訪問系サービスの**喀痰吸引等支援体制加算(100単位・1日につき)**は、喀痰吸引等が必要な利用者に対し、登録特定行為事業者の認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を行った日に算定する加算で、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護のいずれにも設けられています1。特定事業所加算(Ⅰ)を算定している場合は算定できず、重度訪問介護では入院中の利用者(告示ロ)にも算定できません1。
算定の前提は「事業所」と「従業者」の2つの登録・認定です。事業所は社会福祉士及び介護福祉士法附則第27条の登録特定行為事業者として都道府県知事の登録を受け、従業者は喀痰吸引等研修(第1号〜第3号)を修了して認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けている必要があります23。本記事では、加算の要件、喀痰吸引等の5つの行為、研修区分と行える行為の対応、登録特定行為事業者の登録基準、特定事業所加算との関係を整理します。
全体像#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 100単位・1日につき |
| 対象サービス | 居宅介護(第1の4)、重度訪問介護(第2の5)、同行援護(第3の4)、行動援護(第4の4) |
| 要件 | 喀痰吸引等が必要な者に対し、登録特定行為事業者の認定特定行為業務従事者が喀痰吸引等を行った場合 |
| 算定不可 | **特定事業所加算(Ⅰ)を算定している場合。重度訪問介護は入院・入所中(告示ロ)**の場合も不可 |
サービスコードは居宅介護11-6100、重度訪問介護12-6100、同行援護15-6100です4。生活介護等の通所系には別に「喀痰吸引等実施加算(30単位・日)」が令和6年度に新設されていますが、訪問系の喀痰吸引等支援体制加算とは別の加算です5。
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「喀痰吸引等」の5つの行為#
社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項の「喀痰吸引等」は、日常生活を営むのに必要な行為であって医師の指示の下に行われるもののうち、厚生労働省令で定める次の5行為です26。
| 行為 |
|---|
| 口腔内の喀痰吸引 |
| 鼻腔内の喀痰吸引 |
| 気管カニューレ内部の喀痰吸引 |
| 胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養 |
| 経鼻経管栄養 |
留意事項通知でも、特定事業所加算の重度者割合に数える「喀痰吸引等を必要とする者」はこの5行為を必要とする者で、算入できるのは喀痰吸引等の業務の登録を受けている事業所に限るとされています7。
認定特定行為業務従事者(従業者側の要件)#
介護福祉士以外の介護職員は、認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けている場合に、当分の間、診療の補助として医師の指示の下に特定行為(修了した研修の課程に応じて定められた行為)を業として行うことができます。認定証は、都道府県知事または登録研修機関が行う喀痰吸引等研修の課程を修了したと都道府県知事が認定した者に交付されます。業務に当たっては医師・看護師その他の医療関係者との連携を保たなければなりません3。
| 研修 | 行える特定行為 |
|---|---|
| 第1号研修(別表第1の基本研修+実地研修) | 5行為すべて |
| 第2号研修(別表第2) | 5行為のうち実地研修を修了した行為 |
| 第3号研修(別表第3) | 5行為のうち実地研修を修了した行為(特定の利用者に対する行為) |
認定証の交付申請には、修了した特定行為と研修修了を証する書類を添えて都道府県知事に提出します。心身の故障、刑罰、不正取得などの場合は交付されず、業務停止や返納を命じられることがあります36。
登録特定行為事業者(事業所側の要件)#
自らの事業またはその一環として、認定特定行為業務従事者が行う特定行為の業務を行おうとする者は、事業所ごとに所在地の都道府県知事の登録を受けなければなりません(附則第27条)。登録には第48条の3以下の規定が準用され、登録基準は次のとおりです2。
| 登録基準 |
|---|
| 医師、看護師その他の医療関係者との連携が確保されていること(厚生労働省令の基準に適合) |
| 特定行為の実施に関する記録が整備されていることその他安全かつ適正に実施するために必要な措置が講じられていること |
| 医療関係者による実施体制が充実しているため介護職員が行う必要性が乏しい場合に該当しないこと |
登録事項(氏名・名称、事業所の名称・所在地、業務開始予定日等)に変更があるときは届出が必要で、不要になったときは届出により登録の効力を失います。基準違反等があれば登録の取消しや業務停止を命じられます2。
算定の実務#
- 加算は喀痰吸引等を行った日に1日100単位です。同じ日に複数回行っても1日分です1。
- 事業所が登録特定行為事業者で、かつ行った従業者が認定特定行為業務従事者であることが要件のため、介護福祉士が行う場合は登録喀痰吸引等事業者(第48条の3)の登録が別に必要です2。
- 特定事業所加算(Ⅰ)は重度者対応要件に喀痰吸引等を必要とする者を含めて評価しているため、(Ⅰ)との併算定はできません。(Ⅱ)〜(Ⅳ)とは併算定できます1。
- 重度訪問介護で入院・入所中の利用者に支援する場合(告示ロ)は、病院等の医療スタッフが医療行為を行うため算定できません1。
- 処遇改善加算の対象範囲に含まれます(居宅介護は第1の4)1。
計算例#
その他地域(1単位10.00円)の居宅介護事業所(登録特定行為事業者・特定事業所加算(Ⅱ))で、認定特定行為業務従事者が区分6の利用者に身体介護1時間30分(669単位)を行い、その中で口腔内の喀痰吸引を行った日18。
| 項目 | 単位数 |
|---|---|
| 身体介護 1時間30分以上2時間未満 | 669単位 |
| 特定事業所加算(Ⅱ)10% | 669×10%=66.9→67単位 |
| 喀痰吸引等支援体制加算 | 100単位 |
| 合計 | 836単位(8,360円) |
特定事業所加算(Ⅰ)(20%・134単位)を算定する事業所なら喀痰吸引等支援体制加算は算定できず、合計は803単位になります1。
よくある質問#
Q. 介護福祉士が喀痰吸引を行った場合も算定できますか#
告示は「登録特定行為事業者の認定特定行為業務従事者」が行った場合を要件としています。介護福祉士が業として喀痰吸引等を行うには事業所が登録喀痰吸引等事業者の登録を受ける必要があり、加算の適用は指定権者に確認してください12。
Q. 第3号研修修了者はどの行為を算定できますか#
第3号研修は特定の利用者に対する実地研修を修了した行為に限られます。認定証に記載された特定行為の範囲内で行った場合が対象です6。
Q. 特定事業所加算(Ⅰ)を取っています。喀痰吸引等支援体制加算は#
算定できません。(Ⅱ)〜(Ⅳ)であれば併算定できます1。
Q. 1日に朝と夜の2回、吸引を行いました#
1日につき100単位です。回数に関わらず1日1回の算定です1。
Q. 登録特定行為事業者の登録には何が必要ですか#
事業所ごとに都道府県知事に申請し、医療関係者との連携確保、実施記録の整備と安全措置などの登録基準を満たす必要があります2。
Q. 生活介護の喀痰吸引等実施加算と同じですか#
別の加算です。生活介護等の通所系には令和6年度改定で喀痰吸引等実施加算(30単位・日)が新設されました。訪問系は喀痰吸引等支援体制加算(100単位・日)です15。
制度上の根拠#
- 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)第1の4、第2の5、第3の4、第4の4 喀痰吸引等支援体制加算1
- 社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第2条第2項、第48条の3・第48条の5、附則第10条・第11条・第27条23
- 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和62年厚生省令第49号)第1条・附則第4条(5行為)、第4条(研修区分と特定行為)6
- 留意事項通知 第二の2(1)⑭(喀痰吸引等を必要とする者の範囲・登録事業所に限る p.68)7
- 令和6年度報酬改定の主な改定内容 p.25、サービスコード表 分冊14、単価告示8
Footnotes#
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第1の4・第2の5・第3の4・第4の4 喀痰吸引等支援体制加算 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14
-
社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第2条第2項、第48条の3〜第48条の7、附則第27条(特定行為業務の登録) (https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000030) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
同法 附則第10条(認定特定行為業務従事者に係る特例)・第11条(認定特定行為業務従事者認定証) (https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000030) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード表(令和8年6月施行版)」分冊1 居宅介護 p.201(11-6100)、重度訪問介護 p.205(12-6100)、同行援護 p.372(15-6100) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696433.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の主な改定内容」p.2(喀痰吸引等実施加算【新設】30単位/日) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和62年厚生省令第49号)第1条・第4条・附則第4条第2項(口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養。第1号〜第3号研修) (https://laws.e-gov.go.jp/law/362M50000100049) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(1)⑭特定事業所加算の取扱い(喀痰吸引等の範囲、算入できる事業所 p.68) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準第一条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2
