就労移行支援の基本報酬 — 制度の全体像#
就労移行支援の基本報酬は、事業所の就職後の職場定着率に応じて区分が決まる成果連動型の報酬体系です。一般就労への移行実績と定着実績が高い事業所ほど、高い基本報酬が設定されています1。
基本報酬の区分は、以下の2つの要素で決定します。
- 就職後の職場定着率(7区分)
- 利用定員(定員20人以下・21人以上40人以下・41人以上60人以下・61人以上80人以下・81人以上)
就職後の職場定着率と報酬区分#
就職後の職場定着率は、前年度及び前々年度の利用定員の合計に対する、一般就労へ移行し6か月以上定着した者の割合で算出します1。
| 区分 | 就職後6月以上定着率 |
|---|---|
| (一) | 5割以上 |
| (二) | 4割以上5割未満 |
| (三) | 3割以上4割未満 |
| (四) | 2割以上3割未満 |
| (五) | 1割以上2割未満 |
| (六) | 0割超1割未満 |
| (七) | 0割 |
基本報酬の区分は上記の7区分で、就職後6月以上の定着率が高いほど高い単位数になります。
定着率の計算方法#
定着率 = 前年度及び前々年度で6か月以上職場定着した者の数 ÷ 前年度及び前々年度の利用定員の合計
- 算定対象期間は、前年度及び前々年度の2年度間です
- 「6か月以上定着」とは、就職日から6か月間継続して雇用されていることを確認できた者です
- 就労継続支援A型への移行は「一般就労」に含まれません2
基本報酬の単位数一覧(サービス費(Ⅰ))#
定着率区分(一)〜(七)と定員規模の組み合わせで、1日あたりの単位数が決まります1。
| 定着率区分 | 20人以下 | 21-40人 | 41-60人 | 61-80人 | 81人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| (一)5割以上 | 1,210 | 1,055 | 1,023 | 968 | 935 |
| (二)4割以上5割未満 | 1,020 | 881 | 857 | 816 | 779 |
| (三)3割以上4割未満 | 879 | 743 | 711 | 664 | 625 |
| (四)2割以上3割未満 | 719 | 649 | 614 | 562 | 516 |
| (五)1割以上2割未満 | 569 | 524 | 515 | 494 | 478 |
| (六)0割超1割未満 | 519 | 466 | 446 | 418 | 392 |
| (七)0割 | 479 | 432 | 413 | 387 | 364 |
単位は「単位/日」です。区分(一)・定員20人以下の1,210単位が最も高く、定着実績が報酬に直結する成果連動型であることがわかります。地域区分による上乗せが別途加算されます1。
新規事業所の取扱い#
開設から2年度以内の新規事業所は、就職実績がないため定着率の算出ができません。この場合、以下のルールが適用されます2。
- 開設1年度目 — 定着実績がないため、みなしの区分により算定します
- 開設2年度目以降 — 前年度までの実績に基づいて定着率区分を判定します
具体的なみなし区分の取扱いは、報酬告示・留意事項通知および指定権者の運用によります。開設当初は実績がないほど不利な区分になりやすいため、早期から就職・定着実績の積み上げが重要です。
報酬を最大化するための実務ポイント#
定着率の向上が最優先#
就労移行支援の報酬は、利用者を一般就労へ移行させるだけでなく、6か月以上の職場定着を実現することで初めて高い区分を維持できます。以下の取り組みが有効です。
- 就職前のマッチング精度の向上(職場見学・実習の充実)
- 就職後の定期的なフォローアップ(就労定着支援との連携)
- 企業側への障害特性の情報提供と職場環境調整の支援
就労移行支援体制加算の活用#
就労移行支援体制加算は、前年度に一般就労へ移行した利用者がいる場合に算定できる加算です。移行実績が多いほど高い単位数を算定でき、基本報酬と合わせて事業所の収益を大幅に向上させることができます1。
定員規模の戦略的設定#
基本報酬は定員規模が小さいほど単位数が高く設定されています。事業所の立地、利用見込み、スタッフ体制を総合的に勘案し、最適な定員規模を設定することが経営上重要です。
注意すべき減算#
以下の減算は基本報酬に直接影響するため、特に注意が必要です。
| 減算項目 | 減算内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 人員欠如減算 | 所定単位数の70% | 人員配置基準の未充足 |
| 個別支援計画未作成減算 | 所定単位数の70%(2月目まで)/ 50%(3月以上) | 計画未作成・更新漏れ |
| 開所時間減算 | 所定単位数の一定割合 | サービス提供時間が規定未満 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 1日5単位減算 | 委員会未設置・指針未整備 |
よくある質問#
Q. 就労継続支援A型への移行は定着率の計算に含まれますか?#
含まれません。定着率の計算における「一般就労」とは、雇用契約に基づく企業等での就労を指し、就労継続支援A型事業所での就労は対象外です2。
Q. 利用者が就職後すぐに離職した場合、定着率にどう影響しますか?#
6か月以上の職場定着が確認できなかった場合、定着率の分子(6か月以上定着した者の数)には算入されません。一方、分母は前年度及び前々年度の利用定員の合計(固定値)であるため、定着率が下がる要因となります2。
Q. 定着率が低い場合に報酬区分を改善する方法はありますか?#
定着率は前年度及び前々年度の実績で算出するため、直近の年度で定着実績を積み上げることで、翌年度以降に改善が見込めます。就労定着支援との連携や、就職前のアセスメント強化、企業とのマッチング精度向上などに取り組むことが効果的です。
Q. 年度途中で定着率が変動した場合、報酬区分は変わりますか?#
報酬区分は年度単位で決定されるため、年度途中で定着率が変動しても当該年度の区分は変わりません。次年度の届出時に改めて定着率を算出し、該当する区分で届け出ます1。
令和8年6月臨時改定の影響#
令和8年6月の臨時改定では、障害福祉サービス全体の基本報酬に1.8%相当の上乗せが行われています。就労移行支援の基本報酬もこの引上げの対象であり、上表の単位数は引上げ後の数値です1。
臨時改定は、物価高騰・賃上げ対応を目的とした時限的な措置ですが、処遇改善加算の拡充とあわせて、就労移行支援事業所の経営基盤の安定化に寄与するものとなっています。