居宅介護の通院等乗降介助は、従業者が自ら運転する車両への乗車・降車の介助を行い、併せて乗車前・降車後の屋内外の移動介助または通院先での受診等の手続・移動介助を行った場合に、片道につき102単位を算定する類型です1。運転そのものは報酬の対象ではなく、運賃は評価しません2。
一方で、自家用車で利用者を有償で運ぶ行為は道路運送法の規制を受けます。事業所が通院等乗降介助を提供するには、一般乗用旅客自動車運送事業の許可(いわゆる介護タクシー)、自家用有償旅客運送(福祉有償運送)の登録、または同法第78条第3号の許可のいずれかの法的根拠が必要で、留意事項通知も道路運送法等に抵触しないよう留意することを求めています23。本記事では、報酬上の算定ルールと、道路運送法上の3つの根拠、福祉有償運送の登録要件(対象者・運転者・対価・名簿)を整理します。
報酬上のルール(102単位・片道)#
告示の要件#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 102単位・1回につき(留意事項通知により片道ごと) |
| 行為 | 通院等のため、従業者が自ら運転する車両への乗車・降車の介助を行い、併せて(a)乗車前・降車後の屋内外における移動等の介助、または(b)通院先での受診等の手続・移動等の介助を行った場合 |
| 対象者 | 障害支援区分1以上 |
| 従業者 | 初任者研修課程修了者等は所定単位数。基礎研修課程修了者等・重度訪問介護研修修了者・旧外出介護研修修了者は90% |
サービスコードは通院等乗降介助(日中)が11-8111、基礎研修課程修了者等が11-8113(92単位)です5。
留意事項通知の取扱い#
- 事業所が通院等乗降介助を行う場合はこの単位数を算定し、身体介護中心型・通院等介助の所定単位数は算定できません。算定に当たっては道路運送法等他の法令に抵触しないよう留意します。運転時間中は算定対象ではなく、移送に係る経費(運賃)は評価しません2。
- 片道につき算定し、乗車と降車を分けて算定することはできません2。
- 複数の利用者に行った場合でも、乗降時に1対1で行えばそれぞれ算定できます(移送時間は極小化)2。
- 「乗降の介助」「移動等の介助」「受診等の手続・移動等の介助」は具体的に介助する行為が必要です。転倒しないよう側について歩き必要時だけ介護し常に見守る場合は対象ですが、乗降時に車両内から見守るだけでは対象になりません。乗降介助に加えて移動介助または受診手続の介助を行わなければ算定できません2。
- 一連のサービス行為(居室内の声かけ・説明、病院に行くための準備、院内の移動介助)は乗降介助に含まれ、別に通院等介助として算定できません。複数の従業者が交代しても1回です2。
- 適切なアセスメントを通じ、あらかじめ居宅介護計画に位置付けられている必要があります2。
通院等介助・身体介護との振り分け#
| 場面 | 算定 |
|---|---|
| 乗降介助の前後に連続して20〜30分程度以上の手間のかかる身体介護を行う | 所要時間に応じた通院等介助(身体介護を伴う場合)(乗降介助は算定不可)。例:寝たきりの利用者の更衣・排泄介助後、ベッドから車いすへ移乗し自動車へ移動介助 |
| 前後に外出に直接関連しない身体介護(入浴・食事介助など)に30分〜1時間以上を要しそれが中心 | 通算した所要時間で身体介護中心型(乗降介助・通院等介助(伴う)は算定不可)。通院等介助(身体介護を伴わない)の対象者には適用しない |
時間帯加算(早朝・夜間25%、深夜50%)は、サービス開始時刻が属する時間帯で算定します(運転時間を除く提供時間が15分未満なら多い方の時間帯)7。
運営上の規定(解釈通知)#
- 運営規程の「指定居宅介護の内容」には身体介護・通院等介助・家事援助・通院等乗降介助の内容を記載します8。
- 居宅介護は生活全般にわたる援助であり、通院等乗降介助に限定されたり偏ったりしてはなりません(基準省令第32条 介護等の総合的な提供)。通院等乗降介助を行う事業者の指定に当たり、都道府県知事は事業所の所在地の市町村に意見を求めます8。
- サービス提供責任者の配置の基礎となる事業の規模では、通院等乗降介助のみを利用した者は0.1人として計算します9。
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道路運送法上の3つの根拠#
自家用自動車(事業用自動車以外)は、災害時、自家用有償旅客運送、国土交通大臣の許可を受けた場合を除き、有償で運送の用に供してはなりません(道路運送法第78条)3。通院等乗降介助で利用者を運ぶ事業所は、次のいずれかの根拠が必要です。
| 根拠 | 概要 |
|---|---|
| 一般乗用旅客自動車運送事業の許可(第4条) | 他人の需要に応じ有償で自動車を使用して旅客を運送する事業は国土交通大臣の許可が必要。一般乗用(貸切の乗車定員未満)がタクシーで、いわゆる介護タクシーはこの許可を受けた事業者が運行する |
| 自家用有償旅客運送(福祉有償運送)の登録(第78条第2号・第79条) | 市町村・NPO法人その他省令で定める者が、国土交通大臣の登録を受けて行う。福祉有償運送は乗車定員11人未満の自動車で、他人の介助によらずに移動が困難で単独でタクシー等を利用できない障害者等を運送するもの |
| 有償運送の許可(第78条第3号) | 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合に、国土交通大臣の許可を受けて地域または期間を限定して行う |
どの根拠で運行するかは事業所の形態(営利法人か非営利法人か、使用する車両、運行の区域)によって異なり、具体的な手続は所在地の運輸支局に確認します。
福祉有償運送の登録要件#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録主体 | 市町村、NPO法人、一般社団法人・一般財団法人、認可地縁団体、農業協同組合、消費生活協同組合、医療法人、社会福祉法人、商工会議所、商工会、労働者協同組合、非営利の法人格のない社団(施行規則第48条) |
| 対象旅客 | 身体障害者、精神障害者、知的障害者、要介護認定・要支援認定を受けている者、基本チェックリスト該当者、その他肢体不自由・内部障害・知的障害・精神障害等の障害を有する者のうち、他人の介助によらずに移動することが困難で、単独でタクシー等の公共交通機関を利用することが困難な者およびその付添人。NPO法人等が行う場合は旅客の名簿に記載されている者 |
| 車両 | 乗車定員11人未満の自動車 |
| 運転者 | 第二種運転免許、または第一種運転免許(過去2年以内に停止されていない)+国土交通大臣が認定する講習の修了等。福祉自動車(車いす等のまま乗り込める装置のある車)以外で行う場合は、介護福祉士の登録または認定講習修了者等を乗務させる |
| 対価 | 燃料費その他の費用を勘案して実費の範囲内、合理的で旅客に明確、地域のタクシー運賃等を勘案して営利目的と認められない妥当な範囲で、地域公共交通会議等の協議が調っていること |
| 運送の区域 | 地域公共交通会議等の協議により定められた区域。発地・着地とも区域外の運送は不可 |
| 名簿・苦情 | NPO法人等は旅客の氏名・住所・運送を必要とする理由等を記載した名簿を事務所に備える。苦情処理体制を整備し記録を1年保存 |
| 登録申請 | 事務所・車両数・旅客の範囲・運行管理体制等を記載した申請書に、協議が調っていることを証する書類、運転者要件を証する書類、損害賠償措置を証する書類、名簿等を添付 |
登録を受けた自家用有償旅客運送者は、業務開始前に対価を定めて公示または説明し、運行管理・車両表示等の輸送の安全と利便の確保に関する事項を遵守しなければなりません。重大事故は国土交通大臣に届け出ます3。
報酬の対価と運送の対価は別#
通院等乗降介助の102単位は介助に対する報酬で、運転・運送の対価ではありません2。福祉有償運送の対価は実費の範囲内で地域公共交通会議等の協議を経て定め、タクシーは認可運賃です311。利用者から受領する運送の対価は、居宅介護の利用者負担とは別に、運営規程・重要事項説明書で明確にします8。
計算例#
その他地域(1単位10.00円)で、初任者研修修了者が自ら運転する福祉車両で利用者を病院に送り、乗車前の居室からの移動介助と降車後の受付手続の介助を行い、帰りも同様に行った場合12。
| 項目 | 単位数 |
|---|---|
| 通院等乗降介助(往路) | 102単位 |
| 通院等乗降介助(復路) | 102単位 |
| 合計 | 204単位(2,040円) |
運転中の時間は算定せず、運送の対価は道路運送法上の根拠に応じて別に受領します。同じ介助を基礎研修課程修了者が行うと92単位×2=184単位です5。1級地(居宅介護の単価11.20円)なら204単位は2,284円です12。
よくある質問#
Q. 車に乗せるだけで102単位を算定できますか#
できません。乗降の介助に加えて、乗車前・降車後の屋内外の移動介助、または通院先での受診手続・移動介助を行う必要があり、車両内から見守るだけでは対象外です2。
Q. 往復で2回算定できますか#
片道につき算定するため、往路と復路でそれぞれ算定できます。乗車と降車を分けて2回にすることはできません2。
Q. 運転中の時間は通院等介助として算定できますか#
できません。運転時間中は算定対象ではなく、運賃も評価しません2。
Q. 自家用車で有償送迎するには何が必要ですか#
一般乗用旅客自動車運送事業の許可、自家用有償旅客運送(福祉有償運送)の登録、または道路運送法第78条第3号の許可のいずれかが必要です。営利法人は福祉有償運送の登録主体に含まれていないため、形態に応じて運輸支局に確認してください310。
Q. 福祉有償運送の運転者に第二種免許は必須ですか#
第二種免許がなくても、第一種免許(2年以内に停止されていない)に加えて国土交通大臣が認定する講習を修了していれば運転できます。福祉自動車以外の車両で行う場合は介護福祉士等の乗務が必要です11。
Q. 乗降介助の前に入浴介助を1時間しました#
外出に直接関連しない身体介護に30分〜1時間以上を要しそれが中心なら、通算した所要時間で身体介護中心型を算定し、乗降介助は算定しません6。
Q. 通院等乗降介助だけを行う事業所は認められますか#
認められません。居宅介護は身体介護・家事援助を総合的に提供しなければならず、通院等乗降介助に限定されたり偏ったりしてはならないとされています8。
制度上の根拠#
- 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)第1の1ホ・注91
- 留意事項通知 第二の2(1)⑥通院等乗降介助、⑦⑧区分、⑨資格要件、⑬時間帯(p.49〜55・61〜62)2467
- 解釈通知(指定障害福祉サービス事業者等の指定に関する基準)第三 居宅介護(事業の規模の0.1人、運営規程、介護等の総合的な提供、市町村への意見照会)89
- 道路運送法(昭和26年法律第183号)第2条・第3条・第4条・第78条・第79条〜第79条の123、道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第48条・第49条・第51条〜第51条の311011
- サービスコード表 分冊1 居宅介護 p.1995、単価告示12
Footnotes#
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第1の1ホ・注9 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(1)⑥「通院等乗降介助」の単位を算定する場合(p.49〜51) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14
-
道路運送法(昭和26年法律第183号)第2条・第3条・第4条(一般旅客自動車運送事業の許可)・第78条(有償運送の禁止と例外)・第79条〜第79条の12(自家用有償旅客運送の登録・対価・安全・事故報告) (https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
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同通知 ⑨サービス区分及び居宅介護従業者の資格要件ごとの所定単位数等の取扱い ㈤通院等乗降介助(p.54〜55) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード表(令和8年6月施行版)」分冊1 居宅介護 通院等乗降介助 p.199(11-8111・8113) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696433.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
同通知 ⑦「通院等乗降介助」と「通院等介助(身体介護を伴う場合)」の区分、⑧「通院等乗降介助」等と「身体介護中心型」の区分(p.51〜52) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
同通知 ⑬早朝、夜間、深夜の居宅介護の取扱い(p.61〜62) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業者等の指定に関する基準について」(解釈通知)第三 居宅介護(運営規程の内容 p.52、介護等の総合的な提供・市町村への意見照会 p.54〜55) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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同解釈通知 第三 居宅介護 人員(事業の規模:通院等乗降介助のみを利用した者は0.1人として計算 p.25) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001472116.pdf) ↩ ↩2
-
道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第48条(登録主体)・第49条(福祉有償運送の定義と対象旅客)・第51条(種別)・第51条の3(申請書の添付書類)・第51条の4(運送の区域) (https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800075) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
同施行規則 第51条の15(対価の基準)・第51条の16(運転者の要件)・第51条の29(旅客の名簿)・第51条の30(苦情処理) (https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800075) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準第一条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2