1. 障害者雇用促進法とは — 「共生社会」実現のための雇用義務#
障害に関係なく、希望や能力に応じて誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります1。この義務の根拠となっているのが「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づく法定雇用率制度です。
ここで注意したいのは、就労継続支援A型・B型や就労移行支援といった障害福祉サービスは「障害者総合支援法」に基づく別制度だという点です。障害者雇用促進法は「事業主が障害者を雇用する側の義務」を定めるものであり、福祉サービス事業所であっても、常用労働者数が一定規模を超えれば自らも法定雇用率の対象事業主になり得ます。自事業所の義務の有無を確認するとともに、支援している利用者が一般企業へ就職した後にどう扱われるかを理解するうえでも、両制度の違いを押さえておく必要があります。
2. 法定雇用率の推移と現在値(2.7%)#
民間企業の法定雇用率は、以下のとおり段階的に引き上げられています1。
| 区分 | 令和5年度 | 令和6年4月〜 | 令和8年7月〜 |
|---|---|---|---|
| 民間企業の法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
令和8年7月に2.7%への引上げが施行済みとなっており、就労系事業所が支援する利用者の企業就職・雇用継続を考えるうえでも、現時点の基準として押さえておく必要があります。
なお、国や地方公共団体等についても令和8年7月1日から法定雇用率が引き上げられており、民間企業とは異なる水準が設定されています2。
| 区分 | 令和8年7月1日〜の法定雇用率 |
|---|---|
| 国・地方公共団体等 | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.9% |
3. 対象となる事業主の範囲(37.5人以上)#
法定雇用率の適用対象となる事業主の範囲(常用労働者数の基準)も、法定雇用率の引上げにあわせて段階的に拡大されています1。
| 区分 | 令和5年度 | 令和6年4月〜 | 令和8年7月〜 |
|---|---|---|---|
| 対象事業主の範囲(常用労働者数) | 43.5人以上 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
令和8年7月からは、常用労働者数が37.5人以上の事業主が対象となりました。従来は対象外だった規模の事業所も新たに対象に含まれている可能性があるため、自事業所の常用労働者数を確認しておくことが重要です。
4. 障害者のカウント方法における特例(精神障害者・重度障害者・短時間労働者)#
短時間労働者のカウント方法について、近年、精神障害者・重度障害者を対象とした特例が設けられています。
- 精神障害者の算定特例の延長(令和5年4月以降):週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できます3。
- 週20時間未満の一部労働者の算定(令和6年4月以降):週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者については、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになりました3。
これらはいずれも、対象者を限定した特例的な措置として案内されているものです。短時間労働者全般に共通する基本的なカウントルール(週所定労働時間30時間以上を1カウント、20時間以上30時間未満を原則0.5カウントとする等の基本枠組み)については、今回参照した資料では数値の逐語確認ができなかったため、本記事では扱いません。詳細な算定を行う際は、事業所管轄のハローワークまたは厚生労働省の公式資料で最新の算定ルールを確認してください。
5. 除外率制度の見直し(令和7年4月・10ポイント引下げ)#
除外率制度は、業種の特性上、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用義務を軽減する仕組みです。この除外率が、令和7年4月1日から、各除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられました。これまで除外率が10%以下であった業種は、除外率制度の対象外となっています4。
引下げ後の除外率は以下のとおりです4。
| 除外率 | 対象業種 |
|---|---|
| 5% | 非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) |
| 10% | 建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業(信書便事業を含む) |
| 15% | 港湾運送業、警備業 |
| 20% | 鉄道業、医療業、高等教育機関、介護老人保健施設、介護医療院 |
| 25% | 林業(狩猟業を除く) |
| 30% | 金属鉱業、児童福祉事業 |
| 35% | 特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) |
| 40% | 石炭・亜炭鉱業 |
| 45% | 道路旅客運送業、小学校 |
| 50% | 幼稚園、幼保連携型認定こども園 |
| 70% | 船員等による船舶運航等の事業 |
なお、除外率については、民間企業と同様に、国・地方公共団体等についても令和7年4月から10ポイント引き下げられています2。
6. 障害者雇用納付金制度:令和8年度申告での算定率の切り替え#
障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を達成していない事業主から納付金を徴収する仕組みです。今回参照した資料では、納付金の具体的な金額や調整金の算定式そのものは確認できなかったため、本記事ではその詳細には触れません。
一方で、法定雇用率の切り替え時期をまたぐ申告年度における算定率の扱いについては、次のとおり案内されています。令和8年度分の障害者雇用納付金の申告(申告期間:令和9年4月1日から同年5月17日までの間)については、**令和8年6月以前の期間は2.5%、令和8年7月以降の期間は2.7%**で算定することとされています5。年度の途中で法定雇用率が切り替わったことにより、1年分の申告の中で適用率が2段階になる点に注意が必要です。
7. 事業主に求められる実務対応#
法定雇用率の引上げにあわせて、事業主には以下の対応が求められています。
- 障害者雇用状況の報告:毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークへ報告する必要があります。令和8年6月1日時点の報告では、法定雇用率2.5%での不足の有無などが確認されます6。
- 障害者雇用推進者の選任(努力義務):障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任が努力義務とされています6。
- 障害者雇用相談援助事業の活用:障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で、雇入れやその雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助を受けられる事業が開始されています7。
- 各種助成金の拡充・新設:職務転換のための能力開発や設備・施設の設置等への助成、障害者介助等助成金の拡充(専門職・能力開発担当者の配置、介助者等の能力開発への経費助成の追加)、職場適応援助者助成金の拡充(助成単価・支給上限額・利用回数の改善等)、職場実習・見学の受入れ助成の新設などが行われています7。
助成金の詳細な要件・金額は、事業所管轄のハローワークまたは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の公式情報で確認してください。
よくある質問#
Q. 法定雇用率はいつから2.7%になりましたか?#
民間企業の法定雇用率は、令和5年度の2.3%から令和6年4月に2.5%へ、そして**令和8年7月に2.7%**へと段階的に引き上げられました1。あわせて対象事業主の範囲も、常用労働者数43.5人以上→40.0人以上→37.5人以上へと拡大されています1。
Q. 令和8年度分の障害者雇用納付金は、どの法定雇用率で算定すればよいですか?#
令和8年度分の申告(申告期間:令和9年4月1日から同年5月17日までの間)については、令和8年6月以前の期間は2.5%、令和8年7月以降の期間は2.7%で算定します5。年度の途中で法定雇用率が切り替わっているため、申告時に期間ごとの適用率を区別する必要があります。
Q. 国や地方公共団体、教育委員会の法定雇用率も同じですか?#
異なります。令和8年7月1日から、国・地方公共団体等の法定雇用率は3.0%、都道府県等の教育委員会は**2.9%**に引き上げられています。除外率についても、民間企業と同様に令和7年4月から10ポイント引き下げられています2。
Q. 精神障害者や短時間労働者のカウント方法に変更はありますか?#
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者については、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく1カウントとして算定できる特例が延長されています(令和5年4月以降)。また、週10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者は、令和6年4月以降、0.5カウントとして算定できます3。
Q. 障害者雇用について事業主が相談できる窓口はありますか?#
各種助成金や職場定着に向けた人的支援など様々な支援制度が利用できます。サポートを実施している機関は複数あるため、まずは事業所管轄のハローワークに相談することが案内されています7。
まとめ#
障害者雇用促進法に基づく法定雇用率は、令和8年7月に2.7%(民間企業)へ引き上げられ、対象事業主の範囲も常用労働者数37.5人以上まで拡大されました。あわせて、除外率の引下げ、精神障害者・重度障害者に関するカウント特例、障害者雇用納付金の算定率切り替えなど、複数の制度変更が同時期に施行されています。福祉サービス事業所自身が対象事業主に該当するかどうかの確認はもちろん、支援する利用者の一般企業就職後の処遇を理解するうえでも、現行制度の内容を正確に押さえておくことが実務上重要です。
Footnotes#
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厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.1(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.2(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.2(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.1(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.2(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.1(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2
-
厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」p.2(URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf) ↩ ↩2 ↩3