居宅介護の特定事業所加算は、所定単位数に**(Ⅰ)20%・(Ⅱ)10%・(Ⅲ)10%・(Ⅳ)5%を上乗せする体制加算で、要件は告示543号第1号に体制要件(研修計画・会議・伝達と報告・健康診断・緊急時対応の明示・新任への同行研修)**、人材要件(介護福祉士30%以上等)、サービス提供責任者要件(3年以上の実務経験がある介護福祉士等・常勤2名以上)、重度者対応要件(区分5以上・喀痰吸引等・重症心身障害児等が30%以上)として定められています12。令和6年度改定で重度者対応要件に重症心身障害児・医療的ケア児が加わりました3。
重度訪問介護にも(Ⅰ)〜(Ⅲ)の特定事業所加算があり、常時派遣可能で深夜帯も提供していることや重度訪問介護6,000時間以上の実務経験など、居宅介護と要件が一部違います1。本記事では、告示と留意事項通知に沿って、区分ごとの要件の組み合わせ、各要件の具体的な満たし方、割合の計算方法、届出後の維持義務、令和9年3月までの経過措置を整理します。
全体像(居宅介護)#
| 区分 | 加算率 | 体制要件 (1)〜(5) | 人材要件 (6) | サービス提供責任者要件 (7)(8) | 重度者対応要件 (9) |
|---|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 所定単位数の20% | 全て | ○ | ○ | ○(30%以上) |
| (Ⅱ) | 10% | 全て | (6)または(7)かつ(8) | ― | |
| (Ⅲ) | 10% | 全て | ― | ― | ○(30%以上) |
| (Ⅳ) | 5% | (2)〜(5)+サービス提供責任者ごとの研修計画 | ― | 常勤サ責2人以下の事業所で基準を上回る常勤サ責を1人以上 | 区分4以上・喀痰吸引等・重症心身障害児等が50%以上 |
加算は1回につき所定単位数に乗じ、(Ⅰ)〜(Ⅳ)はいずれか1つしか算定できません。サービスコードは11-6010〜6013です24。喀痰吸引等支援体制加算は特定事業所加算(Ⅰ)を算定している場合は算定できません2。
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体制要件((1)〜(5))の具体的な満たし方#
| 要件 | 告示の内容 | 留意事項通知の取扱い |
|---|---|---|
| (1) 研修計画 | 登録型を含む全ての居宅介護従業者に対し、従業者ごとに研修計画を作成し、計画に従い研修(外部研修を含む)を実施または実施予定 | 事業所の研修内容の全体像と勤務体制の確保を定め、従業者ごとに個別具体的な目標・内容・研修期間・実施時期を定めた計画を策定する |
| (2)(一) 会議の定期開催 | 利用者情報・留意事項の伝達や技術指導を目的とした会議を定期的に開催 | サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて全ての従業者が参加。一堂に会する必要はなくサ責ごとのグループ別でよい。年間を通して時間帯を問わず提供している事業所は個別または数人ごとの開催でよい。「定期的」は概ね1月に1回以上。概要を記録。テレビ電話装置等の活用可 |
| (2)(二) 伝達と報告 | サ責が担当従業者に利用者情報・留意事項を文書等の確実な方法で伝達してから開始し、終了後に報告を受ける | 伝達事項は少なくともADLや意欲・主な訴えや要望・家族を含む環境・前回のサービス提供時の状況・その他必要な事項。前回の状況以外は変更時の記載で足りる。同一従業者が同一利用者に1日複数回訪問する場合は特段の事情がなければ指示・報告を省略可。サ責不在時は事前の一括指示と事後報告でよい。FAX・メール可。報告内容は文書で記録保存 |
| (3) 健康診断等 | 全ての従業者に定期的に実施 | 労働安全衛生法の「常時使用する労働者」に該当しない従業者も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施。新規に算定する場合は1年以内の実施計画があれば足りる |
| (4) 緊急時等の対応方法の明示 | 基準省令第31条第6号の緊急時等の対応方法を利用者に明示 | 対応方針・連絡先・対応可能時間等を記載した文書を利用者に交付し説明。重要事項説明書への明記で足りる |
| (5) 新任への同行研修 | 新規に採用した全ての従業者に熟練した従業者の同行による研修を実施 | サ責または同等と認められる従業者(利用者の障害特性を理解し適切な介護を提供でき、利用者から十分な評価がある者)が新規採用者に適切な指導を行う |
人材要件((6))#
次のいずれかを満たします1。
| 指標 | 基準 |
|---|---|
| 居宅介護従業者の総数に占める介護福祉士の割合 | 30%以上 |
| 従業者のうち介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者の割合 | 50%以上 |
| 前年度または算定月の前3月間のサービス提供時間のうち常勤の従業者による提供時間の割合 | 40%以上 |
割合は前年度(3月を除く)または届出月の前3月の1月当たりの実績の平均を常勤換算方法で算出します。資格・研修は各月の前月末時点で取得・修了している者を数えます。看護師等で1級課程の全科目免除により1級課程または初任者研修課程を修了したとされる者は含みます。「常勤の従業者」はサービス提供時間に含まれる全ての常勤の従業者で、事業所で定めた勤務時間(週32時間を下回る場合は32時間)の全てを勤務している者です6。
サービス提供責任者要件((7)(8))#
- (7) 全てのサービス提供責任者が、3年以上の実務経験を有する介護福祉士、または5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者であること。「実務経験」はサ責としての従事期間ではなく、在宅・施設を問わず介護に関する業務に従事した期間で、資格取得・研修修了前の期間も含みます16。
- (8) 基準省令第5条第2項により1人を超えるサービス提供責任者を配置する事業所では、常勤のサービス提供責任者を2名以上配置すること。常勤換算で非常勤サ責を配置する方法では満たせません16。
重度者対応要件((9)・(Ⅳ)の(4))#
前年度または算定月の前3月間の利用者の総数のうち、次の者の占める割合が**(Ⅰ)(Ⅲ)は30%以上、(Ⅳ)は50%以上**であること1。
| 対象 | (Ⅰ)(Ⅲ) | (Ⅳ) |
|---|---|---|
| 障害支援区分 | 区分5以上 | 区分4以上 |
| 喀痰吸引等を必要とする者 | ○(事業所が登録特定行為事業者である場合に限る) | ○ |
| 重症心身障害児・スコア表の医療行為を必要とする障害児 | ○(令和6年度追加) | ○ |
割合は利用実人員で算定し、喀痰吸引等を必要とする者や重度障害児を算入できるのは、社会福祉士及び介護福祉士法に基づき喀痰吸引等の業務の登録を受けている事業所に限ります7。
割合要件の計算と届出後の維持#
- 前年度の実績が6月に満たない事業所(新規開始・再開を含む)は、前年度実績による届出はできません7。
- 前3月の実績で届け出た事業所は、届出月以降も直近3月間の割合を毎月維持し、毎月記録します。下回った場合は直ちに変更の届出を提出します7。
- 令和6年3月31日時点で(Ⅰ)(Ⅲ)(Ⅳ)の適用を受けている事業所は、令和9年3月31日までの間、従前の例によることができます(経過措置)7。
重度訪問介護の特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)との違い#
| 項目 | 居宅介護 | 重度訪問介護 |
|---|---|---|
| 区分 | (Ⅰ)20%/(Ⅱ)10%/(Ⅲ)10%/(Ⅳ)5% | (Ⅰ)20%/(Ⅱ)10%/(Ⅲ)10%((Ⅳ)なし) |
| 会議 | 定期的な開催 | 定期的な開催またはサ責が従業者に個別に伝達・技術指導の研修を必要に応じて実施 |
| 伝達 | 開始前に文書等で伝達し終了後に報告 | 毎月定期的(前月末まで)に文書等で伝達し、変更時も伝達 |
| 追加の体制要件 | ― | (6) 常時派遣可能で、現に深夜帯も含めて提供(前月実績で夜間・深夜・早朝も提供、年間を通して時間帯を問わず派遣可能。提供できなくなったら直ちに届出) |
| サ責要件 | 3年以上の介護福祉士等 | 同左に加え、重度訪問介護従業者として6,000時間以上の実務経験を有する者も可 |
| 重度者対応要件(Ⅲ) | 区分5以上・喀痰吸引等・重症心身障害児等が30%以上 | 区分5以上・喀痰吸引等が50%以上 |
同行援護・行動援護にもそれぞれ特定事業所加算があり、同行援護では同行援護従業者養成研修修了者等の割合、行動援護では行動援護計画等の作成時の関係機関との連携など、サービス固有の要件があります19。
計算例#
その他地域(1単位10.00円)の居宅介護事業所が特定事業所加算(Ⅰ)を届け出ており、身体介護1時間(404単位)を日中に提供した場合210。
| 項目 | 単位数 |
|---|---|
| 身体介護 30分以上1時間未満 | 404単位 |
| 特定事業所加算(Ⅰ)20% | 404×20%=80.8→81単位 |
| 合計 | 485単位(4,850円) |
特定事業所加算は対象となる基本報酬の単位数に割合を乗じて算定します11。(Ⅱ)(Ⅲ)なら40単位、(Ⅳ)なら20単位です。
よくある質問#
Q. 登録ヘルパーにも研修計画と健康診断が必要ですか#
必要です。告示は登録型を含む全ての居宅介護従業者を対象にしており、健康診断は常時使用する労働者に該当しない従業者も含めて1年以内ごとに1回、事業主負担で実施します15。
Q. 会議は全員を集めなければいけませんか#
一堂に会する必要はなく、サービス提供責任者ごとにグループ別に開催できます。年間を通して時間帯を問わず提供している事業所は、個別または数人ごとの開催でよいとされています。概ね月1回以上で、概要を記録します5。
Q. 開業して3か月です。前3月の実績で届け出られますか#
届出月の前3月の実績で届け出ることができます。ただし届出後も直近3月間の割合を毎月維持し記録する必要があり、下回れば直ちに届出が必要です。前年度実績での届出は前年度の実績が6月以上ある事業所に限られます7。
Q. サービス提供責任者の「3年以上の実務経験」に介護福祉士取得前の期間は含まれますか#
含まれます。在宅・施設を問わず介護に関する業務に従事した期間で、資格取得や研修修了前の期間も含みます6。
Q. 喀痰吸引を必要とする利用者を割合に数えるには#
事業所が社会福祉士及び介護福祉士法に基づく喀痰吸引等の業務の登録(登録特定行為事業者)を受けている場合に限り算入できます17。
Q. 特定事業所加算(Ⅰ)と喀痰吸引等支援体制加算は併算定できますか#
できません。喀痰吸引等支援体制加算は特定事業所加算(Ⅰ)を算定している場合は算定しないとされています2。
制度上の根拠#
- 告示543号(こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める基準並びに厚生労働大臣が定める基準)第1号(居宅介護)、第5号(重度訪問介護)、第9号(同行援護)、第13号(行動援護)1
- 報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)第1の1注12、第1の4、第2の1注92
- 留意事項通知 第二の2(1)⑭特定事業所加算(p.62〜69)、(2)⑧(p.84〜86)5678、第二の1(1)端数処理(p.8)11
- 令和6年度報酬改定の主な改定内容 p.23、サービスコード表 分冊1 p.201・2054、単価告示10
Footnotes#
-
厚生労働省「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める基準並びに厚生労働大臣が定める基準」(平成18年厚生労働省告示第543号)第1号・第5号・第9号・第13号 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8497&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第1の1注12・第1の4・第2の1注9 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の主な改定内容」p.2(特定事業所加算の算定要件に重症心身障害児及び医療的ケア児への支援を追加) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「介護給付費等単位数サービスコード表(令和8年6月施行版)」分冊1 居宅介護 p.201(11-6010〜6013)、重度訪問介護 p.205(12-6010〜6012) (https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696433.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(1)⑭特定事業所加算の取扱い(研修計画・会議・伝達事項・健康診断・明示・同行研修 p.62〜66) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
同通知 ⑭(人材要件の割合の算出、実務経験、常勤サ責2名 p.66〜68) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
同通知 ⑭(重度者割合の算定、前年度6月未満、前3月実績の維持、令和9年3月31日までの経過措置 p.68〜69) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
同通知 第二の2(2)⑧特定事業所加算の取扱い(重度訪問介護 p.84〜86) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A VOL.2」問20(行動援護の特定事業所加算の関係機関連携) (https://www.mhlw.go.jp/content/001250243.pdf) ↩
-
厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準第一条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一単位の単価」(平成18年厚生労働省告示第539号) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2
-
同通知 第二の1(1)算定上における端数処理について(p.8:特定事業所加算は対象となる基本報酬の単位数に割合を乗じて算定) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
