【2025年】目標工賃達成指導員配置加算で報酬アップ!算定のポイント#
就労継続支援A型・B型事業所の経営者、管理者、サービス管理責任者の皆様、日々の事業運営、誠にお疲れ様です。利用者の皆様の就労支援と工賃向上は、事業所の社会的使命であり、同時に安定した事業運営の鍵でもあります。
本稿では、皆様の事業所がより高い報酬を得ながら、利用者の工賃向上に貢献できる重要な加算の一つである「目標工賃達成指導員配置加算」について、2025年度の動向を踏まえつつ、その算定要件と実務上のポイントを徹底解説します。この加算を適切に算定することで、事業所の経営安定と利用者への質の高い支援体制の強化を同時に実現しましょう。
1. 目標工賃達成指導員配置加算とは?#
目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援A型およびB型事業所において、利用者の工賃水準の向上を組織的に支援するため、専門の指導員を配置することを評価する加算です。この加算の目的は、単に指導員を置くだけでなく、その指導員が中心となって工賃向上計画の策定・実行・評価を行い、事業所全体の工賃向上への意識と体制を強化することにあります。
1-1. 加算の目的#
- 工賃水準の向上: 利用者がより高い工賃を得られるよう、事業所として具体的な計画に基づき支援体制を強化する。
- 事業所の専門性の強化: 工賃向上に特化した専門人材を配置し、生産活動の効率化や新たな仕事の開拓、利用者のスキルアップ指導などを推進する。
- 経営の安定化: 加算による報酬増を通じて、質の高い支援提供のための資源を確保し、事業所の安定的な運営に貢献する。
1-2. 対象サービス#
- 就労継続支援A型事業所
- 就労継続支援B型事業所
2. 2025年度における加算の重要性#
2025年度は、社会保障制度全体の持続可能性が問われる中で、障害福祉サービスにおいても「質の評価」や「成果へのインセンティブ」がより一層重視される傾向にあります。特に就労継続支援においては、利用者の工賃向上が主要な成果指標の一つであり、この目標工賃達成指導員配置加算は、その成果を直接的に評価するものです。
今後の報酬改定においても、工賃向上への取り組みは継続的に評価される可能性が高く、この加算を算定し、工賃向上への体制を確立することは、事業所の将来的な競争力強化にも繋がります。
3. 算定要件の詳細#
目標工賃達成指導員配置加算を算定するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
3-1. 人員配置要件#
目標工賃達成指導員は、以下の要件を満たす必要があります。
- 配置数: 常勤換算で1人以上を配置すること1。
- 専従・兼務: 目標工賃達成指導員は、その業務に専従することが原則です。特に、職業指導員や生活支援員との兼務は認められていません1。サービス管理責任者など他の職務との兼務については、自治体の判断による場合があるため、必ず事前に指定権者にご確認ください。兼務が認められる場合でも、目標工賃達成指導員としての業務時間が明確に区分され、工賃向上業務に支障がないことが大前提となります。
- 資格要件: 特に定められた必須資格はありませんが、工賃向上に向けた企画・実行能力、利用者への指導能力が求められるため、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、作業療法士、理学療法士などの資格を持つ者や、企業等での生産管理・経営・営業経験者、あるいは職業指導員等の実務経験者が望ましいとされます。
3-2. 業務内容要件#
目標工賃達成指導員は、以下の業務を継続的かつ計画的に実施することが求められます。
図: 目標工賃達成指導員の業務は多岐にわたり、計画から改善までのサイクルを回すことが求められます。
- 工賃向上計画の策定: 事業所の利用者全体の工賃向上に向けた具体的な計画(目標設定、達成期間、具体的な取り組み内容、評価方法など)を策定します2。この計画は、事業所の特性や利用者の状況を踏まえた実現可能なものである必要があります。
- 生産活動の企画・改善: 新たな作業内容の検討、既存作業の効率化、品質管理の徹底、生産性の向上に資する改善活動を行います。
- 販路開拓・受注活動: 新規の受注獲得、販売先の開拓、営業戦略の立案・実行など、事業収入を増やすための活動を行います。
- 利用者のスキルアップ指導: 利用者の作業能力や生産性の向上に向けた個別の支援計画の立案、具体的な作業指導、訓練の実施を行います。
- 工賃実績の管理・分析: 定期的に工賃実績を集計・分析し、計画との比較や課題の特定を行います。
- 計画の見直しと改善: 工賃向上計画の実施状況や実績を踏まえ、必要に応じて計画を見直し、改善策を講じます。
- 関係機関との連携: 地域の企業、ハローワーク、他事業所など、工賃向上に資する関係機関との連携を図ります。
3-3. その他必要な要件#
- 工賃向上計画の策定と公表: 上記の業務内容として述べた工賃向上計画を策定し、事業所内での周知はもちろんのこと、利用者やその家族、関係機関に対し、適切な方法で公表している必要があります3。
- 実績報告: 定期的に(通常は年度末に)工賃向上計画の達成状況や具体的な取り組み内容、工賃実績などを自治体に報告することが求められます4。
- 運営規程への明記: 事業所の運営規程に、目標工賃達成指導員の配置とその役割について明記していることが望ましいとされます。
4. 単位数と報酬額の目安(令和6年度報酬改定準拠)#
目標工賃達成指導員配置加算の単位数は、令和6年度(2024年度)の報酬改定により定められています。2025年度も原則としてこの改定内容が継続適用されます。 以下は、定員20名等の標準的な条件に基づいた試算シミュレーションです。
4-1. 就労継続支援A型の場合#
対象外 ※本加算(目標工賃達成指導員配置加算)は、原則として就労継続支援B型を対象とした加算です。A型事業所は最低賃金の支払いが義務付けられているため、当該加算の対象とはなりません(経営改善計画等による別体系の評価となります)。
4-2. 就労継続支援B型の場合#
- 単位数: 89単位/日(※令和6年度改定実績値)
- 報酬額の目安: 利用定員20名、開所日数20日、地域区分10円/単位と仮定した場合、月額 約356,000円 の報酬増が見込めます。
【計算式】 89単位 × 10円 × 20名 × 20日 = 356,000円
【注意点】
- 上記は「常勤換算方法で1人以上配置」などの要件を満たした場合の標準的な単位数(89単位)を用いた試算です。
- 実際の報酬額は、事業所の地域区分(1単位=10円~11.40円等)や、利用者の実利用日数によって変動します。
- 加算の算定には、工賃向上計画の作成・公表および配置職員の実績記録が必須となります。
5. 算定のポイントと実務上の注意点#
この加算を効果的に活用し、継続的に算定していくためには、以下のポイントと実務上の注意点を押さえておく必要があります。
5-1. 適切な人材の確保と育成#
- 選定基準の明確化: 工賃向上に情熱を持ち、企画力、実行力、コミュニケーション能力のある人材を選定しましょう。
- 専門性の向上: 研修会への参加や情報収集を通じて、工賃向上に関する専門知識やノウハウを継続的に習得させる体制を整えることが重要です。
5-2. 計画的な工賃向上支援#
- 具体的かつ実現可能な計画: 抽象的な目標ではなく、「いつまでに、何を、どれくらい」達成するかを具体的に盛り込んだ計画を策定します。
- PDCAサイクルの実践: 計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)のサイクルを回し、常に工賃向上への取り組みをブラッシュアップしていく姿勢が求められます。
5-3. 他の加算との関連性#
- 一体的な取り組み: 例えば、生産活動を効率化するための「施設外就労加算」や、利用者の就労意欲を高める「ピアサポート実施加算」など、他の加算と連携して取り組むことで、相乗効果が期待できます。総合的な視点で事業所の報酬体系を検討しましょう。
5-4. 指導員間の連携と情報共有#
- チームアプローチ: 目標工賃達成指導員だけでなく、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員など、全職員が工賃向上への意識を共有し、連携して取り組むことが成功の鍵です。定期的な会議や情報共有の場を設けましょう。
5-5. 記録の重要性#
- 詳細な記録: 目標工賃達成指導員の業務内容、工賃向上計画の進捗状況、利用者の作業指導記録、受注活動の記録など、すべての活動を詳細に記録することが必須です。これらは実地指導時の重要な証拠となります5。
- 工賃実績の管理: 毎月の工賃実績を正確に集計し、計画と比較分析できる体制を整えましょう。
5-6. 実地指導対策#
- 準備の徹底: 実地指導では、工賃向上計画の妥当性、指導員の業務実態、記録の整合性などが重点的に確認されます。日頃からこれらの書類を整備し、いつでも提示できるように準備しておきましょう。
6. よくある質問(FAQ)#
Q1: 目標工賃達成指導員は他の職務と兼務できますか?#
A1: 原則として専従が求められ、特に職業指導員や生活支援員との兼務は認められていません1。サービス管理責任者など他の職務との兼務の可否は自治体の判断によりますので、必ず事前に指定権者にご確認ください。兼務が認められる場合でも、業務時間が明確に区分され、工賃向上業務に十分な時間を確保している実態がなければ、実地指導で指摘を受け、加算の返還を求められる可能性があります6。
Q2: 目標工賃達成指導員に必須の資格はありますか?#
A2: 特定の必須資格は定められていません。しかし、工賃向上計画の策定や実行、生産管理、営業活動、利用者指導といった業務内容を鑑みると、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、あるいは企業等での実務経験者など、関連する知識や経験を持つ人材が望ましいとされています。
Q3: 算定開始までに何を準備すればよいですか?#
A3: まずは、目標工賃達成指導員となる人材を確保し、その役割と業務内容を明確にします。次に、事業所の実情に合わせた具体的な「工賃向上計画」を策定します。そして、運営規程への記載(推奨)、関係職員への周知、必要な記録様式の整備などを進めます。最後に、自治体への届出を忘れずに行いましょう。
Q4: 工賃向上計画は毎年見直す必要がありますか?#
A4: はい、原則として毎年見直すことが推奨されます。工賃実績の変動、利用者の状況変化、市場の動向などを踏まえ、計画が常に実態に即しているかを確認し、必要に応じて目標や取り組み内容を修正していく必要があります。PDCAサイクルを回す中で、計画も継続的に改善していくことが重要です。
Q5: 工賃目標が達成できなかった場合、加算は取り消されますか?#
A5: 目標が達成できなかったからといって、直ちに加算が取り消されるわけではありません。重要なのは、工賃向上計画を誠実に実行し、目標達成に向けた努力を行っているか、また、目標未達の原因を分析し、次年度の計画に反映させているかという「プロセス」です1。計画策定から実行、評価、改善の一連のプロセスが適切に行われていれば、加算の継続は可能と考えられます。ただし、長期間にわたり著しい未達が続く場合は、指導の対象となる可能性はあります。
7. まとめ#
目標工賃達成指導員配置加算は、就労継続支援事業所が利用者の工賃向上という重要なミッションを達成し、同時に安定した事業運営を実現するための強力なツールです。2025年度においてもその重要性は変わらず、むしろより質の高い取り組みが求められることでしょう。
本稿で解説した算定要件、実務上のポイント、そしてよくある質問への回答を参考に、皆様の事業所がこの加算を適切に算定し、利用者の皆様がより豊かな生活を送れるよう、質の高い支援を提供し続けていかれることを心より願っております。日々の記録を徹底し、計画的な取り組みを進めることが、加算の継続的な算定、ひいては事業所の発展に繋がります。
出典
Footnotes#
-
豊橋市「障害福祉サービス事業所等 加算・減算適用要件等一覧【詳細マニュアル】」(https://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/109613/kasanmanyuaru.pdf) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
兵庫県「工賃向上」を支援するための計画の作り方」(https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf10/shuroushien/documents/hyogokouchinkeikaku2.pdf) ↩
-
大阪府「「工賃向上計画」を作成しましょう」(https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/109630/1-2_2kouchinkeikaguyou6-8.pdf) ↩
-
青森県「令和6年度障害福祉サービス事業者等集団指導資料」(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/files/11_r6sidou.pdf) ↩
-
佐賀県「令和5年度障害福祉サービス等実地指導における主な指導事項について」(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003110118/3_110118_up_6ncdsyg0.pdf) ↩
-
沖縄県「令和7年度(前期)障害福祉サービス事業者等集団指導について」(https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/488/01.r7syudan.pdf) ↩