就労継続支援A型の生産活動収支 — 基本ルール#
就労継続支援A型の事業所は、利用者に雇用契約に基づく賃金を支払います。この賃金の原資は生産活動による収入から賄うことが大原則です。生産活動の収入から必要経費を差し引いた金額(生産活動収支)が、利用者の賃金総額を上回る状態を維持する必要があります1。
生産活動収支の計算式#
生産活動収支 = 生産活動に係る事業の収入 − 生産活動に係る事業に必要な経費
この生産活動収支と、利用者に支払う賃金の総額を比較して、事業所の経営健全性を判断します1。
| 状態 | 意味 | 事業所への影響 |
|---|---|---|
| 生産活動収支 ≧ 賃金総額 | 健全 | スコア評価で加点 |
| 生産活動収支 < 賃金総額 | 赤字(収支不足) | スコア評価で減点、経営改善計画の提出義務 |
A型事業所の赤字とは、「生産活動収支が賃金総額を下回る状態」を指します。訓練等給付費(基本報酬)を賃金に充てることは制度の趣旨に反するため、生産活動の収入のみで賃金を賄える経営が求められます。
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スコア方式における「生産活動」の評価#
A型の基本報酬はスコア方式で決まり、7つの評価項目のうち**「生産活動」は最大60点・最低-20点**の配点で、労働時間(最大90点)に次ぐ高配点項目です2。
令和6年度改定後の配点(6段階評価)#
| # | 条件 | 配点 |
|---|---|---|
| 1 | 前年度・前々年度・前々々年度の3年連続で生産活動収支 ≧ 賃金総額 | 60点 |
| 2 | 前年度・前々年度の2年連続で生産活動収支 ≧ 賃金総額 | 50点 |
| 3 | 前年度のみ生産活動収支 ≧ 賃金総額 | 40点 |
| 4 | 前々年度のみ生産活動収支 ≧ 賃金総額 | 20点 |
| 5 | 前年度・前々年度の2年連続で生産活動収支 < 賃金総額(6を除く) | -10点 |
| 6 | 前年度・前々年度・前々々年度の3年連続で生産活動収支 < 賃金総額 | -20点 |
令和6年度改定で評価期間が2年から3年に拡大され、3年連続赤字の場合は**-20点と大幅な減点となりました。一方で3年連続黒字は60点**と高い加点が得られます1。
改定前との比較#
| 項目 | 改定前(旧4段階) | 改定後(新6段階) |
|---|---|---|
| 評価期間 | 2年間 | 3年間 |
| 最高点 | 40点 | 60点 |
| 最低点 | 5点 | -20点 |
| マイナス評価 | なし | あり |
経営改善計画の提出義務#
📘 提出後の流れを詳しく:計画を出した後の1年→2年→3年目の判定条件、認められない「改善」、指定取消しまでの道筋は就労継続支援A型の経営改善計画書|提出条件と1年→2年→3年の猶予・指定取消しまでの流れで解説しています。
指定基準は、生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならないとしています。都道府県等は事業所の状況を把握し、この基準を満たしていない場合に経営改善計画書を提出させることとされています3。
提出が必要なケース#
- 生産活動収支が利用者に支払う賃金の総額未満で、都道府県等から提出を求められた場合
経営改善計画書の内容#
経営改善計画書は、就労系留意事項通知で示す別紙様式2-1を使用し、以下の内容を記載します4。
- 現在の生産活動収入を維持または増やすための具体的な取組
- そのほか様式に沿った経営改善の内容(記載項目は別紙様式2-1で確認してください)
スコア方式における経営改善計画の評価#
令和6年度改定で新設された⑥経営改善計画(-50〜0点) は減点項目です2。
| 状態 | 配点 |
|---|---|
| 都道府県等から提出を求められ、指定された期日までに提出した | 0点 |
| 提出を求められていない | 0点 |
| 提出を求められたのに、指定された期日までに提出していない | -50点 |
スコアの算定は「期日までに提出したか」で決まります3。令和6年度改定の概要は「経営改善計画に基づく取組を行っていない場合」の減点項目を設けると説明していますが2、算定方法を定めた通知が-50点とするのは期日までの未提出の場合です3。計画を出した後に取組が不十分な場合は、自治体による指導・再提出の要求等の対象になります。
未提出の-50点は、②生産活動の最低点(-20点)と重なると、2項目だけで-70点になります。
生産活動収支を改善するための実務ポイント#
以下は実務上有効とされる取り組みです(制度上の義務ではなく、実務上の推奨事項です)。
収入を増やす取り組み#
- 障害者優先調達推進法の活用: 国・地方公共団体からの物品・役務の受注促進
- 農福連携の推進: 地域の農家との連携による新たな生産活動領域の開拓
- ICT機器の導入: 利用者の生産能力向上による収入増
- 付加価値の高い商品・サービスの開発: 単価の引上げによる収入向上
経費を削減する取り組み#
- 原材料費の仕入れ先の見直し
- 光熱水費の削減(省エネ設備の導入等)
- 業務プロセスの効率化による人件費の適正化
経営管理の強化#
- 月次の収支管理: 月単位で生産活動収支と賃金総額のバランスを確認し、早期に対策を講じる
- 3年間の収支推移の可視化: スコア評価が3年間の実績で判定されるため、中長期的な視点での管理が不可欠
- 賃金向上達成指導員の活用: 経営改善計画書を「賃金向上計画」として活用し、指導員配置加算との連動も検討4
よくある質問#
Q. 「生産活動に係る事業に必要な経費」にはどのような費用が含まれますか?#
生産活動に直接関連する経費が対象です。原材料費、生産設備の減価償却費、生産活動に従事する職員の人件費(按分)、生産活動に使用する光熱水費(按分)等が含まれます。管理部門の経費や、支援に関する経費は含みません1。
Q. 訓練等給付費(基本報酬)を賃金に充てることはできますか?#
制度の趣旨上、生産活動の収入で賃金を賄うことが原則です。訓練等給付費は事業運営経費に充当するものであり、賃金の原資として恒常的に使用することは適切ではありません1。
Q. 新規指定の事業所は生産活動収支の実績がありませんが、どうなりますか?#
年度途中に新規指定された事業所は、初年度および2年度目はスコアの「生産活動」について、評価点が80点以上105点未満の場合(区分(五))とみなして基本報酬を算定します5。
Q. 経営改善計画を提出すれば、⑥経営改善計画の減点は回避できますか?#
スコアの減点(-50点)は、都道府県等から求められた計画を指定された期日までに提出しなかった場合です。期日までに提出すれば、スコアは0点です3。ただし、計画に沿った取組ができていなければ、自治体の指導や再提出の要求等の対象になるので、提出して終わりにはしないでください。
Footnotes#
-
厚生労働省「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」p.198(就労継続支援A型 スコア評価項目「生産活動」) (https://www.mhlw.go.jp/content/001473459.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.30 (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」(A型スコア留意事項通知・障発0330第5号、令和7年3月31日改正) p.9(生産活動のスコア①〜⑥)、p.19(経営改善計画:指定期日までに未提出の場合-50点) (https://www.mhlw.go.jp/content/001473459.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「令和6年度 費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項」p.284(賃金向上達成指導員配置加算・経営改善計画書) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度報酬改定Q&A Vol.2」問23 (https://www.mhlw.go.jp/content/001250243.pdf) ↩