令和8年6月施行 — 障害福祉報酬改定の3つのポイント#
令和8年6月1日から、障害福祉サービス等報酬の臨時改定が施行されます。今回の改定は「物価高騰への対応」と「福祉人材の確保」を目的としており、以下の 3つの柱 で構成されています。12
- 福祉・介護職員等処遇改善加算の加算率引上げ(全サービス対象)
- 就労継続支援B型の基本報酬区分の見直し(中間区分の新設)
- 新規事業所に係る報酬の適正化(基本報酬の引下げ特例)
本記事では、就労系サービス(就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援)に焦点を当てて、改定内容を解説します。
🎬 動画でサクッと見る:この記事の要点は YouTube動画(約6分) でも解説しています。
処遇改善加算の加算率引上げ#
改定の概要#
令和6年度改定で一本化された「福祉・介護職員等処遇改善加算」の加算率が、物価上昇と人材確保の困難さを踏まえて引き上げられました。あわせて、生産性向上に取り組む事業所への上乗せ区分(「ロ」区分)が新設されています。1
新加算率テーブル(就労系5サービス)#
以下が令和8年6月施行の確定加算率です。1
| サービス | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 就労選択支援 | 11.5% | 11.9% | 11.3% | 11.7% | 9.8% | 8.1% |
| 就労移行支援 | 11.5% | 11.9% | 11.3% | 11.7% | 9.8% | 8.1% |
| 就労継続支援A型 | 10.8% | 11.2% | 10.6% | 11.0% | 9.1% | 7.5% |
| 就労継続支援B型 | 10.5% | 10.9% | 10.3% | 10.7% | 8.8% | 7.4% |
| 就労定着支援 | 11.5% | 11.9% | — | — | 9.8% | 8.1% |
※ 就労定着支援はⅡイ・Ⅱロの算定がありません(0/1000)。
※ 就労選択支援と就労移行支援は同一の加算率です。
「イ」と「ロ」の違い#
今回の改定で、全ての加算区分に 「イ」と「ロ」の2種類 が設けられました。1
| 区分 | 要件 | 差分 |
|---|---|---|
| イ(従来型) | 処遇改善加算の基本要件を満たす | — |
| ロ(上乗せ型) | 上記に加え、生産性向上・協働化に係る取組を実施 | +0.4pt |
「ロ」は「イ」の要件に上乗せして算定する上位区分で、令和8年度特例要件 を満たした場合に算定できます。具体的には、次の①②のいずれかに加えて③を満たすことが要件です。1
- 職場環境等要件のうち 生産性向上に関する取組を5つ以上 実施していること
- または 社会福祉連携推進法人に所属 していること
- かつ、加算Ⅱロ相当の加算額の 1/2以上を月給(基本給又は毎月支払われる手当) で配分していること
※ Ⅲ・Ⅳには「ロ」区分はありません。従来どおり1区分のみです。
施設版(指定障害者支援施設が行う場合)#
指定障害者支援施設が行う就労系サービスは、通常版とは別の加算率が設定されており、区分は Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅲ・Ⅳ のみ(Ⅱイ・Ⅱロは適用なし) です。具体的な加算率は算定構造の該当箇所をご確認ください。
令和6年度からの引上げ幅#
令和6年度改定時の加算率と比較した引上げ幅は以下のとおりです。2
| サービス | 令和6年度 Ⅰ | 令和8年6月 Ⅰイ | Ⅰロ | 引上げ幅(イ) | 引上げ幅(ロ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 10.3% | 11.5% | 11.9% | +1.2pt | +1.6pt |
| 就労継続支援A型 | 9.6% | 10.8% | 11.2% | +1.2pt | +1.6pt |
| 就労継続支援B型 | 9.3% | 10.5% | 10.9% | +1.2pt | +1.6pt |
| 就労定着支援 | 10.3% | 11.5% | 11.9% | +1.2pt | +1.6pt |
全サービスで イ区分+1.2ポイント、ロ区分+1.6ポイント の引上げです。
B型 基本報酬区分の基準の見直し#
改定の背景 — 算定式変更による「区分の想定外の上昇」への対応#
令和6年度改定で平均工賃月額の算定式が見直された結果、平均工賃月額が 約6千円上昇 し、想定以上に高い報酬区分に該当する事業所の割合が増加しました。これに対応するため、令和8年6月改定では基本報酬区分の 基準額を一律3千円引き上げ ます(引上げ幅は上昇分約6千円の1/2)。2
なお、区分判定に用いる平均工賃月額は、次の算定式(令和6年度改定で導入)で求めます。2
平均工賃月額 = 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月
激変緩和のための3つの配慮措置#
基準額の引上げで報酬区分が下がる事業所が生じるため、以下の配慮措置が講じられます。2
- 令和6年度改定前後で区分が上がっていない事業所 は、見直しの 適用対象外(従前の報酬区分をそのまま適用)
- 見直しにより区分が下がる事業所は、基本報酬の 減少額が3%程度に収まるよう、中間的な区分(A〜F)を新設
- 令和6年度改定で単価を引き下げた 区分七と八の間の基準額は据え置き(引き上げない)
改定後の区分・単位数(定員20人以下・サービス費(Ⅰ))#
配慮措置の対象となる事業所に適用される、中間区分を含む改定後の区分・単位数は次のとおりです。太字が今回新設された中間区分です。12
| 区分 | 平均工賃月額 | 単位数 |
|---|---|---|
| (一) | 4万8千円以上 | 837単位 |
| (A)新設 | 4万5千円以上4万8千円未満 | 812単位 |
| (二) | 3万8千円以上4万5千円未満 | 805単位 |
| (B)新設 | 3万5千円以上3万8千円未満 | 781単位 |
| (三) | 3万3千円以上3万5千円未満 | 758単位 |
| (C・四) | 2万8千円以上3万3千円未満 | 738単位 |
| (D・五) | 2万3千円以上2万8千円未満 | 726単位 |
| (E)新設 | 2万円以上2万3千円未満 | 705単位 |
| (六) | 1万8千円以上2万円未満 | 703単位 |
| (F)新設 | 1万5千円以上1万8千円未満 | 682単位 |
| (七) | 1万円以上1万5千円未満 | 673単位 |
| (八) | 1万円未満 | 590単位 |
※ 上記は定員20人以下の場合です。定員規模(21〜40人、41〜60人…)が大きくなるほど単位数は下がります(例:定員21〜40人の最上位区分=746単位)。
影響のイメージ#
例えば、平均工賃月額が4万6千円の事業所(区分が上がった=改定対象の場合)は、改定前は(一)「4万5千円以上」で837単位でしたが、基準額の引上げにより、改定後は新設された中間区分 (A)「4万5千円以上4万8千円未満」の812単位 になります(▲25単位・約3%減)。この中間区分A〜Fが、基準額引上げによる報酬の落差を約3%以内に抑える役割を果たします。
一方、令和6年度改定前後で区分が上がっていない事業所は適用対象外 で、従前の区分・単位数がそのまま維持されます。どの区分に該当するかは、前年度の平均工賃月額の実績に基づいて決まります。2
新規事業所に係る報酬の適正化#
対象サービスと引下げ率#
開設間もない事業所について、支援実績が蓄積されていない段階で高い報酬が算定されるケースへの対応として、基本報酬の引下げ措置が設けられます。2
| 対象サービス | 引下げ率 | 実質引下げ率 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 984/1000 | ▲1.6% |
| 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 972/1000 | ▲2.8% |
| 児童発達支援 | 988/1000 | ▲1.2% |
| 放課後等デイサービス | 982/1000 | ▲1.8% |
※ 就労系サービスで対象となるのは B型のみ です。A型・移行・定着支援・選択支援は対象外です。
配慮措置(引下げ対象外となるケース)#
以下に該当する場合は、引下げ措置が適用されません(従前の報酬単価で算定)。2
重度障害者への配慮:
- 医療連携体制加算(Ⅳ)を算定する事業所
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定する事業所
- 高次脳機能障害者支援体制加算を算定する事業所
地域への配慮:
- 離島・中山間地域(特別地域加算の対象地域)にある事業所
- 自治体が客観的に必要であるとして設置する事業所(公募による設置、自治体からの補助を受けた設置等)
その他 — 就労系サービスへの影響まとめ#
| サービス | 基本報酬 | 処遇改善加算 | 新規事業所引下げ |
|---|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 区分見直し | 引上げ | 対象 |
| 就労継続支援A型 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労移行支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労定着支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労選択支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
各サービスとも、処遇改善加算の加算率引上げは共通して適用されます。基本報酬の区分見直しと新規事業所引下げは B型のみ が対象です。
動画で振り返る#
この記事の3つのポイントは、対話形式の動画でも解説しています。通勤時間などの「ながら確認」にどうぞ。
▶️ 【令和8年6月】障害福祉の報酬改定、変わる3つのポイントをサクッと解説(YouTube)