📘 年間の研修計画をまとめて確認:虐待防止・身体拘束・感染症・BCP・非常災害の義務研修と訓練は障害福祉の義務研修・訓練 一覧で条文ごとに整理しています。
BCP未策定減算とは#
BCP未策定減算は、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定で新設された減算です。業務継続計画(BCP: Business Continuity Plan)を策定していない事業所に対し、所定単位数から一定割合を減算する仕組みとなっています1。
BCPの策定等は、令和3年度の基準改正で義務化され、令和6年3月31日までは努力義務とする経過措置がありました2。令和6年度からは、未策定の事業所にこの減算が適用されます(減算にも令和7年3月31日までの経過措置がありました)13。
この分野をもう少し深く聞きたいなら無料セミナーの日程を見る
減算率(サービス類型別)#
減算率はサービス類型に応じて以下のとおり設定されています1。
| サービス類型 | 対象サービス(例) | 減算率 |
|---|---|---|
| 施設・居住系サービス | 療養介護、施設入所支援、共同生活援助(GH)、宿泊型自立訓練、障害児入所施設、障害者支援施設が行う生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型・B型 | 所定単位数の**3%**減算 |
| 訪問・通所・相談系サービス | 障害者支援施設以外が行う生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、居宅介護、重度訪問介護など | 所定単位数の**1%**減算 |
施設・居住系サービスでは利用者の生活基盤となるため、災害や感染症発生時に事業を継続できない場合の影響が特に大きいことから、より高い減算率が設定されています。
BCP策定の義務化と経過措置#
BCP策定の義務化と経過措置の経緯は以下のとおりです1。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和3年度 | BCP策定等が義務化(令和6年3月31日までは努力義務とする経過措置)2 |
| 令和6年4月 | BCP未策定減算を新設(経過措置の段階的終了に対応) |
| 令和7年3月31日 | 基本的な経過措置が終了 |
令和7年4月以降は、すべての対象サービスで感染症BCP・自然災害BCPの両方の策定が義務となっています。
なお、就労選択支援については令和9年3月31日までの経過措置が設けられています1。
策定が必要な2種類のBCP#
障害福祉サービス事業所が策定しなければならないBCPは、感染症BCPと自然災害BCPの2種類です。片方のみの策定では減算の対象となりますので、必ず両方を策定してください1。
感染症BCP#
感染症(新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ等)の発生・蔓延時に、サービスの提供を継続するための計画です。
自然災害BCP#
地震、風水害、土砂災害等の自然災害が発生した場合に、サービスの提供を継続するための計画です。
BCPに記載すべき主な項目#
2種類のBCPには、それぞれ以下のような項目を記載する必要があります。
| 項目 | 感染症BCP | 自然災害BCP |
|---|---|---|
| 基本方針 | ○ | ○ |
| 想定されるリスク | 感染症の種類・規模 | 地域のハザードマップを踏まえたリスク |
| 優先業務の選定 | ○ | ○ |
| 職員の確保・体制 | 職員の感染時の代替体制 | 被災時の参集基準・安否確認 |
| 物資・設備の確保 | 衛生用品・防護具の備蓄 | 非常用電源・水・食料の備蓄 |
| 利用者への対応 | 感染拡大防止策 | 避難誘導・安全確保 |
| 関係機関との連携 | 保健所・医療機関 | 自治体・避難所 |
| 復旧計画 | ○ | ○ |
厚生労働省が公開しているBCPのひな形(ガイドライン・様式)を活用すると、効率的に策定を進めることができます。
遡及の範囲(運営指導で未策定が判明した場合)#
Q&Aは、運営指導等で未策定が判明した場合、発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して減算を適用するとしています4。ただし、令和7年3月31日までは報酬告示の経過措置があり、遡る先は次のように分かれます。
| 事業所の状況 | 減算の起点 |
|---|---|
| 療養介護・生活介護・短期入所・施設入所支援・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・共同生活援助で、感染症の予防及びまん延の防止のための指針と非常災害に関する具体的計画を策定していない | 経過措置の対象外のため、令和6年4月分から減算の対象となり得る34 |
| 上記のサービスで、指針と非常災害に関する具体的計画を策定していた(BCPのみ未策定) | 令和7年3月31日までは減算を適用しない。令和7年4月分から対象35 |
| 居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援・自立生活援助・就労定着支援・計画相談支援・地域移行支援・地域定着支援、居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援・障害児相談支援(非常災害に関する具体的計画が求められていないサービス) | 令和7年3月31日までは適用しない。令和7年4月分から対象45 |
なお、指針と非常災害に関する具体的計画の一方だけを策定していた場合の扱いは、告示・通知・Q&Aからは確認できていないため、該当する場合は指定権者に確認してください。
たとえば生活介護事業所が令和6年10月の運営指導で未策定と判明し、かつ指針と非常災害に関する具体的計画も策定していなかった場合は、令和6年10月からではなく令和6年4月分の報酬から減算の対象となる、というのがQ&Aの例示です4。居宅介護事業所等が令和7年10月の運営指導で未策定と判明した場合は、令和7年4月分の報酬から対象です4。
研修・訓練の義務#
指定基準は、BCPの策定に加えて、従業者への周知、必要な研修と訓練の定期的な実施、BCPの定期的な見直しを求めています6。研修・訓練の頻度は、解釈通知が「定期的(年1回以上)」としています7。なお、減算の要件はBCPの策定と必要な措置であり、Q&Aは研修・訓練の未実施を減算の要件とはしていません4(運営基準の違反として指導の対象にはなります)。
| 項目 | 頻度 |
|---|---|
| 研修の実施 | 年1回以上 |
| 訓練(シミュレーション)の実施 | 年1回以上 |
| BCPの定期的な見直し | 定期的に見直し、必要に応じて変更 |
研修と訓練は、感染症BCP・自然災害BCPのそれぞれについて実施することが望ましいです。訓練を通じて計画の実効性を検証し、課題があればBCPの見直しにつなげることが重要です。
実務上の注意点#
BCP未策定減算を確実に回避するため、以下の点に留意してください。
- 感染症BCPと自然災害BCPの両方が必要です。 片方のみの策定では要件を満たさず、減算の対象となります1
- 策定だけでなく研修・訓練も実施してください。 研修・訓練は運営基準上の義務なので、行っていない場合は運営指導で指摘を受ける可能性があります6
- 運営指導での遡及減算に注意してください。 運営指導等でBCP未策定が判明した場合、減算は、発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用されます。ただし、令和7年3月31日までは経過措置があり、遡る先は事業所の状況で異なります(下の「遡及の範囲」を参照)34
- BCPは定期的に見直してください。 策定後そのままにせず、訓練の結果や事業環境の変化を踏まえて更新することが求められます
- 就労選択支援以外は経過措置が終了しています。 令和7年3月31日をもって基本的な経過措置は終了しており、現在はすべての対象サービスでBCP策定が必須です
よくある質問#
Q. BCPのひな形やテンプレートはありますか?#
はい、厚生労働省が障害福祉サービス事業所向けのBCPガイドラインおよびひな形を公開しています。感染症BCP・自然災害BCPそれぞれのテンプレートが用意されていますので、これらを活用して策定を進めることができます。
Q. 小規模な事業所でもBCPの策定は必要ですか?#
はい、事業所の規模にかかわらず、すべての障害福祉サービス事業所にBCPの策定が義務づけられています。小規模事業所であっても、利用者へのサービス提供を継続するための計画を策定する必要があります1。
Q. 感染症BCPと自然災害BCPを1つの文書にまとめてもよいですか?#
制度上は2種類のBCPを別々の文書にすることは求められていません。ただし、感染症と自然災害では想定されるリスクや対応策が異なるため、それぞれの内容が十分に網羅されていることが重要です。実務上は別々の文書として策定するほうが管理しやすいです。
Q. 研修や訓練の記録はどのように残せばよいですか?#
研修・訓練の実施日時、参加者名簿、内容の概要、訓練で明らかになった課題などを記録として残してください。運営指導の際に、研修・訓練の実施実績を証明するために必要となります。
Q. 令和7年4月以降に新規に開設する事業所も対象ですか?#
はい、新規開設の事業所も対象です。開設時点でBCPの策定が求められるため、開設準備の段階から感染症BCP・自然災害BCPの策定に取り組む必要があります。策定が間に合わない場合は減算の対象となります1。
Footnotes#
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(業務継続計画未策定減算の創設) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)の令和3年改正附則 第3条(業務継続計画の策定等に係る経過措置:令和6年3月31日まで「講ずるよう努めなければ」と読み替え) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2
-
「指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)改正附則(令和6年3月15日告示第3号)第2条(業務継続計画未策定減算に係る経過措置:令和7年3月31日までは適用しない。ただし、療養介護・生活介護・短期入所・施設入所支援・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・共同生活援助で、感染症の指針と非常災害に関する具体的計画を策定していない場合はこの限りでない) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)問14・問15(業務継続計画未策定減算の適用と遡及) (https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
厚生労働省「令和6年度 費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項」第二 1(13)業務継続計画未策定減算(令和7年3月31日までの経過措置) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2(業務継続計画の策定等) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(解釈通知・障発第1206001号)第三 3(23)業務継続計画の策定等(基準第33条の2)③④(pp.57-59) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf) ↩