就労定着支援には、名前が他サービスと同じでも中身が違う加算が2つあります。初期加算は日中活動系の「30単位・日×30日」ではなく、利用開始月に1回900単位で、しかも一体的に運営する生活介護等以外を利用して就職した人に限られます12。特別地域加算は訪問系の「15%加算」ではなく、厚生労働大臣が定める地域(離島・過疎地域など)で対面支援を行った月に240単位です13。本記事では、この2つの加算の要件を告示と留意事項通知に沿って整理します。
就労定着支援の基本報酬(就労定着率による7区分)は就労定着支援の基本報酬、加算の全体像は就労定着支援の加算一覧を参照してください。
2つの加算の概要#
| 加算 | 報酬告示の位置 | 単位数 | 算定単位 | サービスコード |
|---|---|---|---|---|
| 初期加算 | 第14の2の3 | 900単位 | 利用を開始した月に1回限り | 47-5050 |
| 特別地域加算 | 第14の2の1の注(特別地域加算) | 240単位 | 1月につき | 47-6015 |
いずれも届出は要件になっていません1。
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初期加算(900単位・利用開始月に1回)#
告示の要件#
報酬告示は次のとおり定めています1。
生活介護等と一体的に運営される指定就労定着支援事業所において、一体的に運営される生活介護等以外を利用して通常の事業所に雇用された障害者に対して、新規に就労定着支援計画を作成し、指定就労定着支援を行った場合に、指定就労定着支援の利用を開始した月について、1回に限り、所定単位数を加算する。
「生活介護等」は、就労定着支援の基本報酬の注1で、生活介護・自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援A型・B型を指す用語として定義されています1。要件を分解すると次の3点です。
- 就労定着支援事業所が生活介護等と一体的に運営されていること
- 利用者が、その一体的に運営される生活介護等「以外」を利用して通常の事業所に雇用された人であること
- 新規に就労定着支援計画を作成して支援し、利用を開始した月に算定すること(1回限り)
誰が対象になるか#
就労定着支援は、自法人の就労移行支援やA型・B型を経て就職した人を引き続き支援する場面が中心ですが、他の事業所(他法人)の就労移行支援等を経て就職した人が自事業所の就労定着支援を利用することもあります。この場合、支援開始時のアセスメントに時間や労力を要するため、留意事項通知は「1回に限り加算する」としています2。
| 利用者の経路 | 初期加算 |
|---|---|
| 自事業所と一体的に運営する就労移行支援等を経て就職した人 | 算定不可(一体的に運営される生活介護等の利用者)1 |
| 他法人の就労移行支援等を経て就職し、自事業所の就労定着支援を新規利用する人 | 算定可(利用開始月に1回)12 |
| 同一法人内の他の就労定着支援事業所から移ってきた人 | 算定不可。アセスメント等の情報共有や連携が可能と考えられるため2 |
日中活動系の初期加算との違い#
生活介護・就労移行支援・A型・B型などの初期加算は、利用開始日から30日以内の期間について1日30単位を算定するものです。詳しくは初期加算の算定要件を参照してください。就労定着支援の初期加算は、単位数(900単位)も算定単位(月1回)も対象者(他事業所経由で就職した人)も異なります1。
特別地域加算(240単位・月)#
告示の要件#
報酬告示は次のとおり定めています1。
別に厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者の居宅若しくは別に厚生労働大臣が定める地域に所在する利用者が雇用された通常の事業所において、当該利用者との対面により指定就労定着支援を行った場合に、特別地域加算として、1月につき240単位を加算する。
要件は次の2点です。
- 場所:次のいずれかで支援を行うこと
- 厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者の居宅
- 厚生労働大臣が定める地域に所在する、利用者が雇用された通常の事業所(就職先)
- 方法:利用者との対面により支援を行うこと
留意事項通知は、この「厚生労働大臣が定める地域」を平成21年厚生労働省告示第176号で定める地域としています3。
対象地域(厚生労働大臣が定める地域)#
告示第176号は、次の10種類の地域を定めています(北九州市の公表資料による整理)4。
| 地域の種類 | 根拠法 | |
|---|---|---|
| 1 | 離島振興対策実施地域 | 離島振興法第2条第1項 |
| 2 | 奄美群島 | 奄美群島振興開発特別措置法第1条 |
| 3 | 特別豪雪地帯 | 豪雪地帯対策特別措置法第2条第2項 |
| 4 | 辺地 | 辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律第2条第1項 |
| 5 | 振興山村 | 山村振興法第7条第1項 |
| 6 | 小笠原諸島 | 小笠原諸島振興開発特別措置法第4条第1項 |
| 7 | 半島振興対策実施地域 | 半島振興法第2条第1項 |
| 8 | 特定農山村地域 | 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第2条第1項 |
| 9 | 過疎地域 | 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法第2条第1項 |
| 10 | 沖縄の離島 | 沖縄振興特別措置法第3条第3号 |
市町村の全域ではなく旧市町村単位や島単位で指定されている地域が多いため、利用者の居宅や就職先の住所が該当するかは、都道府県・指定都市が公表している対象地域一覧で確認してください。対象地域が一つも無い都道府県もあります(大阪府は「府内に該当地域なし」と公表しています)5。
通常の事業の実施地域を越えた場合の交通費#
特別地域加算を算定する利用者に対して、運営規程で定める通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供した場合、交通費の支払いを受けることはできません3。特別地域加算が移動の負担を評価しているためです。通常の実施地域外の利用者に交通費を請求している事業所は、特別地域加算を算定する利用者を除外する必要があります。
計算例#
その他地域(1単位10.00円)の事業所で、就労定着率8割以上9割未満(基本報酬2,768単位・月)の利用者に対し、他法人の就労移行支援を経て就職した人を新規に受け入れ、対象地域の就職先で対面支援を行った場合の初月の報酬は次のとおりです16。
| 項目 | 単位数 |
|---|---|
| 基本報酬(就労定着率8割以上9割未満) | 2,768単位 |
| 初期加算(利用開始月に1回) | 900単位 |
| 特別地域加算(対象地域で対面支援) | 240単位 |
| 合計 | 3,908単位(39,080円) |
翌月以降は初期加算が無くなり、対象地域で対面支援を行った月は基本報酬+240単位です。1級地(就労定着支援の単価11.20円)なら、特別地域加算は240単位×11.20円=2,688円/月です6。
よくある質問#
Q. 自法人の就労移行支援を経て就職した人には初期加算を算定できませんか#
できません。告示は「一体的に運営される生活介護等以外を利用して通常の事業所に雇用された障害者」を対象としています1。自事業所と一体的に運営する就労移行支援等の利用者は対象外です。
Q. 同一法人の別の就労定着支援事業所から利用者が移ってきました。初期加算は算定できますか#
できません。留意事項通知は、同一法人内の他の就労定着支援事業所を利用する際は、アセスメント等の情報共有や連携が可能と考えられることから算定できないとしています2。
Q. 初期加算は毎月算定できますか#
できません。利用を開始した月について1回に限り算定します1。
Q. 対象地域の利用者に電話やオンラインで支援した月も特別地域加算を算定できますか#
できません。告示は「当該利用者との対面により」支援を行った場合に限っています1。
Q. 利用者の自宅は対象地域外ですが、就職先が対象地域にあります。算定できますか#
できます。告示は「定める地域に居住している利用者の居宅」と「定める地域に所在する利用者が雇用された通常の事業所」のいずれかで対面支援を行った場合としています1。就職先が対象地域に所在し、そこで対面支援を行えば要件を満たします。
Q. 特別地域加算の対象地域はどこで確認できますか#
厚生労働大臣が定める地域(平成21年厚生労働省告示第176号)に基づき、都道府県・指定都市が対象地域の一覧を公表しています345。旧市町村単位の指定が多いため、住所で個別に確認してください。
Q. 特別地域加算を算定する利用者から、実施地域外の交通費をもらえますか#
もらえません。留意事項通知は、特別地域加算を算定する利用者に対して通常の事業の実施地域を越えてサービス提供した場合、交通費の支払いを受けることはできないとしています3。
制度上の根拠#
- 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)第14の2の1の注1(生活介護等の定義)・特別地域加算の注(240単位・対面)、第14の2の3 初期加算(900単位・1回限り)1
- 留意事項通知 就労定着支援サービス費 ⑥ 初期加算の取扱い(p.314)2、④ 特別地域加算の取扱い(p.311:告示第176号・交通費)3
- 厚生労働大臣が定める地域(平成21年厚生労働省告示第176号)の地域区分4、都道府県の対象地域の公表5
- サービスコード表(令和8年6月施行版)、単価告示(平成18年厚生労働省告示第539号)6
Footnotes#
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第14の2 就労定着支援サービス費 1の注(生活介護等の定義・特別地域加算)、3 初期加算 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15
-
厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」就労定着支援サービス費 ⑥ 初期加算の取扱い(p.314) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
同 就労定着支援サービス費 ④ 特別地域加算の取扱い(p.311) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
北九州市「障害福祉サービスの特別地域加算の対象地域について」(厚生労働大臣が定める地域〔平成21年厚生労働省告示第176号〕の地域区分と対象サービス) (https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/29800174.html) ↩ ↩2 ↩3
-
大阪府「特別地域加算について」(府内に該当地域が無い旨の公表) (https://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshido/shien/tokubetuchiiki.html) ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード表(令和8年6月施行版)」分冊2 p.363(47-5050 就労定着初期加算・47-6015 就労定着特地加算)(https://www.mhlw.go.jp/content/001696434.pdf)、「厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3
