就労移行支援・就労継続支援A型/B型では、事業所の外で行う支援として施設外支援と施設外就労の2つの仕組みがあります。名前は似ていますが、要件も報酬上の扱いも別物です。令和6年度報酬改定では、施設外就労の実績報告書の毎月提出が廃止され(記録の作成・保存義務に変更)、施設外支援の個別支援計画の見直しサイクルが1週間ごとから1か月ごとに簡素化されました1。本記事では、就労系留意事項通知(令和7年3月31日改正版)に基づいて両者の要件を整理します。
施設外支援と施設外就労の違い#
| 項目 | 施設外支援 | 施設外就労 |
|---|---|---|
| 内容 | 事業所等とは別の場所で行われる支援(企業実習・職場実習、委託訓練、トライアル雇用など) | 企業から請け負った作業を、当該企業内で利用者と職員が行う支援2 |
| 日数制限 | 年間180日間を限度に算定2 | 日数制限の定めなし(要件を満たす場合に算定) |
| 職員の配置 | 事業所の支援として実施(日報・緊急時対応が要件) | 施設外就労を行う日の利用者数に対し報酬算定上必要な人数(常勤換算)を現地に配置2 |
| 契約 | 実習受入企業等との関係(雇用関係・請負契約は前提としない) | 施設外就労先の企業と請負作業に関する契約を締結2 |
施設外支援|算定要件と180日ルール#
施設外支援は、次のア〜エの要件をいずれも満たす場合に限り、1年間(毎年4月1日〜翌年3月31日)に180日間を限度として算定します。この「180日間」は、利用者が実際に利用した日数の合計です2。
- ア:運営規程への位置付け:施設外支援の内容が事業所の運営規程に位置付けられていること
- イ:個別支援計画への位置付けと1か月ごとの見直し:事前に個別支援計画に位置付け、1か月ごとに内容を見直しているとともに、当該支援により就労能力や工賃(賃金)の向上・一般就労への移行が認められること
- ウ:日報の作成:利用者又は実習受入事業者等から、支援提供期間中の利用者の状況を聞き取り、日報を作成していること
- エ:緊急時の対応ができること
イの見直しサイクルは、令和6年度改定で1週間ごとから1か月ごとに簡素化されました1。
180日を超えて提供できる場合#
次の場合には、180日の上限を超えた提供が可能です2。
- 対象者が職場適応訓練を受講する場合で、要件を満たし訓練が就労支援に資すると認められるとき(訓練終了日まで延長可能)
- **トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)**で、個別支援計画の見直しにおいて延長の必要性が認められた場合
トライアル雇用を施設外支援として扱う場合#
利用中の事業所以外の事業所で障害者トライアル雇用等を実施する場合、①上記ア・ウ・エを満たし、②施設外のサービス提供を含めた個別支援計画を3か月ごとに作成(施設外サービス提供時は1か月ごと)・見直しを行うことで、施設外支援の対象となります。ただし、就労継続支援A型(雇用契約有)の利用者は、原則として障害者トライアル雇用等の対象になりません2。
実務上の注意点#
- 同日に施設外支援と通常の施設利用を行った場合は、施設外支援の実施日として扱います2
- 一般就労へ移行した者が職場適応援助者(ジョブコーチ)による職場適応援助を受ける場合は、施設外支援の基準を満たしません(トライアル雇用中の職場適応援助も同様)2
施設外就労|算定要件(ア〜オ)#
施設外就労(企業内就労)は、次のア〜オの要件をいずれも満たす場合に限り算定します2。
- ア:総数が利用定員を超えないこと。施設外就労を基本とする形態で事業を行う場合でも、本体施設には管理者及びサービス管理責任者の配置が必要
- イ:職員配置:施設外就労を行う日の利用者数に対して報酬算定上必要とされる人数(常勤換算)の職員を配置。事業所側は、施設外就労を行う者を除いた前年度平均利用者数に対して必要人数を配置。ただしサービス管理責任者は施設外就労を行う者を含めた前年度平均利用者数に対して配置
- ウ:運営規程への位置付け
- エ:個別支援計画の事前作成:施設外就労を含めた個別支援計画が事前に作成され、就労能力や工賃(賃金)の向上・一般就労への移行に資すると認められること
- オ:緊急時の対応ができること
また、施設外就労により就労している者と同数の者を主たる事業所の利用者として新たに受け入れることが可能です。報酬の適用単価は主たる事業所の利用定員に基づく報酬単価を適用します2。
請負契約の必須条件#
施設外就労先の企業とは請負作業に関する契約を締結し、次の点を明確にする必要があります2。
- 作業の完成についての財政上・法律上のすべての責任は事業所を運営する法人が負うこと
- 企業から法人に支払われる報酬は、完成された作業の内容に応じて算定されること
- 機械・設備等を借り入れる場合は賃貸借契約又は使用貸借契約を締結し、材料等の供給を受ける場合は代金の支払い等について明確な定めを置くこと
さらに、請け負った作業の利用者への指導等は施設外就労先の企業ではなく事業所が行い、事業所は作業を企業から独立して行い、利用者と企業の従業員が作業を共同で処理していないことが求められます2。
令和6年度改定の変更点|実績報告書の毎月提出が廃止#
令和6年度改定で、報酬請求にあたっての施設外就労に関する実績の毎月の報告は不要になりました。ただし、事業所には施設外就労の実績記録書類の作成・保存が義務付けられ、地方公共団体が利用者の訓練状況等の実態把握を必要と判断した場合には、当該書類を確認することとされています21。提出義務がなくなっただけで、記録がなければ運営指導で説明できない点は変わりません。
施設外就労と認められない事例(令和7年3月31日Q&A)#
令和6年度報酬改定Q&A Vol.8(令和7年3月31日)では、施設外就労に該当しない事例が明示されました3。
- 自法人所有の建物を企業に賃貸して作業する形態:法人Xが所有する建物を企業Zに賃貸し、そこに事業所Yの支援員と利用者が出向いて作業する場合、形式上は請負作業でも、その場で企業Zの経営が行われている実態がなければ施設外就労の要件を満たさず、基本報酬を算定できません
- 自法人が設置した「施設外就労先」施設での作業:法人Xが「施設外就労先」と称する施設を自ら設置し利用者に作業を提供する形態は、指定を受けていない場所での生産活動にあたる可能性があり、基本報酬を算定できません
指定権者は、指定申請や運営指導等で施設外就労の要件該当性を確認するとされています3。
実務チェックリスト#
- 施設外支援・施設外就労とも運営規程に明記されているか(未記載なら変更届から)
- 施設外支援の個別支援計画を1か月ごとに見直し、日報を作成しているか
- 施設外支援の年間実利用日数(180日)を利用者ごとに管理しているか(年度単位・4月リセット)
- 施設外就労先との請負契約書に、完成責任・報酬の算定方法・設備の賃貸借を明記しているか
- 施設外就労の当日、現地に常勤換算で必要数の職員を配置しているか(サビ管の配置計算は施設外就労者を含める)
- 実績記録書類を作成・保存しているか(毎月の提出は不要でも、自治体からの確認に備える)
よくある質問#
Q. 施設外支援の「180日」はどう数えますか?#
毎年4月1日に始まり翌年3月31日で終わる1年間につき180日間が限度で、利用者が実際に利用した日数の合計で数えます2。職場適応訓練の受講や、障害者短時間トライアルコースで延長の必要性が認められた場合は、180日を超えた提供が可能です2。
Q. 施設外就労の実績報告書は不要になったのですか?#
報酬請求にあたっての毎月の提出は不要になりました(令和6年度改定)。ただし実績記録書類の作成・保存は義務であり、地方公共団体が必要と判断した場合には書類の確認が行われます21。
Q. 自社(法人)の建物で企業の請負作業をすれば施設外就労になりますか?#
なりません。施設外就労は「企業から請け負った作業を当該企業内で行う支援」と定義されており、自法人所有の建物を企業に賃貸してそこで作業する形態は、企業の経営実態がその場所になければ要件を満たさず、基本報酬を算定できません3。
Q. 施設外就労中の職員配置はどう計算しますか?#
施設外就労を行う日の利用者数に対して、報酬算定上必要とされる人数(常勤換算)を現地に配置します。事業所側は施設外就労を行う者を除いた前年度平均利用者数で必要数を計算しますが、サービス管理責任者だけは施設外就労を行う者を含めた平均利用者数に対して配置します2。
Q. 施設外就労の分だけ利用者を増やせるのですか?#
はい。施設外就労により就労している者と同数の者を、主たる事業所の利用者として新たに受け入れることが可能です。その場合も報酬単価は主たる事業所の利用定員に基づくものを適用します2。
制度上の根拠#
- 就労系留意事項通知「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」第二(施設外支援・施設外就労)2
- 令和6年度報酬改定の概要(実績報告書の提出義務廃止・施設外支援の事務処理簡素化)1
- 令和6年度報酬改定Q&A Vol.8 問1(施設外就労先の要件)3
Footnotes#
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厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.57〜59 https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.30〜33 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20
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厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.8」(令和7年3月31日)p.2 https://www.mhlw.go.jp/content/001471548.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4