雇用福祉横断検討会の第7回で「加齢問題」の調査結果と復職が取り上げられた#
この記事の要点(2026年11月5日時点)
厚生労働省の「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」は、令和8年10月27日の第7回で「雇用と福祉の相互往来について」を議題としました12。9月10日に公表された中間とりまとめ6が、継続して検討するとしていた「精神障害者の復職支援を含めた雇用と福祉の相互往来」に関わる議題です7。中間とりまとめの内容は障害者就労の雇用と福祉の役割分担で解説しています。
本記事は、事務局資料に記載された事実を整理するものです。制度改正の結果や方向性の予測は行いません。
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① 「加齢問題」とは#
中間とりまとめは、企業雇用の中での高齢化が進み、「早期に気力・体力の大幅な低下が生じ、一般就労の継続は困難となったものの、B型事業所等での就労を希望するケースも多くなってきている」点が指摘されているとして、これを「いわゆる『加齢問題』」と記載しています7。
今回のアンケートでは、加齢事例を次のように定義しています8。
貴社の経験上、通常想定される障害のない従業員の定年年齢までの意欲・能力・体力等の低下傾向に比べると相当程度早い年齢において意欲・能力・体力等の著しい低下が見られる事例
② アンケート調査の結果#
調査は、全国障害者雇用事業所協会と障害者雇用企業支援協会の加盟企業を対象としたWebアンケートです3。有効回答は164社で、実施期間は令和8年9月9日〜9月17日(障害者雇用企業支援協会の加盟企業は9月25日まで)です3。回答企業の法人種別は特例子会社128社、一般企業34社、その他2社です3。障害者雇用に取り組む企業全体を代表する数字ではない点に注意が必要です。
全体の結果#
- 回答企業の62%(102社)が加齢事例が「ある」と回答8
- 「いずれの障害種別においても、概ね45~59歳で加齢事例が見られたと回答する企業が多かった」8
- 加齢事例に対して企業内で対策を講じている企業は約7割で、対策は「業務内容・作業工程の見直し」が最も多く、次いで「意欲・能力・体力の低下度合いに応じた配置転換」9
- 加齢事例について外部支援機関を活用したのは約5割9
障害種別の結果#
| 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | |
|---|---|---|---|
| 加齢事例がある企業 | 30社(30%、n=99) | 77社(77%、n=100) | 18社(18%、n=100) |
| 本人が就労継続を希望する場合が多い | 21社(72%、n=29) | 57社(74%、n=77) | 10社(62%、n=16) |
| 対策を講じても雇用契約の維持が困難と感じた事例がある | 15社(54%、n=28) | 42社(55%、n=76) | 12社(71%、n=17) |
| 最終的に離職に至った事例がある | 11社(39%、n=28) | 28社(37%、n=76) | 8社(50%、n=16) |
| 加齢を契機に福祉に移行した事例がある | 2社(7%、n=28) | 22社(29%、n=76) | 3社(19%、n=16) |
| 移行先(資料の表記) | 生活介護(1社)、共同生活援助(1社) | 就労継続支援A型(7社)、就労継続支援B型(17社)、就労移行支援(1社)、作業所(1社) | 就労継続支援A型(1社)、就労継続支援B型(2社) |
いずれも資料の記載です4。精神障害者の加齢事例について資料は、「加齢そのものによる体力等の低下に加えて、症状の悪化によるものと思われるものも見られた」としています4。
企業が挙げた具体的な課題#
資料は、対応が難しいと感じたケースの傾向を次のようにまとめています4。
- 身体障害者:「業務の切り出しに困難を抱える事例が目立った」
- 知的障害者:「業務の切り出しの他、本人や家族との意向調整に関する事例が多かった」
- 精神障害者:「本人や家族とのコミュニケーションやトラブルに関する意見が多く見られた」
国に期待する施策#
自由記述(n=94)を分類した結果では、「対応事例を国から示すこと」が最も多く、次に「就労が困難になった場合の対応」が多かったとされています10。記載された意見には、次のようなものがあります10。
- 「就労から福祉への段階移行をしていくことを支援する仕組み(行政サポート)があると当事者のQOL向上に繋がるのではないか。」
- 「企業に在籍したままで再訓練を受けられる仕組み作りをお願いしたい。」
- 「企業をリタイアしたあとの、働き続けられる受け皿(福祉事業所等)の拡充。」
- 「移行した場合の本人の収入面で補償制度。」
雇用率のカウントや助成金についての要望も掲載されています10。いずれも回答企業の意見であり、施策として決まったものではありません。
③ 事務局が示した論点#
資料の論点は「加齢問題に関して、求められる対応についてどう考えるか」です5。資料は、加齢事例では「まずは雇用主において必要な合理的配慮の提供がなされた上で」、それでも就労の継続が困難と考えられる場合に、企業と本人・家族等が丁寧に話し合い、適切な支援の在り方を考えていく必要があるが、現状は「各企業が個々の企業内において個別に対応している状況」としています5。
そのうえで、次の内容を「とりまとめた加齢問題に関する企業の対応に資する参考資料(事例や制度紹介を含む)を示すこととしてはどうか」と提示しました5。
- 具体的に生じている加齢事例
- それに対して企業が講じた施策・ノウハウ
- 障害者就業・生活支援センター等第三者機関を活用した事例
- 企業と障害者本人において本人の意向も踏まえて福祉に移行した事例
- 相談機関、助成制度、本人の希望に応じた利用が考えられる福祉サービス等の各種制度
あわせて「その他どういった対応が考えられるか」とも記載されています5。資料には現行の仕組みとして、合理的配慮の提供義務、実雇用率のカウント、「加齢により職場への適応が困難となった中高年齢等障害者(35歳以上の者)」の雇用継続への助成なども掲載されています11。検討会に示された案であり、決まったものではありません。
④ うつ等からの復職#
復職について資料は、一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用のうち、「休職からの復職を目指す場合(復職支援型)」の現行の仕組みを整理しています12。
- 対象サービス:就労移行支援、就労継続支援A型・B型。生活介護や自立訓練も、同様の要件を確認できた場合に支給決定できる
- 利用期間:「企業の定める休職期間の終了までの期間(上限2年)」
- 支給決定期間:「1か月から6か月までの範囲内」
参考として、第159回障害者部会(9月17日)13の委員の主な意見が掲載されています14。
- 「一時利用の利用条件(※)が守られるよう、マネジメントを行うことが重要。」
- 「さらに周知、情報提供が必要。」
- 「企業の関与は重要だが、入院中の休職者等が企業に制度を説明し、書類を依頼する負担は大きい。」
- 「復職支援については、在職のままでも利用できるようにしてほしい。」
委員の意見の紹介であり、制度の変更が決まったものではありません。 資料の「論点」の頁は加齢問題について置かれており、復職の部分は現行の仕組みと委員の意見の整理です51214。
復職支援の報酬上の評価については、第64回の検討チームで、就労継続支援の一般就労への移行に関する評価の論点の中で「復職支援は就労移行支援体制加算とは別の形で評価することを検討してはどうか」と示されています(検討案)15。現行の要件は一般就労中の障害福祉サービスの一時的利用で解説しています。
⑤ 事業所として押さえておくこと#
第7回で報酬・基準・雇用率の扱いが変わったわけではありません。資料から確認できる事実は次のとおりです。
- 回答企業の6割が加齢事例を経験していると回答した(加盟企業164社の調査)38
- 知的障害者の加齢事例では、移行先として就労継続支援B型17社、A型7社が挙げられた4
- 国に期待する施策の自由記述の分類で多かったのは、対応事例の提示と、就労が困難になった場合の対応だった10
- 事務局は、企業向けの参考資料を示す案を提示した5
改定検討の全体の流れは令和9年度障害福祉報酬改定|検討スケジュールと論点をご覧ください。続報については本記事を随時更新するとともに、厚生労働省「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」のページで一次情報をご確認ください。
よくある質問#
Q. 「加齢問題」とは何ですか?#
企業で働く障害者に、障害のない従業員の定年までの低下傾向と比べて相当程度早い年齢で、意欲・能力・体力等の著しい低下が見られる事例を指して、検討会の資料で使われている語です87。
Q. 企業から就労継続支援B型へ移る人が増えるということですか?#
資料からは言えません。資料が示しているのは、調査時点で、加齢を契機に福祉に移行した事例があると回答した企業の数です。移行者の人数や今後の増減は示されていません4。
Q. 企業が復職のために就労移行支援などを使うことはできますか?#
現行でも、利用条件を満たす場合に一時的な利用が可能です。企業、地域の支援機関、医療機関等による復職支援が見込めない又は困難である場合などの条件があり、市区町村が判断します12。
Footnotes#
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厚生労働省「第7回障害者就労に係る雇用福祉横断検討会(資料)」(令和8年10月27日開催) ↩ ↩2
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」(第7回障害者就労に係る雇用福祉横断検討会 資料1、令和8年10月27日)p.4(調査概要) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.7〜8(身体障害者)、p.9〜10(知的障害者)、p.11〜12(精神障害者) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.22〜23(論点) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
厚生労働省「雇用と福祉の果たすべき機能・役割と連携の基本的考え方(中間とりまとめ)」(障害者就労に係る雇用福祉横断検討会、令和8年9月10日公表) ↩
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.3(中間とりまとめの抜粋) ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.5(加齢事例の定義・有無・年齢) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.6(企業内での対応・外部機関への相談) ↩ ↩2
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.13〜14(国に期待する施策) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.15〜21(現行の仕組み) ↩
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.28〜30(復職支援型) ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「社会保障審議会障害者部会(第159回)の資料について」(令和8年9月17日開催) ↩
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厚生労働省「雇用と福祉の相互往来関係(企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題、うつ等からの復職)」 p.33(障害者部会の委員の主な意見) ↩ ↩2
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厚生労働省・こども家庭庁「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」(第64回障害福祉報酬改定検討チーム 資料、令和8年9月28日)p.8(論点1 一般就労への移行に関する評価) ↩