就労継続支援B型は「誰でもすぐに利用できる」サービスではありません。対象者は制度上3つの類型に整理されており、令和7年10月からは就労選択支援の開始に伴って利用の入口も変わりました。特別支援学校を卒業したばかりで就労経験がない人が、就労移行支援を経ずにB型を利用するいわゆる「直Bルート」も、実際にはこの3類型のどれに当てはまるかという整理の中で成立しています。本記事では、事業者が支給申請・利用者受け入れの場面で確認すべき要件を、一次資料の記載に沿って整理します。
1. 就労継続支援B型の対象者となる3類型(結論)#
就労継続支援B型は、次の㈠から㈢までのいずれかに該当する者が対象です。
- ㈠ 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
- ㈡ 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
- ㈢ ㈠及び㈡のいずれにも該当しない者であって、就労面に係る課題等の把握が行われている本事業の利用希望者12
このほか、通常の事業所に雇用されている者が、雇用後の労働時間延長や休職からの復職に際して就労に必要な知識・能力向上のための支援を一時的に必要とする場合(㈣)も対象に含まれますが、この一時的利用の要件は別記事で詳しく扱っています。本記事では㈠〜㈢の利用要件と、令和7年10月以降の接続点に絞って解説します。
事業者にとって重要なのは、㈠㈡は年齢・年金受給・就労経験という客観的な事実で判定できる一方、㈢は「就労面に係る課題等の把握」というアセスメントの実施が要件になっている点です。新規利用者が㈠㈡のいずれにも当てはまらない場合、アセスメントを経ていなければB型を利用させることができません。
2. 令和7年10月以降の接続点:就労選択支援との関係#
令和7年10月の就労選択支援の施行に伴い、㈢の要件を満たすためのアセスメント実施主体が変わりました。
- 原則:新たに就労継続支援B型を利用する意向がある障害者のうち、㈠㈡のいずれにも該当しない者は、就労選択支援事業者によるアセスメントにより就労面に係る課題等の把握が行われている必要があります34。
- ㈠㈡該当者は就労選択支援が不要:50歳に達している者、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢・体力の面で一般企業への雇用が困難になった者については、就労選択支援事業者によるアセスメントを行うことなく、そのままB型の利用が可能です45。
- 地域事情による例外:最も近い就労選択支援事業所であっても通所が困難な場合や、利用可能な就労選択支援事業所数が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められます456。
- 既にB型を利用中で支給決定の更新を希望する場合:就労選択支援の利用は必須ではなく、本人の希望に応じた利用となります5。
なお、令和9年4月以降は、新たに就労継続支援A型を利用する場合や標準利用期間を超えて就労移行支援を利用する場合についても、就労選択支援事業者によるアセスメントを原則とする方向性が示されていますが、具体的な取扱いは改めて示すとされており、現時点(令和7年10月〜)ではB型のみが対象です4。
3. いわゆる「直Bルート」の実務ポイント#
現場で「直B」と呼ばれる利用形態は、就労移行支援を経由せずに㈢のアセスメントを経てB型を利用するケースを指します。特別支援学校卒業直後で就労経験がなく、50歳未満・障害基礎年金1級非該当という利用希望者は㈠㈡に当てはまらないため、このアセスメントが利用の前提になります。
在学中の生徒についても、就労選択支援の利用に関して次の取扱いが示されています。
- 特別支援学校等の在学者も就労選択支援を利用でき、卒業後の進路選択に資するよう高等部の各学年で実施でき、在学中に複数回実施することや職場実習のタイミングでの実施も可能です7。
- アセスメントの作業観察は、就労選択支援事業所への通所のほか、特別支援学校等の校内実習や実習現場に就労選択支援事業者が出向いて観察する方法も可能です78。
- 就労選択支援を受けるために登校できない日は、校長の判断により「出席停止・忌引等の日数」として扱うことが可能です7。
- 15歳以上18歳未満の者が就労選択支援を利用する場合は、児童福祉法附則の規定に基づき、児童相談所長から市区町村長に対して、利用が適当と認める旨の意見書(通知)を発出してもらう必要があります9。
事業者が新規利用者(特に卒業直後の若年層)を受け入れる際は、この「利用希望者が㈠㈡に該当するか」「該当しない場合はアセスメントが完了・引き継がれているか」を、支給決定の前提として必ず確認する必要があります。
4. アセスメントの趣旨と事業者側の注意点#
アセスメントは、B型の新規利用者に対する長期的な支援を行っていく上で、一般就労への移行の希望や可能性も視野に入れた利用者のニーズを把握するために実施するものです10。
しかし、以下のような取扱いは「アセスメントの趣旨が理解されていない」事例として指摘されています10。
- 利用者の希望や一般就労への移行可能性を考慮せず、B型の利用を前提とした形式的なアセスメントを実施している事例
- アセスメントを実施したにもかかわらず、アセスメントの結果が利用する事業所に引き継がれていない事例
事業者としては、アセスメント結果を形式的に受け取るだけでなく、支援計画に反映させ、記録として保存しておくことが求められます。指定就労選択支援事業者は、アセスメントの結果を作成した際に、当該結果に係る情報を利用者及び指定特定相談支援事業者等に提供しなければならないとされており11、事業者側もこの結果情報を確実に受け取り、個別支援計画に反映させる体制を整えておく必要があります。
また、令和7年10月以降は、B型を利用する中で本人の就労に関する意向や知識・能力等に変化が見られる場合、客観的なアセスメントを受けることが本人にとって効果的であることから、計画相談支援を行う者等と連携し、定期的に就労選択支援に関する情報提供を行うことも求められています10。利用開始時のアセスメントだけでなく、利用途中の定期的な見直しの機会があることも押さえておく必要があります。
5. 支給申請時に確認されるものチェックリスト#
事業者が新規利用者の受け入れ・支給決定申請の場面で確認すべき点を整理すると、次のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・年金受給の確認(㈡) | 50歳に達しているか、障害基礎年金1級を受給しているか12 |
| 就労経験の確認(㈠) | 就労経験があり、年齢・体力の面で一般企業への雇用が困難になっているか12 |
| アセスメントの要否(㈢) | ㈠㈡のいずれにも該当しない場合、就労選択支援事業者(又は例外的に就労移行支援事業者等)によるアセスメントが完了しているか345 |
| 地域の就労選択支援事業所の有無 | 近隣に事業所がない、又は待機期間が生じる場合は例外規定の適用を確認456 |
| 未成年利用者の手続き | 15歳以上18歳未満の場合は児童相談所長の意見書(通知)の有無を確認9 |
| アセスメント結果の引き継ぎ | 結果が事業所に引き継がれ、個別支援計画に反映されているか1011 |
このチェックリストの中でも特に見落としやすいのが「アセスメントの要否」の判定です。相談支援事業所や紹介元から「B型を希望している」とだけ伝えられ、㈠㈡への該当有無を確認しないまま受け入れを進めてしまうと、支給決定の段階で要件不備が判明し、利用開始が遅れる事態につながりかねません。新規利用の相談を受けた時点で、年齢・年金受給・就労経験の有無を最初に確認し、いずれにも該当しない場合はアセスメントの実施状況を紹介元に確認する、という順序を徹底することが実務上のポイントです。
よくある質問#
Q. 「直B」という利用ルートは制度上の正式な区分ですか?#
制度上の正式な区分ではありません。B型の対象者は㈠㈡㈢の3類型で整理されており、就労移行支援を経ずにアセスメント(㈢)を経てB型を利用する形態が現場で「直B」と呼ばれています12。
Q. 令和7年10月以降、新規利用者は必ず就労選択支援を利用しなければなりませんか?#
新たにB型を利用する意向がある方のうち、㈠㈡(50歳到達・障害基礎年金1級受給・就労経験ありで雇用困難)のいずれかに該当する場合は、就労選択支援事業者によるアセスメントは不要でそのまま利用できます。㈠㈡に該当しない場合に限り、原則として就労選択支援の利用が必要です45。
Q. 近隣に就労選択支援事業所がない場合はどうすればよいですか?#
最も近い事業所でも通所が困難な場合や、事業所数が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型利用が認められます456。
Q. 特別支援学校在学中に就労選択支援を利用できますか?#
利用できます。高等部の各学年で実施でき、在学中の複数回実施や職場実習のタイミングでの実施も可能です。15歳以上18歳未満の場合は児童相談所長の意見書(通知)が必要になります79。
Q. アセスメント結果はどのように扱えばよいですか?#
指定就労選択支援事業者はアセスメント結果を利用者及び指定特定相談支援事業者等に提供する義務があります。事業者側はこの結果を形式的に受け取るだけでなく、個別支援計画に反映させ、記録として保存することが求められます1011。
Footnotes#
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厚生労働省「令和6年度 費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項」p.286(https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について」(事務処理要領・令和8年7月版)p.29(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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厚生労働省「『就労選択支援の実施について』の一部改正について」(障障発0930第3号・令和7年9月30日)p.4(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf) ↩ ↩2
-
前掲「『就労選択支援の実施について』の一部改正について」p.24-25(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
厚生労働省「就労選択支援 実施マニュアル」p.7(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について」(事務処理要領・令和8年7月版)p.79-80(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「就労選択支援 実施マニュアル」p.7(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(就労系留意事項通知・障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.26(https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf) ↩
-
厚生労働省「就労選択支援 実施マニュアル」p.49(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(就労系留意事項通知・障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.12・p.26(https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.62(https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf) ↩ ↩2 ↩3