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職場定着支援の技法とは?ジョブコーチ支援の枠組みと実践ポイント

更新: 2026年7月16日

1. 職場定着支援とは#

障害のある方が一般就労した後も安定して働き続けられるよう、職場や本人・家族に働きかける支援を「職場定着支援」と呼びます。制度上も、就労移行支援・就労継続支援A型・生活介護の各事業者は、利用者が就職した日から6か月以上、職業生活における相談等の支援を継続することが運営基準で定められています123

さらに、6か月の支援終了後も継続的な支援が必要な場合に備えて、「就労定着支援」という専門のサービスが制度化されています。就労定着支援の事業は、通常の事業所に新たに雇用された障害者に対して、その事業所での就労の継続を図るために必要な、事業主・障害福祉サービス事業者・医療機関その他との連絡調整その他の支援を適切かつ効果的に行うものとされています4

また、地域障害者職業センター等が行う職場適応援助者(ジョブコーチ)支援では、集中支援の段階を「職場適応上の課題を分析し、集中的に改善を図る」ものと位置づけています5。つまり職場定着支援は、就職して終わりではなく、職場に適応する過程で生じる課題に継続的に対応していく取組みであるといえます。

2. 支援の基本枠組み:ジョブコーチ支援の構造#

厚生労働省が示すジョブコーチ支援の仕組みには、次の3つの類型があります5

類型支援の担い手
配置型地域障害者職業センターに所属するジョブコーチが、事業所に出向いて支援を行う
訪問型就労支援を行っている社会福祉法人等に所属するジョブコーチが、事業所に出向いて支援を行う
企業在籍型自社の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者の支援を行う

支援は、訪問頻度を段階的に減らしながら進みます5

段階訪問頻度内容
集中支援週3〜4日訪問職場適応上の課題を分析し、集中的に改善を図る
移行支援週1〜2日訪問支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場に移行する
(移行支援後)数週間〜数か月に一度訪問職場への定着状況を見守る

このように、支援員が課題に直接介入する「集中支援」から、職場側のキーパーソン(上司・同僚等)に支援のノウハウを引き継ぎ、支援の主体を職場に移していく「移行支援」へと段階的に移行する構造になっている点が、ジョブコーチ支援の基本枠組みです5

就労定着支援の枠組みでも、事業者は利用者に対して一月に一回以上、対面またはテレビ電話装置等を用いる方法により面談を行うとともに、一月に一回以上、利用者を雇用した事業所の事業主を訪問して職場での状況を把握するよう努めなければならないとされています6

3. 場面別の技法#

3-1 事業主・職場側への働きかけ#

ジョブコーチは事業主に対して、本人が力を発揮しやすい作業の提案や、障害特性を踏まえた仕事の教え方などを助言します。また、上司・同僚に対しては、障害の理解に関する社内啓発や、本人との関わり方・指導方法についても助言を行います5

具体的な助言の例として、次のようなものが示されています5

  • 本人の作業状況と課題を指導担当者と共有すること
  • まずは正確に作業できることを目指し、慣れてきたら速さを、安定してきたら新たな作業を追加するなど、段階的に指導すること
  • ミスを指摘する場合は、落ち着いた口調で指摘したうえで、具体的な改善方法もあわせて伝えること(ジョブコーチが手本を示しながら助言する場合もある)

職場内の受け入れ体制づくりでは、「誰にどこまで伝えるか」も重要な論点です。知的障害のある社員をジョブコーチ支援を受けて採用した企業の事例では、店長が「従業員は、経営者以上にナーバスになる」との考えからスタッフ全員に採用を伝え、ジョブコーチの支援が本人理解に大きな効果となって支援体制がすぐにできた、と振り返っています7

3-2 本人への支援#

ジョブコーチによる本人向けの支援内容としては、業務遂行力の向上支援、職場内コミュニケーション能力の向上支援、健康管理・生活リズムの構築支援が挙げられています5

具体的には、次のような関わり方が示されています5

  • 出退勤時や面談時に体調を把握するポイントとして、職場で見られやすい疲労・ストレスのサイン(例:口数が減る、能率が下がる)を職場側と共有する
  • 会社が求める作業水準等を確認しながら、オーバーペースにならないよう業務の進め方や休憩の取り方について助言する
  • 本人の同意を得たうえで通院に同行し、主治医から症状や就業上の留意事項について助言を得て支援計画を作成する。支援開始後も進捗状況を主治医と共有し、勤務時間の変更やストレスへの対処方法を相談する

作業指導の技法:システマティック・インストラクション#

作業指導の場面では、「システマティック・インストラクション」という技法が、ジョブコーチに代表される雇用の専門家が用いる代表的な支援手法として紹介されています8。作業指示を、言語に基づく「言語指示」、指さしなどの「身振り」、具体的な作業動作を見せる「見本の提示」、手を添えて動作を補う「手添え」の4つに分けて捉え、介入度(指示の手厚さ)に階層があると理解します。そのうえで、段階的に指示の手厚さを下げていくことで、指示がなくても独りでできる行動は何か、どのような支援があれば行動を十分にできるのかを見極めていきます8

あわせて、苦手さを補う「補完方法」を明らかにすることも重視されています。補完方法は、①本人自身の行動で補う「補完行動」(読み上げ確認・復唱・レ点チェック等)、②物品を用いて作業環境を構造化する「補完手段」(定規や付箋の活用等)、③他者による指導・支援、の3つに分けられます。補完方法の把握は、一般就労後に企業に求める合理的配慮の内容を検討する情報や、職場内のジョブコーチ支援につながるとされています9

職場での日常的な対応の工夫#

知的障害者の職場定着に関するJEEDのマニュアルでは、職場で起こりやすい場面ごとの対応例が示されています10

  • 注意はその場で行う:あとで注意しても効果がないため、相応しくない発言・行動に出くわしたら必ずその場で注意する。改善が見られない場合は「できた/できない」を確認するチェック表を作成し、本人に確認させる方法もある
  • 指示や注意は順々に出す:矢継ぎ早に注意や指示を受けるとパニックになることがあるため、指示は順々に行う。パニックが起きた場合に備え、本人が好む「落ち着ける場所」を前もって作業場と別に用意し、物理的に移動できるようにしておく
  • 返事ではなく行動で理解度を確認する:わからなくても反射的に「はい」と返事する場合があるため、指示後の本人の行動を観察して理解の度合いを判断する。「手順を説明してごらん」など、「はい」と回答できないように質問を工夫する

自己理解を促す支援#

本人が自分の特徴を職場に伝えられるようにする支援も有効です。「ナビゲーションブック」と呼ばれる支援ツールは、本人自身が支援を通して得た体験をもとに、自分の特徴やセールスポイント、障害特性、職業上の課題、事業所に配慮を依頼すること等を取りまとめていく手法で、支援者が一方的に記入せず本人が主体的に作り上げることを支援します。職場に配慮をお願いする資料や就職面接での自己紹介に用いるなど、目的をもって本人と共同で作り上げる発想が必要とされています11

3-3 家族との連携#

ジョブコーチ支援の内容には、安定した職業生活を送るための家族の関わり方に関する助言も含まれています5

就労定着支援においても、事業者は利用者やその家族等に対して、雇用に伴い生じる日常生活または社会生活を営むうえでの各般の問題に関する相談、指導及び助言その他の必要な支援を提供しなければならないとされています6

職場で起きている課題の背景に、退社後の生活があることも少なくありません。JEEDのマニュアルでは、昼休みの昼寝から起きられない事例について「会社で昼寝が必要なのは、夜更かし等、退社後の生活に問題があることが多く、家族との相談が必要」とし、また「仕事上の問題はないのに、日常生活の基盤が弱く、職場に定着できない残念な例」については、まず家庭に協力と理解を求め、家庭の支援が期待できない場合には就業・生活支援センター、グループホーム、福祉施設等に相談して協力を仰ぐことが大切とされています12

家庭と連携する際の実務としては、連絡体制の構築そのものが課題改善に向けた重要な支援となります。作業日誌(連絡ノート)の活用は、事業所での様子を家庭に伝えるだけでなく、帰宅後の本人の様子を保護者から把握するうえでも有効です。その前提として保護者との信頼関係が必要であり、保護者の考えを尊重し受容的に接すること、改善のお願いだけでなく過去の事例や将来の支援体制など具体的な情報を伝えることが大切とされています13

3-4 関係機関との連絡調整#

就労定着支援の基本方針では、事業者は通常の事業所の事業主、障害福祉サービス事業者等、医療機関その他の者との連絡調整その他の支援を適切かつ効果的に行うことが求められています4。実施にあたっても、新たに障害者を雇用した事業所の事業主、指定障害福祉サービス事業者等、医療機関等との連絡調整及び連携を行うことが定められています6

4. 事業所内での体制づくり#

サービス管理責任者の役割#

就労定着支援のサービス管理責任者には、次の業務が定められています14

  • 利用申込者の利用に際し、他の指定障害福祉サービス事業者等への照会等により、心身の状況や他事業所での利用状況等を把握すること
  • 利用者が地域において自立した日常生活または社会生活を継続して営むことができるよう必要な支援を行うこと
  • 他の従業者に対する技術指導及び助言を行うこと

職員全体で取り組むチーム支援#

支援と評価(アセスメント)は、特定の担当者に任せきりにせず、事業所全体で取り組むことが望ましいとされています。厚労省のアセスメント実施マニュアルでは、管理者の下、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員等の職員全体で取り組むことが望ましく、各職員が役割を分担することで、継続的に複数の視点から評価ができ、特定の担当者に比重や負担が偏りすぎることを防げるとされています15

結果の取りまとめにあたっても、評価者が単独で判断せず事業所全体で行うことが望ましく、事業所内会議では各支援員が観察した情報を出し合い、多面的・総合的に協議します。その際、協議の結論を「できた・できない」「遅い・速い」「良い・悪い」という結果で留まらせず、本人の将来の「目標の提示」「支援方法・課題改善の方法」として整理することが求められています16。また、支援の結果を記録しつつ支援を講じていくことで、本人の将来の進路先における具体的な支援方法やサポート体制を明らかにできるとされており、日々の記録が定着支援の質を支えます16

支援体制のセルフチェックの視点#

同マニュアルでは、事業所のアセスメント実施体制を点検するためのガイドラインも示されています。方針面では「就労支援の各フェイズ(職業準備、実習、求職活動、定着支援など)において、アセスメントを実施している」「アセスメントの実施方法について職員間での共通理解を図っている」こと、体制面では「アセスメントに関する知識やスキルを持つ職員がいる」「アセスメントに対するスーパーバイズができる職員がいる」「アセスメントが実施できるための人材育成及び配置の取組みを行っている」ことなどが挙げられています17。定着支援も含めた各段階で評価を行い、その方法を職員間で共有し、指導できる人材を育てる——という体制づくりの視点は、定着支援を属人化させないうえで参考になります。

前段階の支援からの引継ぎ#

就労移行支援・就労継続支援A型・生活介護の各事業者は、利用者が就労定着支援の利用を希望する場合、6か月の支援が終了した後速やかに就労定着支援を受けられるよう、就労定着支援事業者との連絡調整に努めなければならないとされています123。事業所内では、この引継ぎのタイミングと担当窓口をあらかじめ整理しておくことが必要です。

また、就労定着支援を終了する際にも、企業による職場でのサポート体制や、生活面の安定のための支援が引き続き行われるよう、適切な引き継ぎのための体制を整えることが制度上求められています1819。支援が終了した後を見据えて、事業所と家族・関係機関のそれぞれに何を引き継ぐかを、支援の過程からあらかじめ整理しておく体制づくりが実務上のポイントになります。

5. 関連制度への接続#

職場定着支援は、単独の技法というより複数の制度・支援機関が連携して行うものです。

  • 就労定着支援:就労移行支援等を経て一般就労した後、6か月を超えて生じる生活面・就労面の課題に対応するための障害福祉サービスです4
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)支援:地域障害者職業センターへの相談を起点に、配置型・訪問型・企業在籍型のいずれかの形で利用できます5
  • 助成金:訪問型・企業在籍型のジョブコーチによる支援には「職場適応援助者助成金」を活用できる場合があります(旧・障害者雇用安定助成金〔障害者職場適応援助コース〕は令和3年4月に同助成金へ再編。令和6年4月からは申請先が高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED))。最新の支給要件・金額は同機構の案内をご確認ください。

事業所としては、自事業所の支援だけで完結させようとせず、こうした関連制度・関係機関への橋渡しも視野に入れて職場定着支援の体制を組み立てることが重要です。

よくある質問#

Q. ジョブコーチ支援にはどのような種類がありますか?#

配置型・訪問型・企業在籍型の3種類があります。配置型は地域障害者職業センターに所属するジョブコーチが、訪問型は就労支援を行う社会福祉法人等に所属するジョブコーチが、それぞれ事業所に出向いて支援を行います。企業在籍型は、自社の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者を支援する形です5

Q. ジョブコーチ支援はどのくらいの頻度・期間で行われますか?#

まず週3〜4日訪問する「集中支援」で職場適応上の課題を分析・改善し、次に週1〜2日訪問する「移行支援」で支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成を行いながら支援の主体を職場に移していきます。その後は数週間〜数か月に一度の訪問へと移行します5

Q. 就労定着支援では、利用者や事業主とどのくらいの頻度で関わる必要がありますか?#

就労定着支援事業者は、利用者に対して一月に一回以上、対面またはテレビ電話装置等を用いる方法で面談を行うとともに、一月に一回以上、利用者を雇用した事業所の事業主を訪問して職場での状況を把握するよう努めなければならないとされています6

Q. 家族への支援も職場定着支援に含まれますか?#

含まれます。ジョブコーチ支援では、安定した職業生活を送るための家族の関わり方に関する助言が行われます。就労定着支援においても、利用者本人だけでなくその家族等に対する相談・指導・助言が支援内容として定められています56

Q. 就労移行支援等を利用した後、いつから就労定着支援を利用できますか?#

就労移行支援・就労継続支援A型・生活介護の各事業者による6か月以上の定着支援が終了した後、利用者が希望すれば速やかに就労定着支援を受けられるよう、事業者間で連絡調整を行うことが運営基準で定められています123

📅 資料の鮮度について:本記事の支援手法は、厚生労働省・JEEDの公式マニュアル類に基づいています。うち「知的障害者の職場定着推進マニュアル」は発行年の古い資料のため、手法の記述にのみ用い、制度・機関・助成金の情報は現行の公式情報で確認しています。

出典#

817のページ番号は、PDF収載ページ(通しページ)です。

Footnotes#

  1. 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第百八十二条(就労移行支援・職場への定着のための支援等の実施) 2 3

  2. 同基準 第百九十五条(就労継続支援A型・職場への定着のための支援等の実施) 2 3

  3. 同基準 第八十五条の二(生活介護・職場への定着のための支援等の実施) 2 3

  4. 同基準 第二百六条の二(就労定着支援・基本方針) 2 3

  5. 厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援について」p.1-2 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

  6. 同基準 第二百六条の八(就労定着支援・職場への定着のための支援等の実施) 2 3 4 5

  7. 同マニュアル p.46(雇用事業所の取組事例・店長談)

  8. 厚生労働省「改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル」(2021年)p.9-11(システマティック・インストラクション) 2 3

  9. 同マニュアル p.11-13(補完方法)

  10. 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「知的障害者の職場定着推進マニュアル」(JEEDマニュアルNo.14)p.40-43(場面別の対応例)

  11. 同マニュアル p.15-16(ナビゲーションブック)

  12. 同マニュアル p.39-40(家族・生活支援機関との連携)

  13. 厚生労働省「改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル」(2021年)p.36(家庭との連絡体制)

  14. 同基準 第二百六条の六(就労定着支援・サービス管理責任者の責務)

  15. 同マニュアル p.21(職員全体での実施体制・役割分担)

  16. 同マニュアル p.38・40・47(事業所内会議・記録) 2

  17. 同マニュアル p.55-56(アセスメント実施促進に向けたガイドライン) 2

  18. 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.32

  19. 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.56

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