就労移行支援とは#
就労移行支援は、一般企業への就労を希望する65歳未満の障害者に対し、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練、職場探し・職場定着のための支援を行う障害福祉サービスである1。
原則として利用期間は2年間(必要と認められる場合は最大1年の延長が可能)とされており、期間内に一般就労への移行を目指す時限的なサービスである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 65歳未満の障害者で一般就労を希望する者 |
| 利用期間 | 原則2年間(最大3年まで延長可) |
| 利用定員 | 10人以上(令和6年度改定で20人→10人に引下げ) |
| 雇用契約 | なし |
| 賃金/工賃 | 生産活動を行う場合は工賃支払い(義務ではない) |
| 報酬体系 | 就労定着率に応じた基本報酬 |
開業までの全体スケジュール#
就労移行支援事業所の開業には、6か月〜1年程度の準備期間が必要である。
| 時期 | タスク |
|---|---|
| 12〜10か月前 | 事業計画の策定、法人設立の準備 |
| 10〜8か月前 | 法人設立(定款認証・設立登記) |
| 8〜6か月前 | 物件の確保、設備の整備、人員の採用 |
| 6〜4か月前 | 事前相談(指定権者への相談) |
| 4〜3か月前 | 指定申請書類の作成・提出 |
| 3〜2か月前 | 審査・現地確認 |
| 1か月前 | 指定通知の受領 |
| 開業 | サービス提供開始 |
ステップ1:法人の設立#
障害福祉サービスの事業者指定を受けるためには法人格が必要である1。
法人形態の選択#
| 法人形態 | 設立費用 | 設立期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 約25万円 | 2〜3週間 | 信用力が高く資金調達しやすい |
| 合同会社 | 約10万円 | 1〜2週間 | 設立費用が安い |
| 一般社団法人 | 約12万円 | 2〜3週間 | 非営利目的で信頼性が高い |
| NPO法人 | 約0円 | 3〜6か月 | 設立費用不要だが認証に時間がかかる |
定款の事業目的には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」を含めること。
ステップ2:事業計画の策定#
就労移行支援の特性を踏まえた計画#
就労移行支援は利用期間が最大2年(延長含め3年)であるため、利用者は常に入れ替わる。安定経営のためには、以下の点を事業計画に盛り込む必要がある。
- 継続的な利用者確保:相談支援事業所やハローワークとの連携体制
- 就労定着率の維持:報酬体系が定着率に連動するため、支援の質の担保が重要
- 企業開拓:就労先となる企業とのネットワーク構築
収支計画のポイント#
就労移行支援の報酬は就労定着率に応じて5段階に分かれる2。
| 就労定着率 | 報酬の目安(定員20人以下) |
|---|---|
| 5割以上 | 高い報酬区分 |
| 4割以上5割未満 | やや高い |
| 3割以上4割未満 | 中間 |
| 2割以上3割未満 | やや低い |
| 2割未満 | 低い報酬区分 |
新規指定事業所は、開設後最初の就労定着率の算定までの間、**「定着率4割以上5割未満」**の報酬区分が適用される。
ステップ3:物件の確保と設備基準#
設備基準#
就労移行支援事業所の設備基準は以下の通りである1。
| 設備 | 要件 |
|---|---|
| 訓練・作業室 | 訓練に必要な広さ(目安:利用者1人あたり3㎡以上) |
| 相談室 | プライバシーに配慮した個室またはパーティション区画 |
| 洗面所・トイレ | 利用者の特性に応じたバリアフリー対応 |
| 多目的室 | 休憩や食事に使用できるスペース |
訓練プログラムに応じた設備#
就労移行支援ではプログラムの内容に応じた設備が必要となる。
- PC訓練を行う場合:PCと作業デスクを人数分
- ビジネスマナー訓練:ロールプレイ可能なスペース
- グループワーク:テーブルと椅子の配置が変更可能な部屋
ステップ4:人員配置基準#
就労移行支援事業所の人員配置基準は以下の通りである3。
| 職種 | 配置基準 | 要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1名以上(兼務可) | 管理業務に支障がなければ兼務可 |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1名以上 | 実務経験+研修修了が必要 |
| 職業指導員 | 総数で利用者6:1以上 | 就労に関する訓練の指導 |
| 生活支援員 | (職業指導員と合算) | 日常生活上の支援 |
| 就労支援員 | 利用者15:1以上 | 求職活動・職場開拓・定着支援 |
配置上の注意点#
- 職業指導員と生活支援員の合計で利用者6:1以上の配置が必要
- 職業指導員・生活支援員のそれぞれ1名以上は常勤であること
- 就労支援員は就労移行支援に特有の職種で、1名以上は常勤であること
- サービス管理責任者は常勤かつ専従が原則
ステップ5:指定申請の手続き#
事前相談#
自治体への事前相談では以下を確認する。
- 事業計画の概要と実施場所
- 人員配置の見込み
- 訓練プログラムの内容
- 企業との連携体制の見込み
必要書類#
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 指定申請書 | 事業所の基本情報 |
| 定款の写し | 法人の事業目的の確認 |
| 登記事項証明書 | 法人の登記情報 |
| 事業計画書 | 事業の概要・収支計画・訓練プログラム |
| 平面図 | 事業所の配置図 |
| 設備・備品一覧 | 訓練室・相談室等の設備 |
| 人員配置表 | 職員の配置計画 |
| 資格証明書 | サービス管理責任者・就労支援員等の資格 |
| 運営規程 | サービスの提供方法等 |
| 損害賠償保険証書 | 利用者の事故等に備えた保険 |
| 協力医療機関との契約書 | 緊急時の医療対応 |
ステップ6:報酬体系の理解#
就労定着率による報酬区分#
就労移行支援の基本報酬は就労定着率に基づいて決定される2。就労定着率とは、過去の利用者のうち一般就労に移行し、6か月以上継続して就労している者の割合である。
主な加算#
| 加算 | 単位数 | 内容 |
|---|---|---|
| 就労移行支援体制加算 | 利用者数×単位 | 一般就労への移行実績を評価 |
| 移行準備支援体制加算 | 41単位/日 | 施設外支援(職場実習等)の実施 |
| 就労支援関係研修修了加算 | 6単位/日 | 研修修了者の配置 |
| 地域連携会議実施加算 | 583単位/回 | 関係機関との支援計画会議 |
就労移行支援特有の注意事項#
利用期間の管理#
利用者の利用期間は原則2年間であるため、個別支援計画に明確な就労目標と支援スケジュールを設定し、計画的に支援を進める必要がある。
就労先の開拓#
事業所の評価は就労定着率に直結するため、企業との関係構築が経営の要となる。ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域の企業ネットワークとの連携体制を構築すること。
定員規模の見直し(令和6年度改定)#
令和6年度報酬改定により、利用定員規模が20人以上から10人以上に引き下げられた4。小規模での開業が可能になったが、経営の安定性確保には注意が必要である。
よくある質問#
Q. 就労移行支援とA型を併設できますか?#
多機能型事業所として併設可能である。ただし、それぞれの定員が10人以上、合計20人以上の定員が必要となる。
Q. 就労定着率が低いとどうなりますか?#
基本報酬が低い区分に分類される。定着率が極端に低い場合は経営が困難になるため、支援の質の維持・向上が重要である。
Q. 新規開業の場合、就労定着率はどう扱われますか?#
新規指定事業所は、最初の就労定着率の算定まで「4割以上5割未満」の報酬区分が適用される。
Q. 就労支援員はどのような資格が必要ですか?#
就労支援員に特定の資格要件はないが、企業での勤務経験や就労支援の実務経験を持つ人材が望ましい。