雇用と福祉の役割分担について「中間とりまとめ」が公表された#
この記事の要点(2026年9月20日時点)
厚生労働省の「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」は、令和8年9月10日に「雇用と福祉の果たすべき機能・役割と連携の基本的考え方(中間とりまとめ)」を公表しました1。同年9月7日の第6回検討会で中間とりまとめ案が議論され2、9月17日の社会保障審議会障害者部会(第159回)にも資料2として報告されています3。
本記事は、この中間とりまとめに記載された事実を整理するものです。報酬改定の結果や方向性の予測は行いません。
この分野をもう少し深く聞きたいなら無料セミナーの日程を見る
① 示された「基本的考え方」#
中間とりまとめは、雇用と福祉が果たすべき機能・役割の基本を次のとおり整理しました1。
障害の有無にかかわらず、働くことを希望する人が、その能力・適性に合わせて働くことのできる社会の実現を目指していく。このため、 ・一般就労が可能な状態像にある者に対しては、一般就労において雇用機会を設け、 ・一般就労が困難な者に対しては、福祉において、一般就労への移行支援、又は、就労の場を設ける ことを、雇用と福祉それぞれの果たすべき機能・役割の基本とし、連携を強化していくこととする。
この整理について、資料は「現行制度上も前提となってきた」ものであると述べています1。そのうえで、20年間で一般就労の困難さが大きく変化したことを踏まえ、「本人の希望と状態像等を十分に踏まえた丁寧なアセスメント等により、地域の実情等を踏まえた支援方針の検討が行われることを前提としつつ、雇用・福祉それぞれの果たすべき機能・役割として再確認するものである」としています1。新しい枠組みの創設ではなく、既存の前提の再確認という位置づけであり、丁寧なアセスメントと地域の実情の考慮が前提条件として明記されています。
② 就労継続支援A型について示された現状認識#
事業所への影響という観点で最も踏み込んだ記述は、A型の利用者像に関する部分です1。
- 一般就労における雇用機会の拡大と働き方の多様化・柔軟化によって、「通常の事業所に雇用されることが困難」と判断される状態像は「大きく変化してきていると考えられる」
- このため、A型の制度上の利用者像である、適切な支援があれば「雇用契約に基づく就労が可能」であるが「通常の事業所に雇用されることが困難」な状態像の者の範囲は、「障害者自立支援法制定当時に比べ狭まってきている」
あわせて、A型と一般就労の比較について次の指摘が記載されています1。報酬により支援員配置等が手当されるA型と、企業収益の中から手当する一般就労との間で、平均的な労働時間には差がある一方、「障害者に支払われる時間当たりの賃金額そのものには大きな差異がなく、当事者目線で見ると、一般就労へチャレンジするメリットが必ずしも大きくない」としています。
財源面では、事業主の共同拠出による納付金制度と特定求職者雇用開発助成金について、「これらの財源による支援の相当部分(納付金財源による報奨金の約8割、特定求職者雇用開発助成金の約3割)が障害者を雇用することが事業の前提であるA型事業所に集中している現状がある」と記載されました1。
これらはいずれも現状の認識として示された記述であり、A型の対象者要件や報酬を見直すと決まったものではありません。
③ 就労継続支援B型・利用者像の多様化について#
B型を含む就労系サービス全体については、次の認識が示されています1。
- 直近5年間の就労系サービスの利用者数は、B型を中心に全体として増加傾向にあり、その増加数は一般就労への移行者の増加数を「大幅に上回っている」
- A型・B型を利用する障害者の「概ね半数を精神障害者が占めており、その割合が年々増加している」
- 利用者の高齢化・重度化も進み、特にB型では「重度障害者の方が利用者の多くを占める事業所も出てきている」
- 一般就労の側でも高齢化が進み、気力・体力の低下により一般就労の継続が困難となりB型等での就労を希望するケース(いわゆる「加齢問題」)が指摘されている
④ この20年間の数値#
議論の前提として示された数値です(いずれも原文の表記のまま)1。
| 項目 | 障害者自立支援法制定当時 | 直近 |
|---|---|---|
| 一般の民間企業に雇用されている障害者数 | 約27万人(平成17年。身体障害者中心) | 約70.5万人(令和7年。3障害すべてにおいて雇用が拡大) |
| 就労系サービスから一般就労への移行者数 | 7,717人(平成24年) | 28,943人(令和6年) |
移行者数の内訳は、平成24年が就労移行支援4,570人・A型840人・B型2,307人、令和6年が就労移行支援16,827人・A型5,998人・B型6,118人です1。
⑤ 「継続して検討」とされた事項#
中間とりまとめは基本的考え方を示すところまでで、具体的な制度設計は先送りされています。次の事項が「『基本的考え方』のとりまとめ以後に、本検討会において継続して検討していく」と明記されました1。
- 福祉としての就労機会の提供の機能と、一般就労への移行支援の機能の在り方
- 障害者就業・生活支援センターとの間の機能・役割の整理や連携の在り方
- 精神障害者の復職支援を含めた雇用と福祉の相互往来
- 重度障害者等の一般就労における支援
また、一般就労の可能性の捉え方について、「標準化や客観性の向上、中立・公正性の担保等の観点も含めて機能強化や実施方法を検討していく必要がある」とされ、判断にあたっては「企業による採否結果といった、実際の状況も考慮する必要がある」と記載されています1。
⑥ 令和9年度報酬改定との関係#
令和9年度障害福祉報酬改定の検討では、この検討会の議論が参照されることが明記されています。第62回障害福祉報酬改定検討チーム(令和8年8月27日)で示された「主な論点(案)」は、就労支援について次のように記載しています4。
障害者の就労支援については、利用者や働き方の多様化等など障害者の就労を取り巻く環境の変化や、新たに始まった就労選択支援の状況等も踏まえつつ、「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」の議論の状況等も踏まえながら、障害者の就労を支援するための更なる方策を検討すべきではないか。
論点(案)自体に「上記の論点は現時点のものであり、今後議論を進めていく中で変更することがあり得る」と明記されており4、報酬改定の内容は何も決まっていません。検討チームの動向は令和9年度障害福祉サービス等報酬改定|検討スケジュールと関係団体ヒアリングの実施方針で整理しています。
⑦ 事業所として押さえておくこと#
繰り返しになりますが、この中間とりまとめによって報酬・基準・対象者要件が変わったわけではありません。現時点で確認できるのは次の点です。
- 雇用と福祉の役割分担の基本的考え方が文書として整理され、公表された
- A型の利用者像の範囲について「狭まってきている」という現状認識が明記された
- 具体的な機能の在り方は、同じ検討会で継続検討とされている
- 令和9年度報酬改定の論点(案)は、この検討会の議論の状況を踏まえるとしている
続報については本記事を随時更新するとともに、厚生労働省「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」のページで一次情報をご確認ください。
Footnotes#
-
厚生労働省「雇用と福祉の果たすべき機能・役割と連携の基本的考え方(中間とりまとめ)」(障害者就労に係る雇用福祉横断検討会、令和8年9月10日公表)p.1〜9 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15
-
厚生労働省「第6回障害者就労に係る雇用福祉横断検討会(資料)」(令和8年9月7日開催、議題「中間とりまとめ案について」) ↩
-
厚生労働省「社会保障審議会障害者部会(第159回)の資料について」(令和8年9月17日開催、資料2「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会の中間とりまとめについて」) ↩
-
厚生労働省・こども家庭庁「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(第62回障害福祉報酬改定検討チーム 資料2、令和8年8月27日)p.9 ↩ ↩2