令和7年(2025年)10月1日、障害者本人の「働き方の選択」を支援する新しい障害福祉サービス就労選択支援が施行されました1。基本報酬は就労選択支援サービス費 1,210単位/日の一本立てで、定員規模や利用者の状態による区分はありません23。
本記事では、就労移行支援・就労継続支援A型/B型の経営者・管理者の方向けに、就労選択支援の報酬体系(基本報酬・加算・減算)と算定上の留意点を、告示・通知・公式Q&Aに基づいて解説します。
就労選択支援の基本ルール(結論)#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 令和7年(2025年)10月1日1 |
| 基本報酬 | 就労選択支援サービス費 1,210単位/日23 |
| 支給決定期間 | 原則1か月1 |
| 人員配置 | 管理者+就労選択支援員(常勤換算で利用者数÷15以上)14 |
| サービス管理責任者 | 配置不要(個別支援計画の作成も不要)4 |
| 利用日数の上限 | 各月の暦日数から8日を控除した日数1 |
就労選択支援は、障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援するサービスです1。就労訓練を提供するサービスではなく、短期間(原則1か月)のアセスメントと情報提供に特化している点が、既存の就労系サービスとの最大の違いです。
対象者と「B型利用前の原則利用」#
対象は、就労移行支援・就労継続支援を利用する意向がある人と、現に利用している人です1。
実務上特に重要なのは、令和7年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある人は、原則として就労選択支援を先に利用する扱いになった点です1。ただし、次のいずれかに該当する人は、就労選択支援のアセスメントを経ずにB型を利用できます1。
- 50歳に達している人
- 障害基礎年金1級受給者
- 就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人
また、近隣に就労選択支援事業所がない場合や、事業所が少なく待機期間が生じる場合は、従来どおり就労移行支援事業所等によるアセスメントを経たB型利用が認められます1。新たにA型や就労移行支援を利用する意向がある人は、本人の希望に応じて任意で利用できます(原則利用の対象ではありません)1。
サービスの流れ(標準1か月)#
図: 就労選択支援の標準的な流れ(支給決定期間は原則1か月)14
基本報酬と算定ルール#
基本報酬は1,210単位/日です(平成18年厚生労働省告示第523号 第11の2)3。日額報酬ですが、算定には次のルールがあります1。
- 算定対象は利用者に対して直接支援を行った日です。利用者が同席する多機関連携のケース会議や企業訪問は算定対象になりますが、利用者の参加を伴わない関係機関との連絡調整のみの日は算定できません。
- サービス提供記録に1日単位の支援内容を記録する必要があります。
- 指定基準に定める事業内容(アセスメント、ケース会議、結果の作成・共有等)に未実施の事項がある場合、就労選択支援を適切に提供していないものとして、全体として基本報酬が算定できません(利用者の責めに帰すべき事由による場合は、実施できたところまで算定可)。
- 1月あたりの利用日数は、他の就労系サービスと同様、原則として各月の暦日数から8日を控除した日数が上限です。
支給決定期間は原則1か月#
支給決定期間は原則1か月です1。次の例外事由に該当する場合に限り、一度のみ再度1か月の支給決定が認められます1。
- 進路に関する自己理解に大きな課題があり、改善に向け1か月以上の継続的な作業体験が必要な場合
- 集中力・体力・意欲の持続や体調・精神面の安定に課題があり、進路確定に1か月以上の観察が必要な場合
当初から例外事由に該当することが明らかな場合は、最初から2か月間の支給決定も可能です(その場合、さらなる延長はできません)1。
他のサービスとの同一日利用#
就労選択支援の報酬を算定した日は、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援(A型/B型)といった日中活動サービスの報酬を同一日に算定できません1。ただし、事業所間の合議による報酬の按分(時間帯が別なら利用時間で按分、同時間帯なら等分など)を行えば、同一日の利用自体は妨げられません1。
一方、放課後等デイサービスや障害児入所施設は支援内容・報酬に重なりがないため、同一日に併給できます1。
加算一覧#
| 加算 | 単位数 | 備考 |
|---|---|---|
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)/(Ⅱ)/(Ⅲ) | 15 / 10 / 6単位/日 | 有資格者の配置割合等で判定 |
| 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 51 / 41単位/日 | |
| 高次脳機能障害者支援体制加算 | 41単位/日 | |
| 欠席時対応加算 | 94単位/回 | 月4回まで |
| 医療連携体制加算(Ⅰ)〜(Ⅵ) | 32〜800単位/日 | 看護提供時間・医療的ケアの有無で区分 |
| 利用者負担上限額管理加算 | 150単位/回 | 月1回まで |
| 食事提供体制加算 | 30単位/日 | |
| 送迎加算(Ⅰ)/(Ⅱ) | 21 / 10単位/片道 | 同一敷地内は70% |
| 在宅時生活支援サービス加算 | 300単位/日 | |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ〜(Ⅳ) | 所定単位数の8.1%〜11.9%/月 | 令和8年6月改定で区分再編5 |
福祉専門職員配置等加算は、常勤の直接処遇職員に占める社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師の割合で判定します((Ⅰ)35%以上、(Ⅱ)25%以上)3。他事業所と兼務する職員は、就労選択支援事業所での勤務時間が常勤に達している場合のみ算定対象になる点に注意してください3。
減算一覧 — 「特定事業所集中減算」が最重要#
| 減算 | 内容 |
|---|---|
| 定員超過利用減算 | 所定単位数の70%を算定2 |
| 就労選択支援員欠如減算 | 所定単位数の70%(3か月以上連続の場合は50%)を算定2 |
| 特定事業所集中減算 | 1日につき200単位を減算2 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 所定単位数の1%を減算5 |
| 虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1%を減算5 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の1%を減算(令和9年4月1日から適用)25 |
| 情報公表未報告減算 | 所定単位数の5%を減算(下記の経過措置あり)35 |
情報公表未報告減算については、就労選択支援に係る情報公表システムの改修が完了するまでの間は適用しない取扱いが公式Q&Aで示されています(令和7年10月1日時点での入力は不要)3。
特定事業所集中減算のしくみ(80%ルール)#
就労選択支援の中立性を制度的に担保する、このサービス特有の減算です。アセスメントを終了した利用者の移行先が特定の法人に80%超集中した場合、減算適用期間中のすべての利用者について1日につき200単位が減算されます12。
- 判定は年2回。前期(1月1日〜6月末日)に該当した場合は同年10月1日〜3月31日、後期(7月1日〜12月末日)に該当した場合は翌年度4月1日〜9月30日が減算適用期間になります1。
- 判定方法: アセスメント終了者のその後の移行先を、就労移行支援・A型・B型(基準該当含む)のサービスごとに集計し、いずれかのサービスで「移行人数が最多の法人」の占める割合が80%を超えると減算対象になります1。
- 全事業所に書類義務: 前期分は9月15日まで、後期分は3月15日までに判定書類を作成し、80%を超えた場合は指定権者へ提出します。80%以下でも書類の作成と5年間の保存が必要です1。
- 正当な理由があれば減算は適用されません。地域のサービス事業所が5事業所未満の場合、サービスにつながった件数が5件以下の場合、サービスの質を理由とする利用者の希望がある場合などが例示されています1。
同一法人の就労選択支援が使えないケース#
就労移行支援や就労継続支援を利用中の人が、受給者証の更新や事業所変更の検討にあたって就労選択支援を利用する場合、アセスメントの客観性を担保するため、利用中のサービスと同一法人が運営する就労選択支援は利用できません(近隣に他法人の事業所がない場合を除く)1。80%ルールと併せて、自法人サービスへの誘導を防ぐ二重の仕組みです。
人員・設備・実施主体の基準#
- 就労選択支援員: 常勤換算で利用者数÷15以上。1人未満の配置も認められます1。一体的に運営する就労移行支援事業所等の常勤の直接処遇職員は、サービス提供に支障がなければ兼務でき、兼務時間を常勤換算に算入できます13。
- 養成研修: 就労選択支援員は就労選択支援員養成研修の修了が要件です。経過措置として、令和9年度末までは基礎的研修(またはこれと同等以上の研修)の修了者を就労選択支援員とみなします1。
- サービス管理責任者・個別支援計画は不要: 短期間のサービスであることから、個別支援計画の作成は不要とされ、サービス管理責任者の配置も求められません4。
- 設備: 訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室等が必要ですが、支援に支障がない場合は他事業所の設備との兼用が認められます3。
- 実施主体: 就労移行支援または就労継続支援の指定事業者であって、過去3年以内に合計3人以上の利用者が新たに一般就労した実績を持つ事業者等です1。多機能型事業所は複数事業の実績を合算できます3。
既存の就労系事業所が取るべき対応#
- B型の利用導線の変化を織り込む — 新規のB型利用希望者は原則として就労選択支援を経由します。見学・体験から契約までの導線に就労選択支援の利用期間(原則1か月)が挟まることを前提に、利用開始までのスケジュールを案内しましょう。
- 参入するかを判断する — 一般就労3人/3年の実績があれば指定申請が可能です。基本報酬1,210単位×原則1か月という構造上、単独での収益性は限定的ですが、地域の就労支援の「入口」を担うことによる紹介・連携面の意義があります。
- 兼務で人員を設計する — 就労選択支援員は既存事業所の常勤直接処遇職員の兼務で確保できます。養成研修(当面は基礎的研修)の受講計画を立てましょう。
- 書類体制を整える — 特定事業所集中減算の判定書類は、減算に該当しない場合でも年2回の作成・5年保存が必要です。運営指導(実地指導)での確認対象になり得ます。
よくある質問#
Q. 就労継続支援B型を利用するには、必ず就労選択支援を受ける必要がありますか?#
令和7年10月以降に新たにB型を利用する意向がある人は、原則として就労選択支援を先に利用します。ただし、50歳に達している人、障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難になった人は、就労選択支援を経ずに利用できます。近隣に就労選択支援事業所がない場合等も、従来型の就労アセスメントで代替できます1。
Q. サービス管理責任者の配置や個別支援計画の作成は必要ですか?#
不要です。就労選択支援は短期間のサービスであることから、個別支援計画の作成は不要とされ、サービス管理責任者の配置も求められません。人員基準は管理者と就労選択支援員(常勤換算で利用者数÷15以上)です14。
Q. 自社(同一法人)の利用者に就労選択支援を提供できますか?#
利用中のサービスの更新・変更を検討する場面では、同一法人が運営する就労選択支援は利用できません(近隣に他法人の事業所がない場合を除く)。また、アセスメント終了者の移行先が特定の法人に80%超集中すると、特定事業所集中減算(200単位/日)の対象になります1。
Q. 情報公表未報告減算はいつから適用されますか?#
告示上は所定単位数の5%を減算する規定がありますが、就労選択支援に係る情報公表システムの改修が完了するまでの間は適用しない取扱いです。令和7年10月1日時点でのシステム入力は不要とされており、報告開始時期は追って事務連絡等で周知される予定です3。
Q. 就労選択支援と就労継続支援B型を同じ日に利用できますか?#
就労選択支援の報酬を算定した日は、B型を含む日中活動サービスの報酬は算定できません。ただし、事業所間の合議で報酬を按分すれば同一日の利用自体は可能です(例: B型の作業場面で就労選択支援のアセスメントを行う場合は報酬を等分)1。
出典#
Footnotes#
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厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日障発0331第3号・令和7年9月30日一部改正) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571813.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25 ↩26 ↩27 ↩28 ↩29 ↩30 ↩31 ↩32 ↩33
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厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード(令和8年6月施行版)」就労選択支援サービスコード表 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696434.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
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厚生労働省「就労選択支援に関するQ&A VOL.1」(令和7年9月5日) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
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厚生労働省「就労選択支援 実施マニュアル」p.6 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001480295.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年6月施行版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696433.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6