第64回検討チームで就労系サービスの「論点等」が示された#
この記事の要点(2026年9月29日時点)
厚生労働省・こども家庭庁の障害福祉報酬改定検討チームは、令和8年9月28日の第64回会合で「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(就労系サービス)」を議題とし、事務局資料「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」を示しました12。第63回(9月24日)の訪問系サービスに続く、サービス別の検討です3。
資料は論点ごとに「現状・課題」「論点」「検討の方向性」の3段で構成されています1。本記事は、資料に記載された事実を論点ごとに整理するものです。改定結果の予測は行いません。
⚠️ 「検討の方向性」は決定事項ではありません
「検討の方向性」は、事務局が「〜してはどうか」という形で検討チームに示した検討案です。検討チームでの議論を経て変わりうるものであり、現時点で報酬・基準がこのとおりになると決まったものではありません。各論点の一覧には「本日の議論等も踏まえ、さらに論点を追加する予定」と記載されています1。
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① 示された論点の全体像#
資料が示した論点は次のとおりです1。
| 区分 | 論点 | 対象サービス(資料の表記) |
|---|---|---|
| 横断的事項 | 論点1 一般就労への移行に関する評価 | 就労継続支援 |
| 横断的事項 | 論点2 一般就労への移行・定着に向けた支援 | 就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援 |
| 横断的事項 | 論点3 在宅支援 | 就労移行支援、就労継続支援 |
| 横断的事項 | 論点4 施設外就労 | 就労移行支援、就労継続支援 |
| 横断的事項 | 論点5 支給決定の厳格化 | 就労移行支援、就労継続支援 |
| 横断的事項 | 論点6 ガイドラインの厳格化 | 就労系サービス |
| 横断的事項 | 論点7 会計区分 | 就労継続支援B型 |
| 横断的事項 | 論点8 情報公表 | 就労選択支援、就労継続支援 |
| 横断的事項 | 論点9 就労選択支援の対象者 | 就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援 |
| A型 | スコア方式による評価項目の見直し | 就労継続支援A型 |
| B型 | スコア方式の導入 | 就労継続支援B型 |
| 就労定着支援 | 基本報酬や加算における就労定着者の考え方 | 就労定着支援 |
| 就労選択支援 | 地域連携/誘導行為等への対策/離島等における支援 | 就労選択支援 |
② 一般就労への移行と定着(論点1・2、就労定着支援)#
就労移行支援体制加算の見直し(論点1)#
資料は現状・課題として、同一の利用者についてA型事業所と一般企業の間で「複数回の離転職を繰り返し、その都度加算を取得する」という、本来の制度趣旨と異なる算定が報道され、指定取消となった事例も複数報告されていると記載しています4。令和8年度報酬改定で、一事業所で算定可能となる年間の就職者数に上限(定員数まで)を設定する等の見直しを行ったことにも触れています4。
そのうえで検討の方向性として、加算で評価する仕組みは継続しつつ、次の見直しを示しました5。
- 「就労定着者数」に応じた評価から、「定員や施設外就労の利用者に対する就労定着者数の割合」に応じた評価へ
- 一事業所から同一の就職先に就職した場合、就労定着者数として計上する人数に上限(例えば、5人まで)
- 当該事業所の運営法人への就職(関係法人を含む)は、0.5人分として計上
- 一般就労に向けた支援と復職に向けた支援は性質が異なることを踏まえ、復職支援は就労移行支援体制加算とは別の形で評価することを検討
移行後の定着支援(論点2)#
現状・課題として、一般就労した後の6か月間は送り出した事業所が定着支援を行うことになっているものの、事業所によって支援にばらつきがあり、支援のつながりが切れてしまう場合があると記載されています6。
検討の方向性は次のとおりです7。
- 一般就労後、一定期間(6か月を想定)は、送り出した事業所が支援回数・内容に応じて報酬を算定できる仕組み
- 本人が短期間で離職した場合は、6か月の上限なく同じ就労移行支援事業所が支援を続けられるようにする。ただし就労移行支援の標準利用期間(2年間。必要に応じて最大1年間の更新可)内とし、一般就職後の支援は6か月に限る
- 就労移行支援で、利用定員に対する就労定着者の割合区分「5割以上」より上の基本報酬区分を設ける
- 就労定着支援で、支援の濃度に応じた段階的な報酬設定
就労定着者の数え方(就労定着支援)#
就労定着支援では、支援途中で離職しても1か月以内に再就職すれば就労定着者数として計上できる現行の扱いについて、1か月は短いという指摘があると記載されています8。検討の方向性として、この期間を「1か月以内」から「3か月以内」に緩和すること、就労定着実績体制加算でも「事業所の倒産」等の場合を除外できる取り扱いとすることが示されました8。
③ 在宅支援と施設外就労(論点3・4)#
在宅支援(論点3)#
資料によると、在宅支援の対象者はコロナ禍以前は「通所利用が困難で、在宅による支援がやむを得ないと市町村が判断した場合」に限られていましたが、コロナ禍以降は支援効果が認められると市町村が判断した場合へと緩和され、その判断に特段の基準等は設けていないとされています9。あわせて、令和8年度予算執行調査で「在宅利用者がいる事業所の収支差率が高い」ことが指摘されたと記載されています9。
- 対象者要件を「通所を上回る支援効果が認められる者」とし、①通所が困難な者(重度者・地理的要因(離島・豪雪地帯等))、②通所支援を行うために、まずは在宅支援を必要とする者(ひきこもり状態である者等)、③在宅での一般就労に向けて、在宅での支援を必要とする者、とする
- 在宅支援の基本報酬を一定程度引き下げ、定員に対する在宅支援利用者の割合に一定の上限を設ける。ただし積極的な在宅支援を行っている場合は、従前どおりの単価とし、割合の上限を設けない
- 事業所は、あらかじめ指定権者に「在宅支援の内容に関するチェックリスト」を提出する
- 「自宅以外」での在宅支援は、離島等の地理的な要因で通所可能な範囲に事業所がなく、かつ自宅には設置できない設備がある場合のような、極めて限定的な場合に限る(カフェ等は不可)
施設外就労(論点4)#
現状・課題として、安価な労働力として事業所に作業を発注したり、介護給付費を施設外就労先を経由して利用者の賃金や工賃に充てるといった悪用が懸念されること、施設外就労先の距離に特段の定めがないことが挙げられています12。検討の方向性は次のとおりです13。
- 請負期間や請負金額が小規模である場合を除き、すべての施設外就労先について運営規程等に企業名・生産活動内容・実施予定期間等を明記
- 施設外就労先の範囲を、指定権者が定める範囲内(「県内」「事業所の所在地から2時間以内」等)に限る
- 原則として、月2日は事業所内において訓練目標に対する達成度の評価等を行う
- 施設外就労先ごとの「生産活動シート」を作成し、指定権者に提出するとともに、事業所ホームページで公表
施設外就労の現行ルールは施設外就労・施設外支援のルールで解説しています。
④ 支給決定・指定・会計・情報公表(論点5〜8)#
| 論点 | 検討の方向性の主な記載 |
|---|---|
| 論点5 支給決定の厳格化 | 特に就労継続支援B型の利用申請の際、市町村が支給決定の適否をチェックリストにより判断する。「就労経験がある者」を「企業等との雇用契約に基づく就労経験がある者」と明示する14 |
| 論点6 ガイドラインの厳格化 | 令和7年11月に発出したガイドラインのうち、指定申請書・事業計画書、収支予算書、生産活動の適切性、在宅支援の適切性に関する項目を施行規則や指定基準等に位置づける。他事業所の指定申請書類及び事業計画書等の流用は原則認めない15 |
| 論点7 会計区分(B型) | 「生産活動の収支が利用者に支払う工賃の総額以上となること」を指定基準に位置付ける。運営法人の資金や寄付等から利用者に払った額は、平均工賃月額の算定から除く16 |
| 論点8 情報公表 | A型・B型は生産活動シートとスコア表(A型は義務付け済)、就労選択支援はアセスメントを終了した利用者の総数・各事業につながった利用者数・同一法人への移行率の公表を義務づける。A型・B型の第三者評価を努力義務とする17 |
論点7について資料は、A型には指定基準で生産活動収支が賃金総額を上回るよう求める規定がある一方、B型には当該規定が設けられていないと記載しています18。関連企業との取引については「一律に不適切とすべきではないことに留意する」とも記載されています16。
⑤ A型・B型のスコア方式#
A型:評価項目の見直し#
資料は、令和6年度報酬改定でスコア方式の得点配分を見直した結果、経営状況が赤字となっている事業所割合が「令和5年度は 37.4 %であったものが、令和6年度は 19.3 %と減少」したと記載しています19。一方で、「労働時間」「生産活動」といった生産性に関する項目の配分が大きく、福祉的な支援が十分に評価されていないのではないかという指摘も記載されています19。
検討の方向性は、令和6年度に行った生産活動収支の考え方は引き続き維持しつつ「支援の質」に関する得点配分を高めること、施設外就労の取組をスコア項目の中で評価することです19。スコア方式の現行の評価項目はA型スコア「利用者の知識及び能力の向上」の解説を参照してください。
B型:スコア方式の導入#
現状・課題として、平均工賃月額のみによる評価では障害の程度が重い利用者に対する支援が適切に評価されていないという指摘があることが記載されています20。また、事業所の年間開所日数が利用者の年間利用日数上限(269日)を超える場合、計算上の平均工賃月額が実際に支払われた工賃額より過大となってしまう状況があるとされています20。
検討の方向性は次のとおりです21。
- 平均工賃月額のみによる評価ではなく、多様な観点による評価を行う
- その際、障害の程度や支援時間、支援内容、事業運営の透明性や地域への貢献度についても勘案する
- 指定基準のなかで特に遵守するべき項目について、未達成の場合に厳しく評価する
- 平均工賃月額の算定で、「年間開所日数」は269日を上限とする
⑥ 就労選択支援(論点9ほか)#
対象者の拡大(論点9)#
検討の方向性は、「予定どおり、令和9年4月以降」、新たに就労継続支援A型を利用する意向がある者と、就労移行支援の標準利用期間を超えて利用する意向のある者についても、就労選択支援により課題が把握されている者を対象とする、というものです22。具体的な取扱いとして次の点が示されました22。
- 令和9年4月から就労継続支援A型を利用する予定がある者(主に特別支援学校の現3年生)は、令和8年度内の就労選択支援の利用を原則とせず、暫定支給決定を柔軟に運用
- 就労移行支援を標準利用期間を超えて利用する場合、サービス利用開始後1年6か月を経過した時期を目安として利用更新の必要性を検討し、必要性が認められた場合には就労選択支援によるアセスメントを実施
また、現に就労継続支援を利用していて支給決定の更新の意向がある者について、将来的に、就労選択支援事業者によるアセスメントが行われている者を更新対象とすることも示されています23。現行の対象者とスケジュールは就労選択支援は誰がいつから必須かで解説しています。
地域連携・誘導行為等への対策・離島等(就労選択支援の論点1〜3)#
| 論点 | 検討の方向性の主な記載 |
|---|---|
| 地域連携 | 原則として圏域単位の協議会等に運営方針や活動内容等を説明して評価を受け、その内容を事業指定の申請時に指定権者に提出する仕組み。原則として年1回以上、協議会等に運営状況を報告することを義務とする(令和10年度から実施)24 |
| 誘導行為等への対策 | 本人の選択肢を不当に狭める行為を禁止する。特定事業所集中減算について、適用する水準を引き下げる(例:現行8割→3割)、適用単位を関連法人まで広げる、減算割合を見直す25 |
| 離島等における支援 | 就労選択支援についても特別地域加算の対象とする26 |
⑦ 事業所として押さえておくこと#
繰り返しになりますが、第64回で示されたのは事務局の検討案であり、報酬・基準・対象者要件は現時点で何も変わっていません。資料から確認できる事実は次のとおりです。
- 就労系サービスについて、横断的事項9論点とサービス別の論点が示され、さらに論点を追加する予定とされている1
- 在宅支援、施設外就労、会計区分、情報公表など、運営の適正化に関わる論点が多く並んでいる1
- 就労選択支援のA型・就労移行支援への対象拡大は「予定どおり、令和9年4月以降」とされている22
令和9年度改定の論点(案)(第62回)は、就労支援について「障害者の就労を支援するための更なる方策を検討すべきではないか」としていました27。第64回はその具体化として、サービスごとの論点が初めて示された回です。検討全体の流れは令和9年度障害福祉サービス等報酬改定|検討スケジュールと関係団体ヒアリングの実施方針、雇用と福祉の役割分担の議論は障害者就労の雇用と福祉の役割分担|中間とりまとめで整理しています。
続報については本記事を随時更新するとともに、厚生労働省「障害福祉報酬改定検討チーム」のページで一次情報をご確認ください。
よくある質問#
Q. 第64回の内容で、令和9年度から報酬や基準が変わることは決まったのですか?#
決まっていません。第64回で示されたのは、事務局が「〜してはどうか」の形で示した「検討の方向性」です。資料には「本日の議論等も踏まえ、さらに論点を追加する予定」と記載されており、今後の検討チームでの議論を経て変わりうるものです1。
Q. 就労選択支援をA型の新規利用者にも必須とする話はどうなりましたか?#
第64回の資料では、「予定どおり、令和9年4月以降」、新たにA型を利用する意向がある者についても就労選択支援により課題が把握されている者を対象としてはどうか、と示されました。令和9年4月からA型を利用する予定がある者(主に特別支援学校の現3年生)は、令和8年度内の就労選択支援の利用を原則とせず、暫定支給決定を柔軟に運用することも検討案として示されています22。
Q. B型の平均工賃月額の算定はどう変わるのですか?#
現時点では変わっていません。第64回の資料では、事業所の年間開所日数が利用者の年間利用日数上限(269日)を超える場合に計算上の平均工賃月額が過大となる状況があるとして、「年間開所日数」を269日を上限とする案が示されました2021。あわせて、平均工賃月額のみによる評価ではなく多様な観点による評価(スコア方式)を行う案も示されています21。
Footnotes#
-
厚生労働省・こども家庭庁「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」(第64回障害福祉報酬改定検討チーム 資料、令和8年9月28日)p.3, 58, 77, 99, 109(各論点一覧) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
-
厚生労働省「第64回『障害福祉報酬改定検討チーム』資料」(令和8年9月28日開催、議事次第) ↩ ↩2
-
厚生労働省「第63回『障害福祉報酬改定検討チーム』資料」(令和8年9月24日開催、資料「訪問系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」) ↩
-
前掲・注1の資料 p.8(横断的事項 論点1 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.11(横断的事項 論点2 現状・課題) ↩
-
前掲・注1の資料 p.12(横断的事項 論点2 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.18(横断的事項 論点3 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.20(横断的事項 論点3 検討の方向性<自宅以外での利用>) ↩
-
前掲・注1の資料 p.30(横断的事項 論点4 現状・課題) ↩
-
前掲・注1の資料 p.31(横断的事項 論点4 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.35(横断的事項 論点5 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.37〜39(横断的事項 論点6) ↩
-
前掲・注1の資料 p.45(横断的事項 論点8 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.41(横断的事項 論点7 現状・課題) ↩
-
前掲・注1の資料 p.52(横断的事項 論点9 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.116(就労選択支援 論点1 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.118〜119(就労選択支援 論点2 検討の方向性) ↩
-
前掲・注1の資料 p.121(就労選択支援 論点3 検討の方向性) ↩
-
厚生労働省・こども家庭庁「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(第62回障害福祉報酬改定検討チーム 資料2、令和8年8月27日)p.9 ↩