訂正(2026-10-19):旧版には、就労移行支援には無い「就労移行支援体制加算」を主な加算に挙げる、多機能型の定員を「それぞれ10人以上」とする、工賃の支払いを「義務ではない」とする、新規指定のみなし期間の起算点を「支援の提供開始」とする、就労支援員に「資格要件はない」とする誤りがありました。一次情報に沿って訂正しました。
就労移行支援とは#
就労移行支援は、一般企業への就労を希望する65歳未満の障害者(一定の要件を満たす65歳以上の者を含む)に対し、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練、職場探し・職場定着のための支援を行う障害福祉サービスである1。
原則として利用期間は2年間(必要と認められる場合は最大1年の延長が可能)とされており、期間内に一般就労への移行を目指す時限的なサービスである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 65歳未満の障害者で一般就労を希望する者(65歳に達する前5年間引き続き障害福祉サービスの支給決定を受け、65歳に達する前日に就労移行支援の支給決定を受けていた者は65歳以上も対象)2 |
| 利用期間 | 原則2年間(最大3年まで延長可) |
| 利用定員 | 10人以上(令和6年度改定で20人→10人に引下げ) |
| 雇用契約 | なし |
| 賃金/工賃 | 生産活動に従事している者には、生産活動の収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払う(義務)1 |
| 報酬体系 | 就労定着率に応じた基本報酬 |
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開業までの全体スケジュール#
就労移行支援事業所の開業には、6か月〜1年程度の準備期間が必要である。
| 時期 | タスク |
|---|---|
| 12〜10か月前 | 事業計画の策定、法人設立の準備 |
| 10〜8か月前 | 法人設立(定款認証・設立登記) |
| 8〜6か月前 | 物件の確保、設備の整備、人員の採用 |
| 6〜4か月前 | 事前相談(指定権者への相談) |
| 4〜3か月前 | 指定申請書類の作成・提出 |
| 3〜2か月前 | 審査・現地確認 |
| 1か月前 | 指定通知の受領 |
| 開業 | サービス提供開始 |
ステップ1:法人の設立#
障害福祉サービスの事業者指定を受けるためには法人格が必要である1。
法人形態の選択#
| 法人形態 | 設立費用 | 設立期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 約25万円 | 2〜3週間 | 信用力が高く資金調達しやすい |
| 合同会社 | 約10万円 | 1〜2週間 | 設立費用が安い |
| 一般社団法人 | 約12万円 | 2〜3週間 | 非営利目的で信頼性が高い |
| NPO法人 | 約0円 | 3〜6か月 | 設立費用不要だが認証に時間がかかる |
定款の事業目的には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」を含めること。
ステップ2:事業計画の策定#
就労移行支援の特性を踏まえた計画#
就労移行支援は利用期間が最大2年(延長含め3年)であるため、利用者は常に入れ替わる。安定経営のためには、以下の点を事業計画に盛り込む必要がある。
- 継続的な利用者確保:相談支援事業所やハローワークとの連携体制
- 就労定着率の維持:報酬体系が定着率に連動するため、支援の質の担保が重要
- 企業開拓:就労先となる企業とのネットワーク構築
開業予定地域の既存事業所の分布は、当社運営のはなえみ就労ナビ(例:東京都の就労移行支援事業所一覧)のような都道府県別一覧で確認でき、市場調査や競合把握に役立ちます。
収支計画のポイント#
就労移行支援の報酬は就労定着率に応じた区分に分かれる。定着率が高いほど基本報酬が高くなる仕組みで、区分は次のように細かく分かれている2。
| 就労定着率 | 報酬の目安(定員20人以下) |
|---|---|
| 5割以上 | 高い報酬区分 |
| 4割以上5割未満 | やや高い |
| 3割以上4割未満 | 中間 |
| 2割以上3割未満 | やや低い |
| 1割以上2割未満 | 低い |
| 0割超1割未満 | さらに低い |
| 定着者なし(0) | 最も低い報酬区分 |
新規に指定を受けた事業所は、指定を受けた日から2年間は、就労定着者の割合が**「3割以上4割未満」**(100分の30以上100分の40未満)の場合とみなして基本報酬を算定する2。詳しい扱い(1年以上2年未満の事業所の選択肢等)は「就労移行支援の基本報酬」で解説している。
ステップ3:物件の確保と設備基準#
設備基準#
就労移行支援事業所の設備基準は以下の通りである1。
| 設備 | 要件 |
|---|---|
| 訓練・作業室 | 訓練又は作業に支障がない広さを有すること(具体的な「1人あたり◯㎡」といった面積基準は定められていません) |
| 相談室 | 室内における談話の漏えいを防ぐための間仕切り等を設けること |
| 洗面所・便所 | 利用者の特性に応じたものであること |
| 多目的室 | 設置が必要(相談室等と、支援に支障がなければ兼用可) |
訓練プログラムに応じた設備#
就労移行支援ではプログラムの内容に応じた設備が必要となる。
- PC訓練を行う場合:PCと作業デスクを人数分
- ビジネスマナー訓練:ロールプレイ可能なスペース
- グループワーク:テーブルと椅子の配置が変更可能な部屋
ステップ4:人員配置基準#
就労移行支援事業所の人員配置基準は以下の通りである3。
| 職種 | 配置基準 | 要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1名以上(兼務可) | 管理業務に支障がなければ兼務可 |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1名以上 | 実務経験+研修修了が必要 |
| 職業指導員 | 総数で利用者6:1以上 | 就労に関する訓練の指導 |
| 生活支援員 | (職業指導員と合算) | 日常生活上の支援 |
| 就労支援員 | 利用者15:1以上 | 求職活動・職場開拓・定着支援(基礎的研修の受講が必須。令和9年度までは経過措置)4 |
配置上の注意点#
- 職業指導員と生活支援員の合計で利用者6:1以上の配置が必要
- 職業指導員又は生活支援員のうち、いずれか1名以上が常勤であること(両職種それぞれに常勤を求めるものではありません)
- 就労支援員は就労移行支援に特有の職種(配置基準は利用者15:1以上)。基準省令上、就労支援員に常勤を義務づける規定はありません
- サービス管理責任者は常勤かつ専従が原則
ステップ5:指定申請の手続き#
事前相談#
自治体への事前相談では以下を確認する。
- 事業計画の概要と実施場所
- 人員配置の見込み
- 訓練プログラムの内容
- 企業との連携体制の見込み
必要書類#
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 指定申請書 | 事業所の基本情報 |
| 定款の写し | 法人の事業目的の確認 |
| 登記事項証明書 | 法人の登記情報 |
| 事業計画書 | 事業の概要・収支計画・訓練プログラム |
| 平面図 | 事業所の配置図 |
| 設備・備品一覧 | 訓練室・相談室等の設備 |
| 人員配置表 | 職員の配置計画 |
| 資格証明書 | サービス管理責任者・就労支援員等の資格 |
| 運営規程 | サービスの提供方法等 |
| 損害賠償保険証書 | 利用者の事故等に備えた保険 |
| 協力医療機関との契約書 | 緊急時の医療対応 |
ステップ6:報酬体系の理解#
就労定着率による報酬区分#
就労移行支援の基本報酬は就労定着率に基づいて決定される2。就労定着率は、前年度と前々年度の就労定着者(一般就労に移行し、6月に達した者)の合計数を、前年度と前々年度の利用定員の合計数で除した割合である3。
主な加算#
| 加算 | 単位数 | 内容 |
|---|---|---|
| 移行準備支援体制加算 | 41単位/日 | 前年度に施設外支援を実施した利用者の数が利用定員の50%を超える場合 |
| 就労支援関係研修修了加算 | 6単位/日 | 研修修了者の配置 |
| 地域連携会議実施加算 | (Ⅰ)583単位/回・(Ⅱ)408単位/回 | (Ⅰ)はサビ管、(Ⅱ)はサビ管以外が会議に出席。1月1回・年4回が限度 |
「就労移行支援体制加算」は生活介護・自立訓練・就労継続支援A型・B型の加算で、就労移行支援にはない。就労移行支援では、一般就労への移行実績は基本報酬の就労定着率の区分で評価される2。
就労移行支援特有の注意事項#
利用期間の管理#
利用者の利用期間は原則2年間であるため、個別支援計画に明確な就労目標と支援スケジュールを設定し、計画的に支援を進める必要がある。
就労先の開拓#
事業所の評価は就労定着率に直結するため、企業との関係構築が経営の要となる。ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域の企業ネットワークとの連携体制を構築すること。
定員規模の見直し(令和6年度改定)#
令和6年度報酬改定により、利用定員規模が20人以上から10人以上に引き下げられた5。小規模での開業が可能になったが、経営の安定性確保には注意が必要である。
よくある質問#
Q. 就労移行支援とA型を併設できますか?#
多機能型事業所として併設可能である。多機能型の利用定員の合計が20人以上の場合、就労移行支援は6人以上、A型・B型は10人以上でよい6。
Q. 就労定着率が低いとどうなりますか?#
基本報酬が低い区分に分類される。定着率が極端に低い場合は経営が困難になるため、支援の質の維持・向上が重要である。
Q. 新規開業の場合、就労定着率はどう扱われますか?#
新規に指定を受けた日から2年間は、就労定着者の割合が「3割以上4割未満」(100分の30以上100分の40未満)の場合とみなして基本報酬を算定する2。
Q. 就労支援員はどのような資格が必要ですか?#
国家資格等の要件はないが、令和7年度から始まった基礎的研修(高齢・障害・求職者雇用支援機構等が実施)の受講が必須とされている。令和9年度までは経過措置として、受講していなくても指定基準を満たすものとして扱われる4。
Footnotes#
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「障害福祉サービス等報酬告示」就労移行支援サービス費の算定構造 (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8477&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
厚生労働省「障害福祉サービス等報酬に関する留意事項通知」p.262-272(就労移行支援の人員配置基準) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.58(就労支援員・就労定着支援員の基礎的研修の受講必須化と令和9年度までの経過措置) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.29(就労移行支援事業の利用定員規模の見直し) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩
-
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第174号)第89条(多機能型の利用定員) (https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100174) ↩