就労継続支援A型の基本報酬を決めるスコアのうち、「支援力向上のための取組」は最大15点を占める評価項目です。8つの評価要素のうち最も取り組みやすいのが「研修計画に基づく外部研修会・内部研修会への参加」ですが、商談や指定権者への相談で必ず出るのが「eラーニングやオンライン研修でも点数として認められるのか?」という疑問です。
本記事では、スコアの根拠通知(障発0330第5号「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」・令和7年3月31日最終改正版)の原文に基づき、支援力向上の8項目の要件と、eラーニング研修の取扱いを整理します。
結論:通知に研修の実施形態を限定する規定はない#
先に結論をまとめます。
- 研修項目で1点を得る要件は、①前年度の研修計画を定めていること、②計画に基づく研修であること、③内容が障害者雇用・障害者福祉・賃金向上のいずれかに該当すること、④必要な時間数が設定されていること、⑤サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員の1人以上が参加していることです1。
- 通知は研修の実施形態(会場集合・オンライン・eラーニング)を限定する規定を置いていません。外部事業者が提供するeラーニングであっても、上記①〜⑤を満たす限り「外部研修会」として評価対象になり得ます1。
- ただし通知の文言は「研修会への職員の参加」であり、オンデマンド型の受講を「研修会への参加」と認めるかどうかの個別判断は、スコアの届出を受け付ける指定権者(都道府県等)に委ねられています。迷う場合は事前に指定権者へ確認するのが確実です。
支援力向上のスコアの仕組み(0点・5点・15点)#
「支援力向上のための取組」は、職員がキャリアアップの機会を得られる環境を組織として整えているかを評価する項目です。次のア〜クの8項目それぞれを1点で評価し、合計点に応じてスコアが決まります2。
| 8項目の合計点 | スコア |
|---|---|
| 5点以上 | 15点 |
| 3点または4点 | 5点 |
| 2点以下 | 0点 |
かつての旧制度(令和3年度改定当初)では「8項目から任意の5項目を選択し、項目ごとに1〜2点で評価(最大35点)」という方式でした3。令和6年度改定後の現行制度では選択制ではなく8項目すべてを各1点で評価し、最大15点です2。旧方式のまま解説している情報も多いため注意してください。
評価対象は原則として前年度の取組実績です(第三者評価など一部の項目は対象期間・評価方法が異なります。各項目の詳細は後述の早見表を参照)。8項目の全体像は次のとおりです2。
| 項目 | 内容 | 配点 |
|---|---|---|
| ア | 研修計画に基づく外部研修会・内部研修会への職員の参加 | 1点 |
| イ | 研修・学会等・学会誌等での発表 | 1点 |
| ウ | 先進的事業者への視察・実習、または他事業者からの受け入れ | 1点 |
| エ | 販路拡大のための商談会等への参加 | 1点 |
| オ | 職員の人事評価制度の整備・周知・運用 | 1点 |
| カ | 障害者ピアサポート研修修了者の配置 | 1点 |
| キ | 福祉サービス第三者評価の受審・結果公表 | 1点 |
| ク | ISO等の規格の認証取得 | 1点 |
スコア方式全体(7つの評価項目と基本報酬単価への反映)は、就労継続支援A型の基本報酬とスコア方式の解説記事を参照してください。
研修項目(ア)の要件を通知の原文で確認する#
要件1:研修計画を「前年度において」定めていること#
通知は、前年度における研修の「実施時期・目的・対象者・具体的な内容」を定めた研修計画を作成し、その計画に基づいて研修に参加することを求めています1。つまり研修を受けてから後付けで計画を作る運用は、「計画に基づいた参加」という要件の趣旨を満たしません。年度当初に研修計画を策定しておくことが出発点です。
要件2:参加者はサビ管・職業指導員・生活支援員#
1点を得るには、外部研修会または内部研修会に職員の1人以上が参加していれば足ります。ただしここでいう「職員」はサービス管理責任者・職業指導員・生活支援員を指し、管理者や事務職員は含まれません1。管理者だけが研修を受けても、この項目の実績にはならない点に注意してください。
要件3:外部研修会・内部研修会の定義#
| 区分 | 定義 | 追加要件 |
|---|---|---|
| 外部研修会 | 当該事業者を含む同一法人以外の者が行う研修会4 | 内容の習得に必要と一般的に考えられる時間数が設定されていること4 |
| 内部研修会 | 当該事業者を含む同一法人内の者が行う研修会5 | 外部研修会と同等の内容を含み、外部専門家を講師として招いて実施し、概ね半日以上の時間数が設定されていること5 |
外部の研修事業者が提供する研修(eラーニングを含む)は、提供者が同一法人外である以上「外部研修会」の区分で整理します。自法人の職員が講師を務める勉強会は、外部専門家を招かない限り内部研修会の要件を満たしません。
要件4:研修内容は3分野のいずれかを含むこと#
外部研修会は、次のいずれかの内容を含むものである必要があります4。
- 障害者雇用・就業支援に関すること:障害者雇用施策、障害特性、障害者の職業的課題、労働関係法規、就業支援のプロセスと手法、就業支援の実践事例など(例:厚生労働省・労働局・ハローワークが開催する研修、訪問型職場適応援助者養成研修、就労支援機関が開催する研修会)6
- 障害者福祉に関すること:障害概念と特性、障害者の生活実態と社会環境、障害者に対する法制度、関係機関と専門職の役割、支援の実践事例など(例:厚生労働省・地方自治体・社会福祉協議会・障害者団体・学会等が開催する研修会、セミナー)6
- 賃金向上に関すること:経営力育成、品質向上支援、商品開発や販売戦略、生産活動への企業的手法の導入、農福連携等の新たな生産活動領域の拡大など(例:自治体や民間企業等が実施する賃金向上のための研修会・セミナー)6
障害福祉とも賃金向上とも関係のない一般的なビジネスマナー研修などは対象になりません。
eラーニング・オンライン研修は「外部研修会」になるか#
通知が定めているのは「形式」ではなく「中身」#
通知が外部研修会に求めているのは、誰が行うか(同一法人外)・何を学ぶか(3分野のいずれか)・どれだけ学ぶか(必要な時間数の設定)・計画に基づくか・誰が受けるかであり、開催形式(会場集合・ライブ配信・オンデマンド)についての定めはありません14。したがって、外部事業者が提供するeラーニングやオンライン研修が制度上当然に除外されるという読み方は、通知の文言からは導かれません。
eラーニングをスコア実績にするためのチェックリスト#
eラーニングを研修項目の実績として使う場合は、次の5点を確認してください。
- 研修計画に組み込まれているか:年度当初に策定する研修計画(実施時期・目的・対象者・具体的内容)に当該eラーニングの受講を位置づける1
- 内容が3分野に該当するか:障害者雇用・就業支援/障害者福祉/賃金向上のいずれかを含むカリキュラムであること4
- 標準学習時間が明示されているか:「内容の取得に必要となると一般的に考えられる時間数が設定されているもの」という要件があるため、時間数の定めのない教材(単発の動画視聴など)はこの要件を満たさない可能性が高い4
- 受講者が対象職員か:サビ管・職業指導員・生活支援員の1人以上が受講する1
- 受講実績を証明できるか:修了証書・受講証明書、時間数と内容が分かるカリキュラム、受講概要・受講者名簿など、通知が求める書類を残せること7
最終判断は指定権者。事前確認が確実#
スコアは毎年度、自己評価結果等として公表し、指定権者に届け出たうえで基本報酬に反映されます。研修が要件を満たすかどうかの個別判断は指定権者が行うため、自治体によって「研修会への参加」の解釈に幅が出る余地があります。特に高額のeラーニングを年間契約する前には、研修計画とカリキュラムを持って指定権者に事前確認しておくと、実地指導で否認されるリスクを避けられます。
残り7項目(イ〜ク)の要件早見表#
研修項目だけでは1点にしかならず、スコア15点には合計5点以上が必要です。残り7項目の要件も確認しておきましょう。
| 項目 | 1点の要件(前年度実績) |
|---|---|
| イ 発表 | 職員が外部で開催される研修・学会等・学会誌等で、自事業所の取組を1回以上発表(同一法人内での発表は除く)8 |
| ウ 視察・実習 | 先進的事業者(所在都道府県の平均月額賃金を相当程度上回る事業所、スコア合計170点以上の事業所、法定雇用率を相当程度上回る企業、もにす認定事業主等)への視察・実習への参加、または他の事業者からの視察・実習の受け入れ9 |
| エ 商談会等 | 販路拡大のための商談会・展示会等に1回以上参加(ビジネスマッチング目的の展示会への出展、自治体・商工会等が実施する商談会への参加等)10 |
| オ 人事評価制度 | 人事評価に基づき定期に昇給を判定する仕組みがあり、評価基準・昇給条件が明文化され、全職員に周知され、前年度に運用されていること11 |
| カ ピアサポーター | 障害者ピアサポート研修(基礎研修+専門研修)の修了者を職員として配置(サビ管・職業指導員・生活支援員のほか、利用者とともに就労・生産活動に参加する者でも可)12 |
| キ 第三者評価 | 都道府県推進組織の認証を受けた第三者評価機関の評価を受け、結果を公表していること(前年度末日から過去3年以内の受審が対象)13 |
| ク 規格認証 | ISO9001・ISO14001・ISO27001・ISO45001、JISQ15001、JFS、JAS(有機JAS・ノウフクJAS)、GAP、HACCP等、都道府県知事が適当と認める規格の認証を受けていること14 |
即効性の観点では、**ア(研修)・エ(商談会等)・オ(人事評価制度)**あたりが単年度で着手しやすく、キ(第三者評価)・ク(規格認証)は費用と期間がかかる中期的な取組です。
根拠書類:通知が求める書類を揃える#
研修の実績は、実地指導や指定権者の確認に耐える書類で裏付ける必要があります。通知は、研修項目のスコア算出に必要な書類として次を挙げています7。
- 職員の人材育成にかかる規程等、職員にかかる研修計画(前年度における研修の時期・目的・対象者・具体的な内容を示したもの)
- 職員が受講した外部研修会の修了証書・受講証明書等、受講したことを証明する書類等の写し
- 職員が受講した外部研修会のカリキュラム(時間数・内容が分かるもの)、受講概要、受講者名簿等
- 内部研修会の場合は、カリキュラム(時間数・内容が分かるもの)、議事次第、参加者名簿、資料等
eラーニングの場合も考え方は同じで、受講管理画面の修了記録や発行された修了証、標準学習時間が明記されたカリキュラムがこれらの書類に対応します。逆に言えば、修了証やカリキュラムを発行できない教材はスコアの裏付けに使えないため、研修プログラムを選ぶ際の必須チェックポイントになります。
よくある質問#
Q. eラーニング研修を受講すれば、それだけでスコア15点が取れますか?#
取れません。研修項目(ア)で得られるのは1点です。支援力向上のスコアを15点にするには8項目の合計で5点以上が必要なので、商談会等への参加(エ)や人事評価制度(オ)など、他の項目と組み合わせる必要があります2。
Q. 研修は何人受講すれば点数になりますか?#
現行制度では、研修計画に基づく外部研修会または内部研修会に職員(サビ管・職業指導員・生活支援員)の1人以上が参加していれば1点です1。旧制度(令和3年度〜)にあった「職員の半数以上参加で2点」という区分は、令和6年度改定後の現行通知にはありません。
Q. 管理者や事務職員が研修を受けた場合もカウントされますか?#
カウントされません。通知は「ここでいう職員は、サービス管理責任者、職業指導員及び生活支援員を指し、管理者、事務職員等は含まれない」と明記しています1。
Q. 研修計画を作らずに研修だけ受けた場合、点数になりますか?#
要件を満たしません。通知は「前年度における研修計画(実施時期、目的、対象者及び具体的な内容を定めたもの)を定め、当該研修計画に基づき」参加することを求めています1。計画の策定が先、受講が後という順序で運用してください。
Q. 無料の動画教材を職員に視聴させるのは研修になりますか?#
慎重に判断すべきです。外部研修会には「内容の取得に必要となると一般的に考えられる時間数が設定されているもの」という要件があり4、標準学習時間やカリキュラムの定めがない教材の視聴はこの要件を満たさない可能性が高いためです。時間数・カリキュラム・修了確認の仕組みを備えた研修プログラムを選び、判断に迷う場合は指定権者に確認してください。
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- 就労継続支援A型の経営改善計画書|提出条件と判定の流れ
- 障害福祉サービスの義務研修・訓練の一覧
- 処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ|研修計画・昇給の仕組み
Footnotes#
-
厚生労働省「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」(障発0330第5号・令和3年3月30日、最終改正:障発0331第28号・令和7年3月31日)p.7「(4)支援力向上のための取組」ア ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.30(支援力向上の評価指標を0〜35点から0〜15点に見直し)。旧方式の詳細(8項目中任意の5項目選択・各1〜2点)は岐阜県障害福祉課「就労継続支援A型事業所に係る評価方法(スコア)について」(令和3年度制度の解説資料)による ↩
-
同通知 p.8-9(研修・学会等・学会誌等における発表) ↩
-
同通知 p.9-10(先進的事業者の視察・実習) ↩
-
同通知 p.10-11(商談会等への参加) ↩
-
同通知 p.11(人事評価制度) ↩
-
同通知 p.11(障害者ピアサポート研修修了者の配置) ↩
-
同通知 p.11-12(第三者評価) ↩
-
同通知 p.12(国際標準化機構が定めた規格等の認証) ↩