区分単価を乗じた金額が報酬額となります。
地域区分とは#
地域区分は、人件費の地域差を報酬に反映するための仕組みです。告示第539号は、全国を1級地〜7級地と「その他」の8区分に分け、区分とサービスの種類ごとに1単位の単価を定めています2。
| 区分 | 主な地域(告示に列挙された市区町村の例) |
|---|---|
| 1級地 | 東京都特別区 |
| 2級地 | 横浜市・川崎市・大阪市、東京都の調布市・町田市・狛江市・多摩市 |
| 3級地 | さいたま市、千葉市、名古屋市、東京都の八王子市・武蔵野市・三鷹市等、鎌倉市、芦屋市 |
| 4級地 | 神戸市・西宮市、相模原市・横須賀市・藤沢市、豊中市・吹田市、船橋市 |
| 5級地 | 水戸市、京都市、広島市、福岡市、堺市、大津市、川口市、市川市 |
| 6級地 | 仙台市、宇都宮市、高崎市、岐阜市、静岡市、川越市、奈良市 |
| 7級地 | 札幌市、新潟市、金沢市、長野市、浜松市、岡山市、高松市、北九州市 |
| その他 | 1〜7級地に列挙されていない全ての地域 |
どの市町村がどの区分かは、告示第539号が都道府県ごとに列挙しています2。「その他」は7級地とは別の区分で、すべてのサービスで1単位10円です。
地域区分は、事業所の所在地の市町村単位で決定されます。利用者の住所地ではなく、サービスを提供する事業所が所在する市町村の区分が適用される点に注意してください。
単価の計算方法#
1単位の単価は、10円に、告示第539号が地域区分×サービスの種類ごとに定める割合を乗じた額です2。告示は割合を「千分の千百十四」のように定めているので、そのまま10円に掛ければ単価になります(千分の千百十四なら11.14円)。同じ地域区分でも、サービスの種類が違えば単価は異なります。
1級地(東京都特別区)の単価#
| サービスの種類 | 告示の割合 | 1単位の単価 |
|---|---|---|
| 就労継続支援(A型・B型) | 千分の千百十四 | 11.14円 |
| 自立訓練・就労選択支援・就労移行支援 | 千分の千百十八 | 11.18円 |
| 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・短期入所・重度障害者等包括支援・就労定着支援・自立生活援助・地域相談支援・計画相談支援 | 千分の千百二十 | 11.20円 |
| 生活介護 | 千分の千百二十二 | 11.22円 |
| 施設入所支援 | 千分の千百三十二 | 11.32円 |
| 共同生活援助 | 千分の千百六十 | 11.60円 |
2級地以下も、区分ごとにサービスの種類別の割合が定められています。たとえば7級地は、就労継続支援が千分の千十七(10.17円)、共同生活援助が千分の千二十四(10.24円)です2。「その他」は、すべてのサービスで千分の千(10円)です2。
基本報酬600単位の場合の比較#
| 地域 | 就労継続支援B型(11.14円) | 居宅介護(11.20円) |
|---|---|---|
| 1級地(東京都特別区) | 6,684円 | 6,720円 |
| その他 | 6,000円 | 6,000円 |
同じ600単位でも、サービスの種類と地域区分の組み合わせによって報酬額に差が生じることがわかります。
💡 療養介護は告示第539号の割合の表に含まれていません2。障害児のサービスの単価も同じ告示が定めていますが、本記事では障害者のサービスを扱います。
報酬の支払い構造#
障害福祉サービスの費用は、公費(税金)と利用者負担で賄われています。
| 負担者 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 国・都道府県・市町村 | 原則90% | 介護給付費・訓練等給付費として国保連経由で事業所に支払われます |
| 利用者 | 原則10% | 応能負担(所得に応じた上限月額あり)で事業所に直接支払います |
公費部分の負担割合は、国が50%、都道府県が25%、市町村が25%です。事業所は国保連を通じて公費分を請求し、利用者負担分は利用者から直接徴収します。
利用者負担の上限月額#
利用者負担は応能負担の原則に基づき、世帯の所得に応じた上限月額が設定されています。1割負担の金額が上限月額に達した場合、それ以上の負担は発生しません。
| 区分 | 上限月額 | 対象 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 0円 | 生活保護受給世帯 |
| 低所得 | 0円 | 市町村民税非課税世帯 |
| 一般1 | 9,300円 | 市町村民税課税世帯で、所得割の合計が16万円未満(入所施設利用者〔20歳以上〕・グループホーム利用者を除く) |
| 一般2 | 37,200円 | 上記以外 |
上限月額は障害者総合支援法施行令第17条が定めています3。ポイントは次の3つです。
- 一般1の「所得割16万円未満」は、障害者本人とその配偶者の所得割の合計で判定します(世帯全員ではありません)3。
- グループホーム(共同生活援助)の利用者と、**入所施設の利用者(20歳以上)**は、課税世帯なら一般1にならず37,200円です3。
- 障害児の保護者の場合は区分が別に定められています(所得割28万円未満は4,600円など)3。
処遇改善加算の特殊な計算#
処遇改善加算は、他の加算とは計算方法が異なる特殊な加算です。基本報酬と各種加算の合計単位数に対して、一定の加算率を乗じて算定します4。
処遇改善加算の単位数 =(基本報酬 + 各種加算の合計)× 加算率
たとえば、基本報酬600単位+各種加算100単位=合計700単位に対して、福祉・介護職員等処遇改善加算(I)の加算率が適用されます。加算率はサービスの種類ごとに告示で定められています。
なお、処遇改善加算で得た収入は全額を職員の賃金改善に充てる必要があり、事業所の一般経費に流用することはできません。
報酬改定のサイクル#
障害福祉サービスの報酬は、原則として3年に1度改定が行われます5。直近では令和6年度(2024年度)に改定が実施されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定期改定 | 3年ごと(次回は令和9年度の予定) |
| 臨時改定 | 経済状況の変化等に応じて実施される場合があります |
| 検討プロセス | 社会保障審議会障害者部会や報酬改定検討チームで議論されます |
| 改定の影響 | 基本報酬の単位数、加算の要件・単位数、地域区分の見直し等が対象です |
事業所の経営にとって報酬改定は非常に重要であり、改定内容を正確に把握し、体制届の変更や加算の届出を適切に行う必要があります。改定の動向は厚生労働省のWebサイトや関係団体からの情報で確認できます。
よくある質問#
Q. 地域区分は事業所の所在地で決まりますか?#
はい、事業所が所在する市町村の地域区分が適用されます。利用者の住所地ではありません。同一法人で複数の事業所がある場合は、それぞれの事業所の所在地に応じた地域区分が個別に適用されます。
Q. 1単位は何円ですか?#
地域区分とサービスの種類により異なります。「その他」地域では一律10.00円ですが、1級地(東京都特別区)では、サービスの種類に応じて11.14円(就労継続支援)〜11.60円(共同生活援助)です2。
Q. 加算を算定するためにはどのような手続きが必要ですか?#
加算を算定するためには、管轄の行政機関(都道府県または市町村)に対して**体制届(加算届)**を提出する必要があります。算定される単位数が増える加算等は、届出が毎月15日以前になされた場合は翌月から、16日以降なら翌々月から算定を開始します(詳しくは「加算の体制届は15日までに」)。届出をしていない加算は算定できません。
Q. 報酬改定があった場合、事業所は何をすればよいですか?#
報酬改定の内容を確認し、基本報酬の単位数変更や加算要件の変更に対応する必要があります。具体的には、新たに算定可能となった加算の体制届の提出、算定要件が変更された加算の見直し、請求ソフトのマスター更新などを行います。
Q. 基本報酬は全国一律ですか?#
基本報酬の単位数は全国一律です。ただし、地域区分単価が異なるため、同じ単位数でも最終的な報酬額(円)は地域によって異なります。たとえば、600単位の基本報酬は「その他」地域で6,000円ですが、1級地では6,684円(就労B型の場合)となります。
Footnotes#
-
厚生労働省「障害福祉サービス等報酬告示」報酬算定の基本構造 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩
-
厚生労働省「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める一単位の単価並びに厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号)第一号・第二号 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」(平成18年政令第10号)第17条(指定障害福祉サービス等に係る負担上限月額) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418CO0000000010) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」 (https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf) ↩
-
厚生労働省「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討の進め方について(案)」(第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料5・2026年4月28日) (https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001696206.pdf) ↩
