共通

障害福祉事業所の就業規則作成ポイント|労基法の記載事項と処遇改善との連動

公開: 2026年7月6日更新: 2026年7月6日

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成・届出が義務付けられる文書です(労働基準法第89条)1。障害福祉事業所では、それに加えて処遇改善加算のキャリアパス要件(賃金体系・昇給の仕組みの明文化)の受け皿になるため、10人未満の事業所でも実質的に整備が必要になります2

本記事では、障害福祉サービス事業所の経営者・管理者向けに、就業規則の法律上のルールと、障害福祉ならではの規定ポイントを解説します。

法律上の基本ルール(結論)#

項目内容
作成・届出義務常時10人以上の労働者(パート・アルバイト含む)を使用する事業場。変更時も届出が必要1
手続き労働者の過半数代表の意見聴取意見書を添付して労働基準監督署へ届出(労基法第90条)1
制裁の制限減給の制裁は1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1以内(労基法第91条)1
法令との関係就業規則は法令・労働協約に反してはならない(労基法第92条)1

必ず記載する事項(絶対的必要記載事項)#

労基法第89条第1号〜第3号の事項は、就業規則に必ず記載しなければなりません1

  1. 労働時間関係 — 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換に関する事項
  2. 賃金関係 — 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項
  3. 退職関係 — 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

定めをする場合に記載する事項(相対的必要記載事項)#

退職手当、臨時の賃金(賞与)、食費・作業用品等の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、その他全労働者に適用される定め——これらは制度として設ける場合には記載が必要です1

障害福祉事業所ならではの規定ポイント#

1. 賃金規程はキャリアパス要件と連動させる#

処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅰは「職位・職責・職務内容等に応じた賃金体系」を書面で整備し全職員に周知すること、要件Ⅲは「経験・資格または評価に基づく昇給の仕組み」の明文化を求めます2。就業規則(賃金規程)はこの明文化の受け皿そのものです。等級表・賃金表・昇給基準を賃金規程に規定し、処遇改善手当を支給する場合は手当の名称・支給要件・支給方法を明記します。詳しくは処遇改善加算に対応した賃金制度の設計の記事をご覧ください。

2. シフト勤務・変形労働時間制#

日中活動系の土曜開所やグループホームの夜勤・宿直など、週40時間・1日8時間の原則1に収まらない勤務形態がある場合は、1か月単位の変形労働時間制等の採用を就業規則(または労使協定)で定めます1。シフト表(勤務形態一覧表)と就業規則の勤務時間規定が食い違っていると、運営指導・労務調査の双方で問題になります。

3. 服務規律 — 虐待防止・身体拘束・秘密保持#

基準省令は、事業者に虐待防止のための体制整備・研修実施を義務付け、緊急やむを得ない場合を除く身体拘束等を禁止しています3。服務規律に虐待の禁止、身体拘束等の禁止と手続き、利用者情報の秘密保持(退職後を含む)、SNS等への投稿ルールを規定し、違反時の懲戒事由と接続しておくことで、体制と規程が一貫します。制裁を定める場合はその種類・程度の記載が必要です1

4. ハラスメント防止措置#

基準省令は、職場におけるセクシュアルハラスメント・パワーハラスメントにより従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を事業者に義務付けています3。就業規則にハラスメントの禁止・相談窓口・懲戒を規定するのが措置の基本形です。

5. 研修受講・BCP発動時の勤務#

従業者の資質向上のための研修機会の確保は基準省令上の義務です3。研修受講を業務として位置付ける規定や、感染症・災害発生時(BCP発動時)の出勤・業務変更に関する規定を設けておくと、BCPの実効性を労務面から支えられます。

作成・変更の手続き#

  1. 作成・改定案の作成 — 厚生労働省の「モデル就業規則」をベースに、自事業所の勤務形態・手当体系に合わせて修正するのが効率的です4
  2. 過半数代表からの意見聴取 — 過半数労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者から意見を聴き、意見書を作成します1
  3. 労働基準監督署への届出 — 意見書を添付して届け出ます。変更時も同様です1
  4. 周知 — 作成・届出だけでは効力は生じません。事業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面交付、イントラネット掲載等で全労働者に周知します
  5. 不利益変更への注意 — 賃金・労働時間等を労働者に不利益に変更する場合は、労働契約法上の合理性・周知が問われます。処遇改善の賃金体系再編と併せて変更する場合は、社会保険労務士等の専門家の確認を推奨します

よくある質問#

Q. 職員が10人未満なら就業規則は不要ですか?#

労基法上の作成・届出義務は常時10人以上の事業場が対象です1。ただし、処遇改善加算を算定するなら賃金体系・昇給の仕組みの書面整備と全職員への周知が要件となるため2、規模にかかわらず就業規則(賃金規程)の整備が事実上必要です。

Q. 正職員用とパート用で就業規則を分けられますか?#

分けられます。雇用区分ごとに別規則とする場合は、それぞれの規則がその区分の労働者に適用されることを明記します。なお、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合は記載が必要です1

Q. 過半数代表の「同意」が得られないと届出できませんか?#

労基法第90条が求めるのは意見聴取と意見書の添付であり、同意までは要件とされていません1。ただし反対意見が強い変更(特に不利益変更)は、労働契約法上の合理性の問題が別途生じるため、丁寧な説明と調整が実務上重要です。

Q. 減給の制裁はどこまで定められますか?#

1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えない範囲です(労基法第91条)1

Q. 就業規則と運営指導は関係ありますか?#

あります。基準省令は事業所ごとに従業者の勤務体制を定めることを義務付けており3、勤務形態一覧表・雇用契約書・就業規則の整合は運営指導の確認対象になり得ます。運営指導の流れと準備の記事も参考にしてください。

出典#

Footnotes#

  1. 「労働基準法」(昭和22年法律第49号)第32条・第89条〜第93条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

  2. 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和7年改正版) https://www.mhlw.go.jp/content/001445512.pdf 2 3

  3. 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第33条(勤務体制の確保等)・第35条の2(身体拘束等の禁止)ほか各サービス準用規定 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 2 3 4

  4. 厚生労働省「モデル就業規則について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

この内容、無料セミナーで専門家がくわしく解説します。

セミナーに申し込む(無料)