視覚・聴覚言語障害者支援体制加算とは#
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算は、視覚障害・聴覚障害・言語機能障害のある利用者を一定割合以上受け入れ、意思疎通に関する専門職員を配置している事業所を評価する加算です1。
視覚や聴覚に重度の障害がある方は、日常的なコミュニケーションに大きな困難を抱えています。こうした利用者に対して手話通訳や点字などの専門的な支援を行うには、通常の人員配置に加えて専門職員の確保が必要です。この加算は、そうした体制を整えている事業所の追加的なコストを報酬上で評価する仕組みです。
令和6年度の報酬改定では、従来1区分だったこの加算が加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の2区分に見直され、より手厚い支援体制を敷く事業所を高く評価できるようになりました2。
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加算区分と単位数#
| 区分 | 単位数 | 利用者割合要件 | 専門職員の配置基準 |
|---|---|---|---|
| 加算(Ⅰ) | 51単位/日 | 利用者の50%以上が重度の視覚・聴覚・言語機能障害者 | 利用者数 ÷ 40 以上(常勤換算) |
| 加算(Ⅱ) | 41単位/日 | 利用者の30%以上が重度の視覚・聴覚・言語機能障害者 | 利用者数 ÷ 50 以上(常勤換算) |
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の併算定はできません。要件を満たす上位区分を届け出る形になります1。
対象サービス#
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算は、以下の障害福祉サービスで算定できます1。
- 生活介護
- 施設入所支援
- 共同生活援助(グループホーム)
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労選択支援
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
いずれのサービスでも、加算(Ⅰ)・加算(Ⅱ)の単位数は共通です。
算定要件の詳細#
加算(Ⅰ)の要件#
加算(Ⅰ)を算定するには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります2。
- 利用者割合要件: 視覚障害者等(視覚障害・聴覚障害・言語機能障害に重度の障害のある利用者)の数が、利用者の数の50%以上であること
- 専門職員配置要件: 視覚障害者等との意思疎通に関し専門性を有する者として専ら視覚障害者等の生活支援に従事する従業者を、基準上の人員配置に加えて、常勤換算で利用者数を40で除した数以上配置していること
加算(Ⅱ)の要件#
加算(Ⅱ)の要件は加算(Ⅰ)よりも緩和されており、以下の2つを両方満たすことが必要です2。
- 利用者割合要件: 視覚障害者等の数が、利用者の数の30%以上であること
- 専門職員配置要件: 専ら視覚障害者等の生活支援に従事する従業者を、基準上の人員配置に加えて、常勤換算で利用者数を50で除した数以上配置していること
重度障害の定義#
加算の対象となる「重度の視覚・聴覚・言語機能障害者」とは、以下のいずれかに該当する方です1。
- 視覚障害: 身体障害者手帳の障害の程度が1級または2級に該当し、日常生活におけるコミュニケーションや移動等に支障があると認められる視覚障害
- 聴覚障害: 身体障害者手帳の障害の程度が2級に該当し、日常生活におけるコミュニケーションに支障があると認められる聴覚障害
- 言語機能障害: 身体障害者手帳の障害の程度が3級に該当し、日常生活におけるコミュニケーションに支障があると認められる言語機能障害
重複障害者の特例#
重度の視覚障害、聴覚障害、言語機能障害又は知的障害のうち2つ以上の障害を有する利用者は、利用者割合の計算において1人を2人としてカウントします1。この場合の「知的障害」は重度である必要はありません3。
たとえば、視覚障害1級かつ聴覚障害2級の利用者がいる場合、その方は利用者割合の分子において2人分として算定されます。
令和6年度改定のポイント#
令和6年度の報酬改定で、視覚・聴覚言語障害者支援体制加算は大きく見直されました2。
旧制度(令和5年度以前)#
- 単一区分: 41単位/日
- 利用者割合要件: 30%以上
- 専門職員配置: 利用者数 ÷ 50 以上
新制度(令和6年度以降)#
| 項目 | 加算(Ⅰ)【新設】 | 加算(Ⅱ)【旧制度の引き継ぎ】 |
|---|---|---|
| 単位数 | 51単位/日 | 41単位/日 |
| 利用者割合 | 50%以上 | 30%以上 |
| 専門職員配置 | 利用者数 ÷ 40 以上 | 利用者数 ÷ 50 以上 |
改定の趣旨は、視覚・聴覚・言語機能に重度の障害がある利用者を多く受け入れ、より手厚い専門職員体制を整えている事業所を一層評価することにあります2。従来の基準(30%以上・÷50以上)は加算(Ⅱ)としてそのまま残り、新たに上位区分として加算(Ⅰ)が創設されました。
意思疎通の専門職員とは#
加算の配置要件で求められる「視覚障害者等との意思疎通に関し専門性を有する職員」とは、以下のような資格・技能を持つ者を指します1。
点字の知識を有する者#
視覚障害のある利用者に対して、点字による情報提供やコミュニケーション支援を行える職員です。点字の読み書きに習熟し、利用者に必要な情報を点字で提供できる能力が求められます。
手話通訳士・手話通訳者#
聴覚障害のある利用者に対して、手話によるコミュニケーション支援を行える職員です。「手話通訳士」は厚生労働大臣認定の資格であり、「手話通訳者」は都道府県が実施する手話通訳者養成研修を修了した者を指します。留意事項通知は、聴覚障害・言語機能障害については「手話通訳等を行うことができる者」、視覚障害については「点字の指導、点訳、歩行支援等を行うことができる者」を、意思疎通に関し専門性を有する者としています3。
言語聴覚士#
言語機能障害のある利用者に対して、言語訓練やコミュニケーション支援を行える国家資格保持者です。音声障害・構音障害・失語症などへの専門的対応が可能です。
これらの専門職員は、告示が「専ら視覚障害者等の生活支援に従事する従業者を、人員配置に加え」て配置すると定めているとおり、基準上の人員(職業指導員・生活支援員等)とは別枠の専従の加配です。基準人員として数えている職員を兼務で算入することはできません1。
実務上の留意点#
体制届の提出#
加算を算定するには、事前に指定権者(都道府県または市町村)に障害福祉サービスの体制届(加算届)を提出する必要があります3。届出が毎月15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から算定できます3。
届出時に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 体制等に関する届出書(体制等状況一覧表)
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算に係る届出書
- 専門職員の専門性を示す資料(指定権者の定めによる)
- 利用者における視覚障害者等の割合を示す資料
- 専門職員の勤務形態一覧表(常勤換算の根拠)
利用者割合の計算方法#
告示は「視覚障害者等である利用者の数が当該利用者の数に100分の50(30)を乗じて得た数以上」と定め、前年度実績で判定するとは書いていません1。多機能型事業所等は、複数のサービスの利用者全体で割合と加配数を満たせば足ります3。
利用者割合 = 視覚障害者等の数(重複障害の特例適用後)÷ 利用者の総数 × 100
割合を判定する利用者数の取り方(直近の実績か前年度平均か)は指定権者の届出様式の定めに従ってください。
重複障害者のカウント方法#
重複障害者のカウント特例を活用する場合の計算例を示します。
たとえば、利用者20人の事業所で、以下のような利用者構成だった場合を考えます。
- 視覚障害1級: 3人
- 聴覚障害2級: 4人
- 視覚障害1級 かつ 聴覚障害2級: 1人(重複障害)
- その他の利用者: 12人
重複障害者1人は2人としてカウントするため、分子は 3 + 4 + 1 × 2 = 9人 となります。
利用者割合 = 9 ÷ 20 × 100 = 45%
この場合、30%以上の要件を満たすため加算(Ⅱ)の算定が可能です。50%以上には達していないため、加算(Ⅰ)は算定できません。
専門職員の常勤換算#
専門職員の配置は常勤換算で判定します。常勤換算数は、各職員の週あたりの勤務時間を事業所の常勤職員の所定労働時間で除して算出します。
たとえば、利用者40人の事業所が加算(Ⅰ)を算定する場合、必要な専門職員数は 40 ÷ 40 = 1.0人(常勤換算)以上です。週32時間勤務の手話通訳者がいる場合(所定労働時間40時間)、常勤換算値は 32 ÷ 40 = 0.8 となり、この職員1人では要件を満たしません。追加の専門職員配置が必要です。
よくある質問#
Q. 加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)を同時に算定できますか?#
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の併算定はできません。加算(Ⅰ)の要件を満たす場合は加算(Ⅰ)を、加算(Ⅰ)の要件は満たさないが加算(Ⅱ)の要件を満たす場合は加算(Ⅱ)を届け出ます1。
Q. 手話奉仕員は「意思疎通の専門職員」に含まれますか?#
留意事項通知は聴覚障害・言語機能障害について「手話通訳等を行うことができる者」とだけ定めており、資格名は列挙していません。手話奉仕員養成講座の修了者が該当するかは告示・通知に記載がないため、指定権者に事前に確認してください3。
Q. 就労定着支援でもこの加算を算定できますか?#
就労定着支援は対象サービスに含まれていません。対象となるのは生活介護、施設入所支援、共同生活援助、自立訓練、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型・B型です1。
Q. 年度途中で利用者割合が基準を下回った場合はどうなりますか?#
告示・留意事項通知に「前年度実績で年度単位に判定する」という規定はありません。要件を満たさなくなったときの取扱いは、加算の届出に関する指定権者の定め(要件を満たさなくなった場合は速やかに届け出る等)に従ってください。
Q. 通常の職業指導員が手話通訳の資格を持っている場合、専門職員としてカウントできますか?#
できません。告示は、専門性を有する者として専ら視覚障害者等の生活支援に従事する従業者を、基準上の人員配置に加えて配置することを要件としています。基準人員として数える職業指導員を同時に専門職員として数えることはできず、別枠で専従の職員を常勤換算で必要数配置する必要があります1。
Footnotes#
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和6年改正) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
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厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.37 (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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厚生労働省「令和6年度 費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(6)視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の取扱い ㈢(p.125:視覚障害=点字の指導・点訳・歩行支援等を行うことができる者、聴覚障害・言語機能障害=手話通訳等を行うことができる者) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
