共通

障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業とは|交付率(6月分)・要件・賃金改善のルール・実績報告と処遇改善加算との関係

公開: 2026年10月19日更新: 2026年10月19日

この分野をもう少し深く聞きたいなら無料セミナーの日程を見る

障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業は、令和8年度の報酬改定を待たずに人材流出を防ぐため、令和7年12月から実施された賃上げ支援の補助金です。令和7年12月の報酬額に交付率を掛けた額(6か月分)が補助され、全額を賃金改善に充てることが求められます1。本記事では、国の実施要綱(厚生労働省・こども家庭庁)とQ&A(第2版)に沿って、対象・補助額・要件・賃金改善のルール・実績報告・処遇改善加算との関係を整理します。

申請の受付時期・期限、計画書と実績報告書は都道府県ごとに設定・提示されます2。補助金の計画書・実績報告書は、処遇改善加算の計画書・実績報告書とは別の様式です1。事業所の所在する都道府県の案内を必ず確認してください。

結論:事業の骨格#

項目内容
目的令和8年度報酬改定の時期を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として賃上げを支援1
実施主体都道府県1
対象処遇改善加算を取得し取組を推進する(又は見込みの)事業所。加算の対象外サービス(計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援・障害児相談支援)は、加算Ⅳに準ずる要件を満たす事業所13
補助額基準月(原則令和7年12月)の障害福祉サービス等総報酬 × 交付率(6月分として設定)1
使い道補助額は全額を賃金改善に充てる1
賃金改善の対象者福祉・介護職員以外も含む障害福祉従事者(管理者・サビ管・事務員・調理員等も含む)12
対象外令和8年4月以降に新規開設された事業所、計画書の提出時点で廃止・休止が明らかな事業所(合併・事業承継で実質的に継続して運営していると認められる場合は申請可)12

この分野をもう少し深く聞きたいなら無料セミナーの日程を見る

補助額の計算#

補助額は、利用者ごとに次の式で計算し、事業所ごとに合計します(1円未満は切り捨て)1。

利用者ごとの補助額 = 基準月の障害福祉サービス等総報酬 × 交付率

  • 総報酬は、基準月の報酬総単位数(基本報酬に各種加算減算を加えた単位数)に1単位の単価を乗じたもの。過誤調整を行った場合はその分を含む1。
  • 障害児入所施設等は、支弁した障害児施設措置費も総報酬に含めます3。
  • 月遅れ請求・再請求等の過誤調整分は、都道府県の判断で、令和8年3月末日までに生じ、令和8年4月10日までに審査支払機関に受理されたものに限り反映できる12。

交付率(6月分)#

サービス交付率
居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援20.3%
生活介護11.1%
施設入所支援・短期入所・療養介護22.2%
自立訓練(機能訓練・生活訓練)・宿泊型自立訓練23.0%
就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援・自立生活援助11.4%
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型)14.1%
計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援47.0%
児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援18.5%
福祉型・医療型障害児入所施設80.8%
障害児相談支援47.0%

障害者支援施設が行う日中活動系サービスは、各サービスと同じ交付率です1。

計算例(数値は説明用):就労継続支援B型で、令和7年12月の総報酬が200万円の場合、200万円 × 11.4% = 22万8,000円(6月分)が補助の目安です(実際は利用者ごとに計算して合計します)。

補助金の要件#

処遇改善加算の対象サービス(別紙1表1)#

算定している加算要件
共通基準月に処遇改善加算を算定していること。基準月に未算定でも、申請時に算定しているか、令和8年度中に算定することを誓約すれば、基準月から算定しているものとして扱う
加算Ⅲ・Ⅳ職場環境等要件について、全体から8以上の取組を実施(令和8年度中の実施の誓約も可)
加算Ⅰ・Ⅱ次のいずれか:①経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上の賃金改善後の賃金の見込額(処遇改善加算による賃金改善の見込額を含む)が年額460万円以上。ただし、処遇改善加算による賃金改善以前から年額460万円以上の者は除く(令和8年度中の実施の誓約も可) ②職場環境等要件について全体から14以上の取組を実施(同)

(出典:実施要綱 6(1))1

誓約で要件を満たした扱いにした場合は、実績報告書で、誓約した内容を実施したことを報告します1。

処遇改善加算の対象外サービス(別紙1表2)#

計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援(児童は障害児相談支援)は、基準月に処遇改善加算Ⅳの算定に準ずる次の要件を全て満たすことが要件です(令和8年度中に整備することの誓約も可)13。

  • 任用要件・賃金体系の整備等:職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を定め、就業規則等で書面化して全職員に周知(常時雇用10人未満など就業規則の作成義務がない事業所は内規等で可)
  • 研修の実施等:職員と意見を交換しながら、資質向上の目標と、a(研修機会の提供または技術指導等とあわせた能力評価)またはb(資格取得のための支援)に関する具体的な計画を策定し、研修の実施または機会の確保をして全職員に周知
  • 職場環境等要件:5つの区分ごとに1以上、「生産性向上」は2以上の取組(1法人1事業所などの小規模事業者は㉔の取組で生産性向上の要件を満たす)

賃金改善のルール#

実施要綱は、補助額に相当する賃金改善を新規に実施しなければならないとしています1。

  • 賃金は基本給、手当、賞与等(退職手当を除く)。対象とする賃金項目を特定した上で行う1。
  • 交付対象期間において、前年同時期と比べて、賃金改善の対象とした職員の賃金水準を低下させてはならない1。
  • 交付決定前に決まっていた賃金改善の原資にすることや、その代わりに本事業で賃金改善を行うことは認められない1。
  • 基本給による賃金改善が望ましいが、事業者の判断で手当・一時金等を組み合わせてもよい1。
  • 一部の職員や一部の事業所に集中させるなど、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は行わない1。
  • 賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができる2。
  • 交付額は、同一事業者が運営する他の事業所(補助金の対象である事業所に限る)の人件費改善に充てることができる1。
  • 賃金改善の方法や、補助金の全額が賃金改善に充てられている旨とその内訳を職員に周知し、職員から照会があれば書面を用いるなど分かりやすく回答する。労働基準法等の労働法規を遵守する1。

いつまでに賃金改善を行うか#

Q&A(問2)は次のとおりです2。

  • 令和8年3月末までに補助金の支給を受けた場合:令和7年12月から令和8年3月末まで
  • 令和8年4月以降に支給を受けた場合:令和7年12月から、各自治体が定める実績報告書の提出期限まで

いずれの場合も、緊急支援という趣旨から、可能な限り速やかに実施するよう求められています2。

誰の賃金を改善できるか#

対象は障害福祉現場で働く幅広い職種で、施設長・管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、サービス提供責任者、看護職員、生活支援員、職業指導員、就労支援員、世話人、相談支援専門員、管理栄養士・栄養士、調理員、事務員等が想定されています2。

  • 法人本部の職員:補助対象の事業所の業務を行っていると判断できる場合は対象にできる。補助対象でない事業所の職員は対象にできない2。
  • 役員:補助対象の事業所の業務を行っていると判断できる場合は対象にできる(職員が1人で、計画作成業務を代表取締役等が行う特定相談支援事業所など)2。

手続き:計画書・実績報告書・保存#

手続き内容
計画書補助金の支給要件と、補助額の賃金改善経費への充当方法を別紙様式で作成し、都道府県知事に提出1
実績報告書補助金の総額、うち賃金改善経費の総額、賃金改善の所要額を報告。賃金改善の所要額は補助金の総額以上、かつ賃金改善経費の総額以上とする1
保存実績報告書と、計画書の根拠資料・就業規則・労働保険の加入が分かる書類を2年間保存し、求めがあれば速やかに提示12
変更の届出合併等で計画書の作成単位が変わる、一括申請の事業所に廃止等の変更がある、処遇に関する就業規則の改訂、の場合に別紙様式4で届出1
特別事情届出書経営悪化等で賃金水準を引き下げた上で賃金改善を行う場合は、別紙様式5で届出(収支が一定期間赤字・資金繰りに支障などの状況、引下げの内容、改善の見込み、労使の合意の時期と方法 等)1

要件ごとの根拠資料の例(Q&A 問5)は、基準月を含む処遇改善加算の計画書、就業規則等の根拠規定、研修計画、職場環境等要件の取組を証明する資料などです。届出時に一律の添付は求められません2。

申請は事業所の所在する都道府県ごとに行い、同一都道府県内の事業所は法人単位で同一の計画書を用いて申請できます。計画書は必ず各都道府県が示したものを使います2。

補助金の返還#

次の場合、都道府県知事は補助金の一部または全部を返還させます1。

  1. 補助額に相当する賃金改善が行われていない、賃金水準を引き下げながら特別事情届出書を出していない、労働法規を遵守していないなど、要綱の要件を満たさない場合(期限内に誓約した内容が満たされていない場合を含む)
  2. 虚偽または不正の手段により補助金を受けた場合
  3. 障害者総合支援法(障害児支援は児童福祉法)その他の関係法令に違反した場合

処遇改善加算との関係#

  • 本事業による賃金改善は、処遇改善加算による賃金改善額には含めません1。
  • 令和8年度の処遇改善加算の計画書・実績報告書でも、賃金改善額の欄は「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業から賃金に充てた額を除く」とされています4。
  • つまり、緊急支援事業の補助額と処遇改善加算の加算額は、それぞれに相当する賃金改善を別々に行う必要があります。

支払いと他の補助金#

  • 補助額の支払いは、原則として法人ごとに1口座、国保連に介護給付費等の振込先として登録している口座に行われます。ファクタリングで介護給付費等の債権譲渡をしている事業所は、債権譲渡していない口座等に支払われます12。
  • 本補助金は全額を賃金改善に充てる補助金なので、債権譲渡は適当ではないとされています2。
  • 重点支援地方交付金による中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備事業との併用は、同じ経費に複数の補助を受けない限り可能です(上乗せ・横出し)2。

よくある質問#

Q. 基準月は必ず令和7年12月ですか?#

原則は令和7年12月です。都道府県のスケジュールによっては、大規模改修や感染症まん延等で12月の報酬が著しく低い場合に令和7年12月〜令和8年3月のいずれかの月を選べる、令和8年1〜3月に新規開設した事業所を対象にする、といった例外があり得ます2。都道府県の実施要綱を確認してください。

Q. 処遇改善加算を算定していない事業所は対象外ですか?#

基準月に算定していなくても、申請時に算定しているか、令和8年度中に算定することを誓約すれば、要件の審査では基準月から算定しているものとして扱われます。その場合は、実績報告書で加算の算定を報告します。誓約した内容が満たされないと返還の対象です1。

Q. 補助金の全額を賞与で支給してもよいですか?#

実施要綱は、基本給による賃金改善が望ましいとした上で、事業者の判断で手当・一時金等を組み合わせて実施しても差し支えないとしています1。全額を一時金(賞与)で支給してよいかは明記されていないので、都道府県に確認してください。いずれの場合も、賃金項目を特定し、賃金水準を低下させないこと、著しく偏った配分をしないことが必要です1。

Q. 休廃止を予定している事業所は?#

計画書の提出時点で休廃止が明らかな事業所は対象外です。提出後に見通せなかった事情で休廃止することになった場合は、速やかに都道府県に届け出ます2。

関連記事#

Footnotes#

  1. 厚生労働省「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業 実施要綱」(障発1226第7号・令和7年12月26日、令和7年12月16日から適用)(千葉県掲載) (https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/shienhou/syogukaizen/documents/02youkou2026.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25 ↩26 ↩27 ↩28 ↩29 ↩30 ↩31 ↩32 ↩33 ↩34 ↩35

  2. 「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業に関するQ&A(第2版)」問1〜13(千葉県掲載) (https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/shienhou/syogukaizen/documents/qanda2.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18

  3. こども家庭庁「障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業実施要綱」(こ支障第447号・令和7年12月26日)別紙1(障害児支援の交付率)(千葉県掲載) (https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/shienhou/syogukaizen/documents/03youkou2026.pdf) ↩ ↩2 ↩3

  4. 厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)別紙様式2-1・3-1(賃金改善額から緊急支援事業の充当額を除く) (https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/126420/r8_4_syoguukaizen_jimusyoritejyun.pdf) ↩

無料セミナー|この内容、専門家がくわしく解説します。

報酬改定の最新動向や運営のつまずきどころを、就労継続支援A型・B型の事業所向けにオンラインで定期開催しています。

  • 参加費無料
  • オンライン開催
  • 事前申込制