高次脳機能障害者支援体制加算とは#
高次脳機能障害者支援体制加算は、令和6年度(2024年度)報酬改定で新設された加算です。高次脳機能障害を有する利用者に対して適切な支援体制を整えている事業所を評価するもので、高次脳機能障害支援者養成研修を修了した職員を配置していることが要件となります1。
高次脳機能障害は外見からは分かりにくい障害であり、就労系サービスや生活介護等の現場でも支援の困難さが指摘されてきました。本加算の新設により、専門的な知識を持つ職員の配置が報酬上評価されることになりました。
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加算の単位数(サービス種別ごとの違い)#
高次脳機能障害者支援体制加算は、サービスの種類によって単位数・区分が異なります。通所系・入所系サービスと相談支援では算定構造が大きく異なるため、注意が必要です。
通所系・入所系サービス(生活介護・就労系等)#
通所系・入所系サービスでは、加算区分は1種類のみです。
| 対象サービス | 単位数 |
|---|---|
| 生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、施設入所支援 等 | 41単位/日 |
相談支援(計画相談支援・障害児相談支援)#
相談支援では、加算が2区分に分かれています。
| 加算区分 | 単位数 | 要件の概要 |
|---|---|---|
| 加算(Ⅰ) | 60単位 | 研修修了者を配置・公表し、高次脳機能障害を有する利用者に対して現に支援を実施している場合 |
| 加算(Ⅱ) | 30単位 | 研修修了者を配置し、その旨を公表している場合(対象者がいない場合) |
このように、通所系・入所系・共同生活援助では日額41単位の1区分、相談支援では60単位・30単位の2区分です。相談支援の単位期間と要件の詳細は計画相談支援の報酬告示(本記事の一次情報には未収載)で確認してください1。
対象サービス#
本加算は、以下の幅広いサービスが対象です。
- 生活介護
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労選択支援
- 施設入所支援
- 共同生活援助(グループホーム)
- 計画相談支援
- 障害児相談支援
就労系サービス(就労移行支援・就労継続支援A型・B型)も対象に含まれているため、高次脳機能障害を有する利用者を受け入れている就労系事業所にとっても重要な加算です。
算定要件#
通所系・入所系サービスの要件#
通所系・入所系サービスで41単位/日を算定するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 利用者割合要件: 高次脳機能障害を有する利用者が、全利用者の30%以上であること
- 職員配置要件: 高次脳機能障害支援者養成研修(地域生活支援事業として都道府県が実施する研修、またはこれに準ずるものとして都道府県知事が定める研修)を修了し修了証明書の交付を受けた者で、専ら高次脳機能障害者の支援に従事する従業者を、基準上の人員配置に加えて、常勤換算で利用者数を50で除した数以上配置していること2
- 公表要件: 研修修了者を配置している旨を公表していること
利用者割合30%以上という要件があるため、高次脳機能障害を有する利用者が一定数以上在籍している事業所が対象となります。
相談支援の要件#
加算(Ⅰ)(60単位)の要件:
- 高次脳機能障害支援者養成研修を修了した相談支援専門員を配置していること
- その旨を公表していること
- 当該相談支援専門員が、高次脳機能障害を有する利用者に対して現にサービス提供を行っていること
加算(Ⅱ)(30単位)の要件:
- 高次脳機能障害支援者養成研修を修了した相談支援専門員を配置していること
- その旨を公表していること
相談支援では、加算(Ⅰ)は「現に支援を実施」していることが追加要件であり、加算(Ⅱ)は「配置+公表」のみで算定できます。(Ⅰ)と(Ⅱ)は事業所の状態(対象者がいるかどうか)で分かれる区分で、どちらか一方を算定します。
高次脳機能障害とは#
高次脳機能障害とは、脳の損傷(脳卒中、交通事故による外傷性脳損傷、脳腫瘍、低酸素脳症等)により生じる認知機能の障害です。主に以下のような症状があります。
- 記憶障害: 新しいことが覚えられない、約束を忘れてしまう
- 注意障害: 集中力が続かない、複数のことを同時に処理できない
- 遂行機能障害: 計画を立てて段取りよく実行できない
- 社会的行動障害: 感情のコントロールが困難、対人関係でトラブルが生じやすい
- 半側空間無視: 片側の空間にある物に気づかない
外見からは障害が分かりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれています。就労場面では、作業手順の記憶や時間管理、対人コミュニケーションなどに困難が生じることがあり、専門的な支援体制が求められます。
算定上の注意点#
- 通所系サービスでは加算区分は1つのみです。相談支援のような(Ⅰ)・(Ⅱ)の区分はありません
- 通所系サービスでは**利用者割合要件(30%以上)**があるため、高次脳機能障害の利用者が少ない事業所では算定が困難です
- 研修修了者の配置は常勤換算方法で、利用者数を50で除した数以上(利用者50人なら1.0以上)を、基準上の人員配置に加えて専従で配置します2
- 「公表」の方法は、事業所のパンフレットやホームページ等での掲載が想定されています
- 令和6年度の新設加算であるため、体制届の届出が必要です
- 対象となる高次脳機能障害者は、①支給決定における医師の意見書、②精神障害者保健福祉手帳の申請における医師の診断書、③その他医師の診断書等(原則として主治医が記載)のいずれかに高次脳機能障害の診断の記載があることで確認します3
よくある質問#
Q. 高次脳機能障害支援者養成研修はどこで受講できますか?#
地域生活支援事業として都道府県が実施する「高次脳機能障害支援者養成研修」(令和6年2月19日付け障障発0219第1号・障精発0219第1号通知に基づく研修)か、これに準ずるものとして都道府県知事が認める同等の内容の研修です。開催時期は都道府県に確認してください。修了の確認は原則として修了証書によります3。
Q. 利用者の30%要件は毎月判定するのですか?#
告示は「厚生労働大臣が定める基準に適合すると認められた利用者の数が利用者の数の100分の30以上」と定めるだけで、前年度実績で判定するとは書いていません2。多機能型事業所等は複数サービスの利用者全体で30%と加配数(合計利用者数÷50)を満たせば足ります3。判定に用いる利用者数の取り方は指定権者の届出様式に従ってください。
Q. 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できますか?#
相談支援の(Ⅰ)と(Ⅱ)は利用者ごとに使い分ける区分ではなく、事業所に対象者がいて現に支援しているか((Ⅰ))、配置と公表のみか((Ⅱ))という事業所の状態で決まる区分です。通所系・入所系・共同生活援助には(Ⅰ)・(Ⅱ)の区分がなく41単位の1区分です1。
Q. サービス管理責任者が研修を修了している場合も対象になりますか?#
施設基準は「専ら高次脳機能障害者の支援に従事する従業者を、基準上の人員配置に加え、常勤換算で利用者数÷50以上配置」することです。基準上の配置として数えているサービス管理責任者を兼ねて数える根拠は告示・通知にありません。別枠の専従職員として配置する必要があります2。
Footnotes#
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.11(高次脳機能障害を有する障害者への支援体制の充実) (https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf) ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「厚生労働大臣が定める施設基準」(平成18年厚生労働省告示第551号)第六号ホ(生活介護の高次脳機能障害者支援体制加算の施設基準:地域生活支援事業の高次脳機能障害支援者養成に関する研修又は都道府県知事が定める研修の修了者で専ら高次脳機能障害者の支援に従事する従業者を、人員配置に加え、常勤換算方法で利用者の数を50で除して得た数以上配置、公表。他サービスは準用)および報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)各サービスの高次脳機能障害者支援体制加算(利用者の100分の30以上) (https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8504&dataType=0&pageNo=1) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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厚生労働省「令和6年度 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(6)⑦ 高次脳機能障害者支援体制加算の取扱い(p.125〜126:研修の要件、高次脳機能障害者の確認方法、届出、修了証書、多機能型の取扱い) (https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf) ↩ ↩2 ↩3
