就労移行支援や自立訓練には、サービスごとに「標準利用期間」が定められています。この期間の考え方を誤ると、支給決定の更新手続きが滞るだけでなく、標準利用期間超過減算により所定単位数の95/100への減額という事業所の収入に直結する実害が生じます。本記事では、標準利用期間の定義・サービスごとの期間・支給決定の更新と延長の仕組み・超過減算の具体的な計算方法を、事務処理要領と留意事項通知の記載に沿って整理します。
標準利用期間とは(結論)#
標準利用期間とは、訓練等給付対象サービスのうち自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、自立生活援助について、サービスの長期化を回避する目的で設定されている利用期間の目安です1。標準利用期間が設定されているサービスは、支給決定の有効期間が原則として最長1年間とされ、1年ごとに訓練継続の適否を評価することとされています2。
就労定着支援についても3年間の標準利用期間が定められていますが、後述のとおり自立訓練等とは更新・減算の扱いが異なります13。
サービスごとの標準利用期間#
事務処理要領は、各サービスの標準利用期間を次のとおり定めています1。
| サービス | 標準利用期間 | 例外 |
|---|---|---|
| 自立訓練(機能訓練) | 1年6か月間 | 頸髄損傷による四肢の麻痺その他これに類する状態にある場合は3年間 |
| 自立訓練(生活訓練・宿泊型を除く) | 2年間 | 長期間入院していた又はこれに類する事由のある障害者は3年間 |
| 自立訓練(宿泊型自立訓練) | 2年間 | 長期間入院していた又はこれに類する事由のある障害者は3年間4 |
| 就労移行支援 | 2年間 | あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師の資格取得を目的とする養成施設を利用する場合は3年間又は5年間 |
| 就労定着支援 | 3年間 | — |
| 自立生活援助 | 1年間 | — |
就労移行支援には、このほか一般就労中の一時的利用(労働時間延長・休職からの復職)に関する期間の特例がありますが、この特例と標準利用期間の関係は既公開記事「一般就労中の障害福祉サービスの一時的利用」で扱っているため、本記事では標準利用期間超過減算における一時的利用者の扱い(後述)に絞って説明します。
宿泊型自立訓練は、市町村が利用開始から1年ごとに利用継続の必要性を確認し、支給決定の更新を行うこととされています4。
支給決定の有効期間と更新の仕組み#
有効期間の考え方#
支給決定の有効期間は、原則として障害支援区分の有効期間と同一期間とされています。ただし、自立訓練等の標準利用期間を設定するサービスは、1年ごとに訓練継続の適否を評価することが適当であるという理由から、支給決定の有効期間は最長1年間です2。
更新の基本的な流れ#
支給決定の有効期間が終了した場合において、利用者が引き続きサービスの利用を希望するときは、市町村は支給申請に基づき勘案事項等を勘案し、利用継続の必要性が認められれば、改めて支給決定(更新)を行うことができます1。障害支援区分の認定が必要な介護給付費については、更新にあたって障害支援区分の有効期間の範囲内で行うか、改めて障害支援区分の認定(更新認定)を行う必要があります1。
暫定支給決定を経て本来的な訓練に移行する場合、事業者は暫定支給決定期間中のアセスメント結果等に基づき、標準利用期間(暫定支給決定期間を含む)の範囲内で適切なサービス提供期間を設定した個別支援計画を作成します5。
標準利用期間を超えた延長の仕組み#
自立訓練等の標準利用期間が設定されているサービスは、当初の支給決定期間が1年間までとされています。この1年間で十分な成果が得られず、かつ引き続きサービスを提供することによる改善効果が具体的に見込まれる場合には、標準利用期間の範囲内で1年ごとに支給決定期間の更新が可能です1。
標準利用期間そのものを超えてさらにサービスの利用が必要な場合は、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、**最大1年間の更新(原則1回)**が可能です1。ただし、次の2点には例外があります。
さらに、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く)では、複数の障害を有する障害者がそれぞれの障害特性に応じた異なるプログラムによる支援を受けることで効果改善が具体的に見込まれる場合であって、かつ市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合には、上記の最大1年間の更新に加えて、**さらに最大1年間(1回)**の更新が可能とされています4。
宿泊型自立訓練について標準利用期間を超えて支給決定の更新を行おうとする場合には、市町村審査会の意見を聴くこととされています4。
なお、就労継続支援のうち「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者」を対象とする場合は、支給決定の更新段階で協議会や障害者雇用支援合同会議等において、それまでの利用実績やサービス管理責任者による評価等を踏まえ、一般就労や他の事業の利用可能性を検討したうえで更新の要否を判断することとされています4。
令和7年10月以降・令和9年4月以降の就労選択支援との関係#
令和6年度報酬改定の概要では、令和9年4月以降、就労移行支援における標準利用期間を超えて利用する意向のある者は、支援体制の整備状況を踏まえつつ、原則として就労選択支援を利用することとされています6。標準利用期間の超過は、単に支給決定更新の審査対象になるだけでなく、就労選択支援の利用要否にも関わる論点である点に注意が必要です。
標準利用期間超過減算(事業所側の実害)#
対象サービスと減算率#
標準利用期間超過減算は、指定障害福祉サービス事業所等ごとの利用者の平均利用期間が「標準利用期間に6月を加えた期間」を超える場合に、所定単位数を減額する仕組みです3。対象サービスは次のとおりで、就労定着支援は対象に含まれていません3。
- 自立訓練(機能訓練)
- 自立訓練(生活訓練)(宿泊型自立訓練を除く)
- 就労移行支援
- 自立生活援助
算定される単位数は所定単位数の100分の95です。この所定単位数は各種加算がなされる前の単位数であり、各種加算を含めた単位数の合計数の100分の95となるものではない点に留意が必要です3。
「標準利用期間+6月」の具体的な月数#
留意事項通知は、「標準利用期間に6月間を加えて得た期間」を次のとおり具体的に示しています3。
| サービス | 標準利用期間+6月 |
|---|---|
| 自立訓練(機能訓練) | 24月間 |
| 自立訓練(生活訓練) | 30月間 |
| 就労移行支援 | 30月間(規則第6条の8ただし書きの規定の適用を受ける場合にあっては42月間又は66月間) |
| 自立生活援助 | 18月間 |
減算の具体的な取扱い#
指定障害福祉サービス事業所等が提供する各サービスの利用者(サービスの利用開始から1年を超過していない者を除く)ごとの利用期間の平均値が、上表の期間を超えている1月間について、その事業所における当該サービスの利用者全員につき減算するものとされています3。
利用者ごとの利用期間は、当該利用者のサービス利用開始日から各月の末日までの月数で算出します。利用開始日が月の初日の場合はその月を含み、月の2日目以降の場合はその月を含まず翌月以降から起算します3。
なお、規則第6条の6の規定により標準利用期間が36月間とされる利用者(頸髄損傷等による自立訓練(機能訓練)、長期入院等による自立訓練(生活訓練)が該当)については、平均利用期間の算定にあたり次の調整を行います3。
- 自立訓練(機能訓練)で標準利用期間が36月間とされる利用者:算定した期間を1.75で除して得た期間とする
- 自立訓練(生活訓練)で標準利用期間が36月間とされる利用者:算定した期間を1.4で除して得た期間とする
就労移行支援の一時的利用者は通算しない#
就労移行支援において、就労後に労働時間の延長の際に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とする者が、引き続き当該指定就労移行支援事業所において就労移行支援を受ける場合は、改めて支給決定を行うため、標準利用期間超過減算(報酬告示第12の1の注5の(3))における利用者のサービス利用期間の算定にあたっては、従前の支給決定における利用期間と通算しないこととされています3。一時的利用そのものの要件は「一般就労中の障害福祉サービスの一時的利用」で解説しています。
指定取消しとの関係#
平均利用期間が標準利用期間を超過することのみをもって、直ちに指定の取消しの対象となるものではありません。ただし、都道府県知事はこの減算の趣旨(標準利用期間の設定に実効性を持たせるもの)を踏まえ、適切な指導を行うこととされています3。
就労定着支援の利用期間との関係#
就労定着支援は標準利用期間が3年間と定められていますが、標準利用期間超過減算の対象サービスには含まれていません3。また、標準利用期間を超えて更新することもできないため、自立訓練・就労移行支援・自立生活援助のような「審査会審査を経た1年延長」という選択肢がない点が実務上の大きな違いです1。就労定着支援の対象者判定や利用期間の考え方(新規指定事業所での「42月から就労継続期間を除いた期間」等)は、「一般就労中の障害福祉サービスの一時的利用」で扱っています。
実務チェックリスト#
- 利用者ごとの標準利用期間(機能訓練1年6か月・生活訓練2年・就労移行支援2年・就労定着支援3年・自立生活援助1年、いずれも例外条件を確認)を個別支援計画・受給者証で管理する1
- 支給決定の有効期間は最長1年間であることを前提に、更新時期を個別に管理する2
- 標準利用期間を超えて延長する場合は、市町村審査会の個別審査が前提であることを利用者・家族に事前に説明する1
- 就労定着支援は3年の標準利用期間を超えた更新ができない点を、支援計画の早い段階から利用者に伝えておく1
- 事業所単位での平均利用期間(利用開始から1年を超過していない者を除く)を月次で試算し、「標準利用期間+6月」に近づいていないか確認する3
- 標準利用期間が36月間とされる利用者がいる場合、平均利用期間の算定で1.75(機能訓練)・1.4(生活訓練)による調整が必要であることを請求事務の担当者と共有する3
- 就労移行支援で標準利用期間を超えて利用する意向のある利用者について、令和9年4月以降は就労選択支援の利用が原則となることを踏まえた支援体制を検討する6
よくある質問#
Q. 標準利用期間はどのサービスに設定されていますか?#
自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労定着支援、自立生活援助に設定されています。期間はサービスごとに異なり、機能訓練1年6か月、生活訓練2年、就労移行支援2年、就労定着支援3年、自立生活援助1年が原則です(いずれも例外条件あり)1。
Q. 標準利用期間を超えて利用したい場合、必ず延長できますか?#
自動的に延長できるわけではありません。標準利用期間を超えてさらにサービスの利用が必要な場合は、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、最大1年間(原則1回)の更新が可能です。自立生活援助は回数制限なく更新できますが、就労定着支援は標準利用期間(3年)を超えた更新自体ができません1。
Q. 標準利用期間超過減算とは何ですか?#
指定障害福祉サービス事業所等ごとの利用者の平均利用期間が「標準利用期間に6月を加えた期間」を超える場合に、対象サービス(自立訓練の機能訓練・生活訓練(宿泊型を除く)・就労移行支援・自立生活援助)の所定単位数を100分の95に減算する仕組みです。就労定着支援は対象に含まれません3。
Q. 平均利用期間の計算にすべての利用者が含まれますか?#
含まれません。サービスの利用開始から1年を超過していない者は、平均利用期間の算定対象から除外されます3。
Q. 一般就労後に労働時間延長のため就労移行支援を継続利用する場合、標準利用期間超過減算の計算に影響しますか?#
影響しません。この一時的利用は改めて支給決定を行うため、標準利用期間超過減算における利用期間の算定にあたっては、従前の支給決定における利用期間と通算しないこととされています3。
制度上の根拠#
Footnotes#
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厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」p.106〜108 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15
-
厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」p.93 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「障害福祉サービス等の費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項」p.27〜29 https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16
-
厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」p.108〜110 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領・令和8年7月版)」p.85 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf ↩
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.59 https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf ↩ ↩2