就労選択支援は令和7年10月に始まりましたが、「誰が・いつから・必ず使わなければならないのか」は一律ではありません。サービス種別と、新規利用か更新かによって「原則利用」「希望に応じて利用」が分かれ、時期も令和7年10月と令和9年4月の2段階です。
二次情報では「令和9年4月からA型も義務化」とだけ書かれることが多いのですが、一次情報には条件節と例外が付いています。本記事はその全体像を整理します。
対象者マトリクス(原則利用か、希望に応じてか)#
就労選択支援の対象者は、就労移行支援又は就労継続支援を利用する意向を有する者、及び現に就労移行支援又は就労継続支援を利用している者です1。
そのうえで、利用が「原則」となるかどうかは次のとおり分かれます1。
| サービス類型 | 新たに利用する意向がある障害者 | 既に利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型(現行の就労アセスメント対象者=下記以外の者) | 令和7年10月から原則利用 | 希望に応じて利用 |
| 就労継続支援B型(50歳に達している者/障害基礎年金1級受給者/就労経験があり年齢・体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった者) | 希望に応じて利用 | 希望に応じて利用 |
| 就労継続支援A型 | 令和9年4月から原則利用 | 希望に応じて利用 |
| 就労移行支援 | 希望に応じて利用 | 令和9年4月から原則利用(※標準利用期間を超えて更新を希望する者) |
ここを読み違えやすい#
- A型は「新規利用」だけが令和9年4月から原則利用です。既にA型を利用していて**支給決定を更新する場合は、令和9年4月以降も「希望に応じて」**にとどまります。
- 就労移行支援は逆で、新規利用は令和9年4月以降も「希望に応じて」です。原則利用になるのは標準利用期間を超えて更新を希望する場合のみです。
- B型でも、50歳以上・障害基礎年金1級・就労経験があり年齢や体力の面で困難に当たる人は、令和7年10月以降もアセスメントなしでB型を利用できます1。
令和9年4月の位置づけ#
令和6年度報酬改定の資料は、対象者について次のように定めています2。
令和7年10月以降、就労継続支援B型の利用前に、原則として就労選択支援を利用することとする。また、新たに就労継続支援A型を利用する意向がある者及び就労移行支援における標準利用期間を超えて利用する意向のある者は、支援体制の整備状況を踏まえつつ、令和9年4月以降、原則として就労選択支援を利用することとする。
注目すべきは「支援体制の整備状況を踏まえつつ」という条件節です。令和9年4月という日付は示されていますが、無条件の確定期日としてではなく、支援体制の整備を前提に置いた記述になっています。二次情報ではこの部分が落ちがちです。
現時点のA型の扱い#
就労系の留意事項通知(令和7年3月31日改正版)は、A型について次のように述べています3。
なお、令和7年10月から就労選択支援が開始されるが、当面の間は、就労継続支援A型の利用に当たって就労選択支援を利用することは必須ではない。
そのため、公共職業安定所において、A型の利用を希望する障害者から相談があった場合には、利用者に対して必要な支援を速やかに行う観点から、就労選択支援を利用せずに公共職業安定所の判断でA型の求人を紹介する場合があることを市町村においても留意することとされています3。
B型で「原則利用」でも例外が認められる場合#
新たにB型を利用する場合は原則として就労選択支援を予め利用することになりますが、次のいずれかに該当する場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用が認められます1。
| 例外が認められる場合 |
|---|
| 最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難である等、近隣に就労選択支援事業所がない場合 |
| 利用可能な就労選択支援事業所数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合 |
制度の趣旨は「アセスメントを経ること」であり、就労選択支援事業所が足りない地域で利用を止めない設計になっています。
特別支援学校の生徒も利用できる#
特別支援学校等の在学者も就労選択支援を利用できます1。
- 卒業後の進路選択を考えるうえで、より効果的な就労選択に資するアセスメントを実施するため、特別支援学校高等部の各学年で実施できます
- 在学中に複数回実施することや、職場実習のタイミングでの実施も可能です
- 作業観察は、生徒が就労選択支援事業所に通所して行う作業を観察する場合のほか、校内実習や作業現場等における実習等の場面に就労選択支援事業者が出向いて観察することも可能です
- 生徒が就労選択支援を受けるために登校できない日については、校長の判断により「出席停止・忌引等の日数」に計上することが可能です
最後の点は学校側との調整で問題になりやすい論点なので、事業所からも案内できるようにしておくと実務が進みます。
実施主体になれる事業者#
就労選択支援の実施主体は、就労移行支援又は就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者であって、過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの、又はこれらと同等の障害者に対する就労支援の経験及び実績を有すると都道府県知事が認める事業者です2。
後者として例示されているのは次のとおりです2。
| 例示された事業者 |
|---|
| 就労移行支援事業所、就労継続支援事業所 |
| 障害者就業・生活支援センター事業の受託法人 |
| 自治体設置の就労支援センター |
| 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関等 |
また就労選択支援事業者は、協議会への定期的な参加、公共職業安定所への訪問等により、地域における就労支援に係る社会資源・雇用に関する事例等の情報収集に努めるとともに、利用者に対して進路選択に資する情報を提供するよう努めることとされています2。
よくある質問#
Q. 令和9年4月から、A型の利用者は全員が就労選択支援を使うことになりますか?#
なりません。原則利用となるのは新たにA型を利用する意向がある障害者です。**既にA型を利用していて支給決定の更新を希望する場合は「希望に応じて利用」**のままです1。
Q. 就労移行支援は令和9年4月から義務になりますか?#
新規利用は令和9年4月以降も「希望に応じて利用」です。原則利用となるのは標準利用期間を超えて更新を希望する場合に限られます1。
Q. 「令和9年4月から」は確定した期日ですか?#
一次情報は「支援体制の整備状況を踏まえつつ、令和9年4月以降、原則として就労選択支援を利用することとする」と記載しています2。日付は示されていますが、支援体制の整備を前提に置いた書きぶりである点は押さえておく必要があります。最新の取扱いは指定権者の案内で確認してください。
Q. 現時点でA型を利用したい人は、就労選択支援を使わないといけませんか?#
必須ではありません。留意事項通知は「当面の間は、就労継続支援A型の利用に当たって就労選択支援を利用することは必須ではない」としています3。
Q. 50歳以上の人がB型を利用する場合も就労選択支援が必要ですか?#
50歳に達している者、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった者等は、就労選択支援事業者によるアセスメントを行うことなくB型の利用が可能です1。
Q. 近くに就労選択支援事業所がない場合はどうなりますか?#
近隣に事業所がなく通所が困難な場合や、待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用が認められます1。
関連記事#
Footnotes#
-
厚生労働省「就労選択支援 実施マニュアル」p.7 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.59(就労選択支援の創設/①サービスの対象者・実施主体)https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf /同「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.33 https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.24 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf ↩ ↩2 ↩3