緊急時受入加算とは#
緊急時受入加算は、短期入所事業所が緊急に利用が必要な障害者を受け入れた場合に算定できる加算です。地域生活を送る障害者やその家族にとって、緊急時のセーフティネットとなる短期入所の体制整備を評価するものです1。
令和6年度(2024年度)報酬改定では、緊急時の受入体制をより手厚く評価するため、大幅な見直しが行われました。
加算区分と単位数#
| 加算区分 | 単位数 | 要件の概要 |
|---|---|---|
| 緊急時受入加算(Ⅰ) | 270単位/日 | 緊急利用枠の居室を確保し、24時間の連絡体制を整備 |
| 緊急時受入加算(Ⅱ) | 500単位/日 | 緊急利用者を実際に受け入れた場合(体制未整備でも算定可能) |
令和6年度改定による変更点#
令和6年度改定では、緊急時受入加算の算定構造が大きく見直されました。
改定前後の比較#
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 緊急時受入加算(旧) | 180単位/日 | → 加算(Ⅰ) 270単位/日に拡充 |
| 新区分 | なし | 加算(Ⅱ) 500単位/日を新設 |
改定前は「緊急時受入加算」として180単位/日の1区分のみでしたが、令和6年度改定で以下の2点が変更されました。
- 従来の緊急時受入加算(180単位)が加算(Ⅰ)として270単位に引き上げ(90単位の増額)
- 新たに加算(Ⅱ)(500単位/日)が新設され、緊急時に実際に利用者を受け入れた実績を高く評価
この改定により、緊急時の受入体制の「整備」(加算(Ⅰ))と「実施」(加算(Ⅱ))がそれぞれ評価される構造になりました。
対象サービス#
- 短期入所(福祉型・医療型)
本加算は短期入所に特化した加算です。就労継続支援や生活介護等の通所系サービスでは算定できません。ただし、短期入所を併設している事業所では、短期入所部分で算定が可能です。
算定要件#
加算(Ⅰ)(270単位/日)の要件#
加算(Ⅰ)は、緊急時の受入体制を常時整備している事業所が算定できます。以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 緊急時の受入れに対応するための居室を確保していること(専用居室の確保)
- 24時間の連絡体制を整備していること(夜間・休日を含む)
- あらかじめ緊急時の受入れに関する指針を定めていること
- 地域の相談支援事業所等との連携体制を構築していること
- 緊急利用に関する協議の場に参加していること
「居室の確保」とは、緊急時にいつでも受入れが可能なよう、空床を確保しておくことを意味します。定員を超えた受入れではなく、定員内で緊急利用枠を設けることが求められます。
加算(Ⅱ)(500単位/日)の要件#
加算(Ⅱ)は、緊急に利用が必要と認められる障害者を実際に受け入れた場合に算定できます。
- 緊急に利用が必要と認められる障害者に対して、指定短期入所を実際に提供したこと
- 加算(Ⅰ)の体制要件を満たしていない事業所でも、緊急受入れの実績があれば算定可能
加算(Ⅱ)は体制整備が不十分な事業所でも、緊急対応の実績に応じて算定できる点が特徴です。ただし、加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は同一日・同一利用者に対して併算定はできません。
「緊急」の判断基準#
以下のような場合に「緊急」と判断されます。
- 介護者の急病・事故等により在宅での介護が困難になった場合
- 障害者本人の行動障害の悪化等により緊急の保護が必要な場合
- 介護者の冠婚葬祭等でやむを得ず介護ができない場合
- 虐待の疑いがある場合の一時保護
- 災害等により居住環境が著しく悪化した場合
事前に利用が計画されているレスパイト利用(定期的な家族の休息目的の利用)は「緊急」には該当しません。あくまで予期しない事態への対応が前提です。
加算拡充の背景#
令和6年度改定で緊急時受入加算が大幅に拡充された背景には、障害者の地域移行の進展に伴う緊急時のセーフティネット強化の必要性があります。グループホームや単身生活への移行が進む中で、介護者の急病や本人の状態悪化に対応できる短期入所の体制整備が課題となっていました。
特に、従来の加算単位数(180単位/日)では、緊急利用枠として空床を確保するコストに見合わないという事業所側の指摘がありました。加算(Ⅰ)の270単位への引き上げと、加算(Ⅱ)の500単位での新設は、こうした現場の声を反映した改定です。
算定上の注意点#
- 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は同一日に併算定できません。居室を確保している体制で緊急受入れを行った場合は、(Ⅰ)または(Ⅱ)のいずれかを算定します
- 緊急時受入加算は7日間を限度として算定できます(やむを得ない事情がある場合は14日間まで延長可能)
- 体制届の届出が必要です。加算(Ⅰ)は体制要件を満たした時点で届出し、加算(Ⅱ)は実績に応じて算定します
- 定員超過利用減算が適用されている場合でも、緊急時受入加算は算定可能です(ただし、一定の条件あり)
- 市区町村が発行する「緊急短期入所ネットワーク」等の登録事業所であることが求められる場合もあります。自治体ごとの運用を確認してください
よくある質問#
Q. 就労系サービスの事業所は算定できますか?#
就労系サービス(就労移行支援・就労継続支援A型・B型)の報酬としては算定できません。ただし、同一法人で短期入所を併設している場合は、短期入所部分で本加算を算定できます。
Q. 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)はどちらを算定すべきですか?#
体制要件を整備している事業所で緊急受入れを行った場合、加算(Ⅰ)(270単位)と加算(Ⅱ)(500単位)のどちらかを算定します。実際に緊急利用者を受け入れた日は、単位数の高い加算(Ⅱ)(500単位)を算定する方が有利です。
Q. 24時間連絡体制とは具体的にどのような体制ですか?#
夜間・休日を含めて、緊急時に連絡を受けられる体制を整備していることを意味します。携帯電話等による連絡体制や、夜間オンコール体制などが該当します。必ずしも事業所に職員が常駐している必要はありません。
Q. 緊急受入れの日数上限はありますか?#
原則として7日間が上限です。ただし、やむを得ない事情がある場合は最大14日間まで延長が認められます。延長の際は、相談支援事業所等と連携し、利用者の今後の支援方針を協議する必要があります。
Footnotes#
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厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.9(短期入所における緊急時の受け入れを更に評価) ↩