精神障害者退院支援施設加算は、**精神科病院の精神病床を転換するなどして、自立訓練(生活訓練)または就労移行支援に併せて居住の場を提供する事業所(精神障害者退院支援施設)**が、精神病床におおむね1年以上入院していた精神障害者等に居住の場を提供した日に算定する加算です1。単位数は夜間の勤務体制で2区分に分かれ、夜間を通じて生活支援員を1人以上配置する(Ⅰ)が180単位・日、宿直職員を1人以上配置する(Ⅱ)が115単位・日です12。
算定できるのは、報酬告示が「精神障害者退院支援施設」と定義する事業所に限られます。告示は対象を**「法附則第1条第3号に掲げる規定の施行の日の前日までに指定を受けた事業所」**としており、指定の時期が限定された経過的な類型です1。新たに就労移行支援を始める事業所が算定できる加算ではなく、該当する施設を運営している法人向けの解説として、要件・施設基準・2区分の違いを整理します。
単位数と算定できるサービス#
| サービス | 報酬告示の位置 | (Ⅰ)生活支援員の夜間配置 | (Ⅱ)宿直職員の夜間配置 | サービスコード |
|---|---|---|---|---|
| 自立訓練(生活訓練) | 第11の8 | 180単位・日 | 115単位・日 | 42-5230/5231 |
| 就労移行支援 | 第12の8 | 180単位・日 | 115単位・日 | 43-5230/5231 |
生活訓練の注が「精神障害者退院支援施設」を定義し、就労移行支援の注は「精神障害者退院支援施設である指定就労移行支援事業所又は認定指定就労移行支援事業所」が、精神病床におおむね1年以上入院していた精神障害者その他これに準ずる精神障害者に対して居住の場を提供した場合に、1日につき所定単位数を算定すると定めています1。いずれも「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届出を行った」ことが要件です1。
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「精神障害者退院支援施設」とは#
報酬告示(第11の8の注)は、次のとおり定義しています1。
精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病床が設けられているものを含む)の精神病床を転換して、指定自立訓練(生活訓練)または指定就労移行支援に併せて居住の場を提供する指定自立訓練(生活訓練)事業所、または指定就労移行支援事業所もしくは認定指定就労移行支援事業所であって、法附則第1条第3号に掲げる規定の施行の日の前日までに指定を受けた事業所
要点は3つです。
- 精神科病院の精神病床の転換が前提です。精神科病院以外の病院でも、精神病床が設けられていれば含まれます。
- 日中の訓練(生活訓練または就労移行支援)に併せて居住の場を提供する事業所です。通所だけの事業所は該当しません。
- 指定を受けた時期が限定されています。告示は「法附則第1条第3号に掲げる規定の施行の日の前日までに指定を受けた事業所」と定めており、それ以降に指定を受けた事業所は定義に入りません。
認定指定就労移行支援事業所とは、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の養成施設として認定を受けた就労移行支援事業所(指定障害福祉サービス基準第176条)で、サービスコードでは「就移養成」として区別されています34。
対象者#
精神病床におおむね1年以上入院していた精神障害者(障害者総合支援法第4条第1項に規定する精神障害者)その他これに準ずる精神障害者です1。留意事項通知も「精神病床に概ね1年以上入院していた精神障害者等に対して居住の場を提供した場合」としています2。
施設基準(告示第551号 第十一号ヘ)#
告示第551号は、(Ⅰ)の施設基準として次の(一)〜(六)を定め、(Ⅱ)は(一)〜(五)に宿直職員の配置を組み合わせます5。定員・居室・床面積は、病床転換型(病院の建物内の精神病床を転換して設けられたもの)と病床転換型以外で基準が異なります。
| 項目 | 病床転換型 | 病床転換型以外 | |
|---|---|---|---|
| (一) | 利用定員 | 20人以上60人以下 | 20人以上30人以下 |
| (二) | 居室の定員 | 4人以下 | 原則として個室 |
| (三) | 利用者1人当たりの居室の床面積 | 6㎡以上 | 8㎡以上 |
| (四) | 居室以外の設備 | 浴室、洗面設備、便所、その他サービスの提供に必要な設備 | 同左 |
| (五) | 環境 | 日照、採光、換気等利用者の保健衛生、防災等について十分配慮されていること | 同左 |
| (六) | 夜間の体制((Ⅰ)) | 夜間の時間帯を通じて生活支援員が1人以上配置されていること | 同左 |
| 夜間の体制((Ⅱ)) | (一)〜(五)を満たし、夜間の時間帯を通じて宿直勤務を行う職員が1人以上配置されていること | 同左 |
就労移行支援の施設基準(第十二号ロ・ハ)は、この第十一号ヘの(1)・(2)を満たすこととされています5。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは夜間の勤務体制だけ#
留意事項通知は、夜間の勤務体制に応じて次のとおり算定するとしています2。
- (Ⅰ)180単位:夜間の時間帯を通じて生活支援員が1人以上配置されている場合
- (Ⅱ)115単位:夜間の時間帯を通じて宿直勤務を行う職員が1人以上配置されている場合
生活支援員による夜勤体制か、宿直体制かで区分が決まります。定員・居室・床面積の基準は両区分で共通です5。
計算例#
その他地域(1単位10.00円)の施設で、対象者1人に30日間居住の場を提供した場合の加算額は次のとおりです16。
| 区分 | 計算 |
|---|---|
| (Ⅰ)夜間に生活支援員を配置 | 180単位 × 30日 = 5,400単位(54,000円) |
| (Ⅱ)宿直職員を配置 | 115単位 × 30日 = 3,450単位(34,500円) |
| 1級地(就労移行支援・自立訓練の単価11.18円)の(Ⅰ) | 180単位 × 11.18円 = 2,012円/日 |
日中の訓練の基本報酬に、居住の場の提供分として上乗せされます1。
利用者負担上限額管理との関係#
精神障害者退院支援施設の利用者は、利用者負担上限額管理の優先順位で**居住系サービス利用者(第1順位)**に位置づけられています。生活訓練・就労移行支援の事業所でも、退院支援施設の利用者については居住系として上限額管理を担います。詳しくは利用者負担上限額管理加算を参照してください。
よくある質問#
Q. これから就労移行支援事業所を開設して、グループホームと併設すれば算定できますか#
できません。報酬告示の定義は「法附則第1条第3号に掲げる規定の施行の日の前日までに指定を受けた事業所」に限られています1。共同生活援助(グループホーム)は別のサービスであり、この加算の対象ではありません。
Q. 精神科病院ではない一般病院の精神病床を転換した場合は対象ですか#
対象です。告示は「精神科病院以外の病院で精神病床が設けられているものを含む」としています1。
Q. 入院期間が1年に満たない人は対象外ですか#
告示は「精神病床におおむね1年以上入院していた精神障害者その他これに準ずる精神障害者」としています1。「おおむね」と「これに準ずる」の判断は指定権者に確認してください。
Q. 夜間に生活支援員と宿直職員の両方を配置している場合はどちらを算定しますか#
(Ⅰ)の施設基準(夜間の時間帯を通じて生活支援員が1人以上配置)を満たしていれば(Ⅰ)を算定します52。(Ⅱ)は(一)〜(五)の基準に宿直職員の配置を組み合わせた区分です5。
Q. 病床転換型以外の施設で、居室が2人部屋でも算定できますか#
病床転換型以外の居室の定員は「原則として個室」です5。個室でない場合の取扱いは指定権者に確認してください。
Q. 届出は必要ですか#
必要です。告示は、施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届出を行った事業所に算定を認めています1。
制度上の根拠#
- 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)第11の8(生活訓練・定義)、第12の8(就労移行支援)、第12の1の注3(認定指定就労移行支援事業所)1
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成18年厚生労働省告示第551号)第十一号ヘ((1)(Ⅰ)の(一)〜(六)、(2)(Ⅱ))、第十二号ロ・ハ(就労移行支援)5
- 留意事項通知 自立訓練(生活訓練)の項 精神障害者退院支援施設加算の取扱い(p.244〜245)、就労移行支援⑧(p.267)は準用2
- 指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第176条(認定指定就労移行支援事業所)3
- 事務処理要領 上限額管理を行う事業所の優先順位(居住系サービス利用者)7
- サービスコード表(令和8年6月施行版)4、単価告示(平成18年厚生労働省告示第539号)6
Footnotes#
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第11の8・第12の8 精神障害者退院支援施設加算、第12の1の注3 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14
-
厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の3(2)自立訓練(生活訓練)精神障害者退院支援施設加算の取扱い(p.244〜245)、就労移行支援⑧(p.267・準用) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第176条第1項 (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2
-
厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード表(令和8年6月施行版)」分冊2 p.86(42-5230/5231)・p.98(43-5230/5231) (https://www.mhlw.go.jp/content/001696434.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準並びにこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める施設基準」(平成18年厚生労働省告示第551号)第十一号ヘ、第十二号ロ・ハ (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8504&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準第一条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2
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厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について」(事務処理要領・令和8年7月版)上限額管理を行う事業所の優先順位(p.174〜175) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001721666.pdf) ↩
