A型

就労継続支援A型の経営改善計画書|提出条件と1年→2年→3年の猶予・指定取消しまでの流れ

公開: 2026年7月24日更新: 2026年7月24日

経営改善計画書とは#

就労継続支援A型事業所は、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならないと定められています(指定基準第192条第2項)1。この基準を満たせない場合に都道府県等から提出を求められるのが経営改善計画書です。

同条は併せて、賃金及び工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならない(災害その他やむを得ない理由がある場合を除く)とも定めています1。基本報酬を賃金の原資にする運営は認められていない、というのが制度の出発点です。


提出を求められる条件#

都道府県・指定都市・中核市(以下「都道府県等」)は、実地指導または就労支援事業別事業活動明細書等の提出により実態を把握し、指定基準第192条第2項を満たさない場合に、別紙様式2-1及び別紙様式2-2を参考に経営改善計画書等を提出させます。必要に応じて社会福祉法人会計基準または就労支援事業会計基準に基づく会計書類等の提出も求められ、原則1年間が経営改善のための猶予期間となります2

すぐには求められないケース#

事業所が生産設備による大型の設備投資を行った場合は、直ちに経営改善計画の提出を求めるのではなく、都道府県等が事業所の状況を正確に把握し、生産活動収支等を勘案して提出の可否を判断することとされています2。設備投資による一時的な収支悪化と、構造的な赤字は区別して扱われます。


提出後の流れ — 1年 → 2年 → 3年目以降#

経営改善計画は「出して終わり」ではなく、1年ごとに継続の可否が判定される仕組みです。

段階内容
計画始期別紙様式2-1・2-2を参考に作成・提出。原則1年間の猶予
1年経過後都道府県等が実行状況と経営改善状況を確認
2年目下記3条件のいずれかに該当すれば、更に1年間の計画作成が認められる
3年目以降下記3条件のいずれかを満たし、なお改善が見込まれると認められる場合に追加で作成できる
改善見込みなし勧告・命令の措置 → 指定の取消し又は停止を検討

2年目に進める3条件#

計画終期において指定基準を満たさない場合でも、次のいずれかに該当すれば更に1年間(2年目)の経営改善計画の作成が認められます3

  • 生産活動に係る事業の収入額が増加している、又は経費が減少しており、今後、収益改善の見込みがあると都道府県等が認める場合
  • 生産活動に係る事業の収入額が利用者に支払う賃金総額以上である場合
  • 提出済みの経営改善計画に基づく改善の取組について、具体的に実施しており、今後経営改善の見込みがあると都道府県等が認めた場合

2年目に入った事業所に対しては、工賃向上計画支援等事業の活用や、計画を提出していない事業所の事例等も参考としつつ、指導だけでなく必要な支援も実施することとされています3

3年目以降に進める3条件#

2年間の経営改善期間内に第192条第2項を満たさない場合でも、都道府県等が今後も経営の改善が見込まれると認め、次のいずれかの条件を満たす場合には、追加で(3年目以降)更なる経営改善計画書等を作成させることができます3

  • 経営改善計画期間中に生産活動に係る事業の収入額が増加している、又は経費が減少しており、収益改善が認められる
  • 利用者の平均労働時間が長くなっている
  • 利用者に支払う賃金総額が増えている

この判断が都道府県等だけでは難しい場合は、自立支援協議会その他都道府県等が必要と認めた者の意見を聴取の上で判断することとされています3


「改善」として認められないもの#

ここが実務上もっとも重要な線引きです。収益改善のために利用者の退所や賃金の引き下げ等を不当に行うことは、就労継続支援A型事業の趣旨に反するとされています3

行為取扱い
利用者の退所・賃金引下げ等による収支の改善を織り込んだ計画趣旨に照らして適正でない計画として再提出を求められる
計画実施後、収益改善の要因がこれに類すると認められる場合収益改善があったものと認めない
提出を求められたにもかかわらず計画書を作成しない場合第192条第2項に違反するものとして勧告・命令、指定の取消し又は停止を検討
計画書の記載内容に虚偽がある場合同上

「数字だけ合わせる」対応が制度上あらかじめ封じられている点は、計画を作る前に押さえておく必要があります。


公表とホームページ掲載#

都道府県等は、経営改善計画書を提出したA型事業所に対し、当該経営改善計画書等を事業所のホームページに公表するよう促すこととされています3。また、経営改善計画書の提出に至ったA型事業所数は、毎年3月末時点の状況が厚生労働省へ報告されます2


新規指定事業所の扱い#

新規指定の段階から、収支の実現可能性が確認されます。

時点取扱い
指定申請時生産活動収入から経費を控除した額により利用者に最低賃金を支払うことができる事業計画となっているかを、事業計画書により必ず確認した上で指定の可否を判断。都道府県等だけで判断できない場合は自立支援協議会等の意見を聴取2
指定の半年後を目途実地指導を実施し、生産活動が事業計画に沿った最低賃金を支払える内容になっているか等を確認。違反があれば勧告・命令、指定の取消し又は停止を検討4
収益改善が明らかに見込まれる場合事業開始時は減価償却費が高額な場合等もあるため、経営改善計画書を提出させ、原則1年間の猶予期間とする4
2年目以降既存事業所の取扱いと同様4

報酬スコアへの跳ね返り#

経営改善計画は、基本報酬のスコア方式にも直接効きます。A型の基本報酬は7項目のスコアで決まり、そのうち2項目が生産活動収支と経営改善計画に関するものです5

評価項目配点範囲
② 生産活動-20 〜 60点
⑥ 経営改善計画-50 〜 0点

⑥は加点のない減点専用の項目です。②と合わせると最大で**-70点**となり、基本報酬の区分に大きく影響します。赤字が続く事業所は「基準違反による指定リスク」と「報酬減による収支悪化」を同時に抱えることになります。

スコア全体の構造と単位数は就労継続支援A型の基本報酬とスコア方式で、自事業所のスコアと区分はA型スコアシミュレータで確認できます。


よくある質問#

Q. 生産活動収支が賃金総額を下回ると、すぐに指定取消しになりますか?#

なりません。まず経営改善計画書の提出を求められ、原則1年間の猶予期間が設けられます2。その後も1年ごとに条件を満たせば2年目・3年目と継続が認められ、経営改善の見込みがない場合又は計画の結果として指定基準を満たさない場合に勧告・命令、そして指定の取消し又は停止の検討へ進みます3

Q. 大型の設備投資で一時的に赤字になった場合も提出が必要ですか?#

生産設備による大型の設備投資を行った場合は、直ちに提出を求めるのではなく、都道府県等が状況を正確に把握し、生産活動収支等を勘案して提出の可否を判断することとされています2

Q. 利用者を減らして収支を改善するのは有効な手段ですか?#

有効ではありません。収益改善のために利用者の退所や賃金の引き下げ等を不当に行うことは事業の趣旨に反するとされ、そうした内容の計画は再提出を求められ、実施後に収益改善の要因がこれに類すると認められる場合も収益改善があったものと認められません3

Q. 計画書を提出しなければどうなりますか?#

提出を求められたにもかかわらず作成しない場合、また記載内容に虚偽がある場合は、指定基準第192条第2項に違反するものとして勧告・命令の措置が講じられ、指定の取消し又は停止が検討されます3

Q. 経営改善計画書は公開されますか?#

都道府県等は、提出した事業所に対し事業所のホームページに公表するよう促すこととされています3

Q. 基本報酬を賃金に充てて収支を合わせることはできますか?#

できません。賃金及び工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないと定められています(災害その他やむを得ない理由がある場合を除く)1


関連記事#


Footnotes#

  1. 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第192条(賃金及び工賃)https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 2 3

  2. 厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.20 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf 2 3 4 5 6

  3. 同通知 p.21 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf 2 3 4 5 6 7 8 9 10

  4. 同通知 p.22 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf 2 3

  5. 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(就労継続支援A型 スコア方式による評価項目の見直し)p.29-31 https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf

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