生活介護の基本報酬は、障害支援区分・利用定員・所要時間の3つの軸の組み合わせで決まります。このうち実務で最も誤解が多いのが所要時間です。所要時間は「その日に実際に事業所にいた時間」ではなく、生活介護計画に位置付けた標準的な時間に基づいて算定します1。しかも時間区分は7段階あり、5〜6時間と6〜7時間の間で単価が大きく跳ねる構造になっています。本記事では、令和6年度改定で導入されたこの3軸構造と、標準的な時間の決め方・調整できる5つのケースを、留意事項通知と報酬算定構造で整理します。
基本報酬を決める3つの軸#
生活介護サービス費の基本報酬は、次の3軸で決まります1。
| 軸 | 区分数 | 内容 |
|---|---|---|
| 障害支援区分 | 5区分 | (一)区分6/(二)区分5/(三)区分4/(四)区分3/(五)区分2以下2 |
| 利用定員 | 10区分 | 5人以下/6〜10/11〜20/21〜30/31〜40/41〜50/51〜60/61〜70/71〜80/81人以上2 |
| 所要時間 | 7区分 | 3時間未満/3〜4/4〜5/5〜6/6〜7/7〜8/8〜9時間2 |
留意事項通知は「生活介護サービス費の基本報酬については、利用者の障害支援区分、利用定員及び所要時間に応じた報酬単価を算定することとする」と定めています1。
対象者の要件#
そもそも生活介護を利用できるのは、次のいずれかに該当する人です1。
| 利用者の年齢 | 必要な障害支援区分 | 施設入所支援を併せて受ける場合 |
|---|---|---|
| 50歳未満 | 区分3以上 | 区分4以上 |
| 50歳以上 | 区分2以上 | 区分3以上 |
このほか、第556号告示第2号から第5号までのいずれかに該当する者であって上記以外の者も対象となります1。年齢が50歳以上になると必要な区分が1つ下がる点、施設入所支援を併用する場合は1つ上がる点が要点です。
所要時間は「実際にいた時間」ではない#
ここが生活介護の報酬で最も重要な論点です。留意事項通知は次のように明記しています1。
所要時間による区分については、現に要した時間により算定されるのではなく、生活介護計画に基づいて行われるべき指定生活介護等を行うための標準的な時間に基づき算定されるものである。この所要時間については、原則として、送迎に要する時間は含まないものである。
つまり、報酬区分を決めるのは「その日に何時間いたか」ではなく、生活介護計画に位置付けた標準的な時間です。日々の出退所時刻で区分が上下するわけではありません。
計画と実態がズレ続けたら計画を見直す#
一方で、標準的な時間を実態とかけ離れた設定にしてよいという意味ではありません。通知は「生活介護計画に位置づけられた標準的な時間と実際のサービス提供時間が合致しない状況が続く場合には、生活介護計画の見直しを検討すること」としています1。
計画の標準時間は、運営指導で必ず突き合わせられる箇所です。実績と乖離したまま長期間放置すると、報酬区分の妥当性を説明できなくなります。
やむを得ず短くなった日の扱い#
当日の道路状況や天候、本人の心身の状況などのやむを得ない事情で、その日の所要時間が計画上の標準的な時間より短くなった場合は、計画に位置付けられた標準的な時間に基づき算定して差し支えないとされています1。日々の変動でいちいち区分を落とす必要はありません。
標準的な時間に加えられる5つのケース#
「標準的な時間」には、一定の条件下で時間を加えることが認められています。留意事項通知のア〜オを整理すると次のとおりです1。
| # | ケース | 加えられる時間 | 条件 |
|---|---|---|---|
| ア | やむを得ない事情でその日が短くなった | (計画の標準時間で算定してよい) | 道路状況・天候・本人の心身の状況等 |
| イ | 遠方の利用者の送迎 | 1時間 | 必要なサービスを提供する事業所が居住地域になく、送迎が往復3時間以上となる場合 |
| ウ | 障害特性で短時間利用にならざるを得ない | 1日2時間以内 | 医療的ケアスコア該当者・重症心身障害者・行動関連項目10点以上・盲ろう者等で、サービス提供時間が6時間未満になる場合。準備・申し送り・主治医への伝達事項の整理等に実際に要した時間 |
| エ | 送迎時の居宅内介助 | 1日1時間以内 | 着替え、ベッド・車椅子への移乗、戸締り等。生活介護計画に位置付けた上で |
| オ | 介護者の就業等で実際が長引いた | (実際に要した時間で算定可) | 居宅で介護を行う者等の就業その他の理由により標準的な時間より長時間に及び、日常生活上の世話を行う場合 |
イの「往復3時間」の数え方に注意#
通知は片道・往復の定義を明示しています。片道とは送迎車両等が事業所を出発してから戻ってくるまでに要した時間であり、往復は往路(片道)と復路(片道)の送迎に要する時間の合計です1。
「利用者宅までの所要時間」ではなく「事業所を出て戻るまで」で数える点が、直感とずれやすいところです。
ウには手続き要件がある#
ウの2時間加算には前提条件があります。やむを得ない理由について「利用者やその家族の意向等が十分に勘案された上で、サービス担当者会議において検討され、サービス等利用計画等に位置付けられていることが前提」とされています1。事業所の判断だけで加えることはできません。
6時間の壁|時間区分による単価の段差#
時間区分による単価差は一定ではありません。定員5人以下・区分6のケースで7区分を並べると、段差の位置がはっきりします2。
| 所要時間 | 単位数(1日につき) | 前区分との差 |
|---|---|---|
| 3時間未満 | 669単位 | — |
| 3時間以上4時間未満 | 836単位 | +167 |
| 4時間以上5時間未満 | 1,003単位 | +167 |
| 5時間以上6時間未満 | 1,170単位 | +167 |
| 6時間以上7時間未満 | 1,628単位 | +458 |
| 7時間以上8時間未満 | 1,672単位 | +44 |
| 8時間以上9時間未満 | 1,733単位 | +61 |
3時間未満から5〜6時間までは1区分あたり+167単位で等間隔ですが、5〜6時間から6〜7時間に上がるところだけ+458単位と3倍近い段差があります。一方、6〜7時間より上は+44・+61単位と伸びが鈍ります。
この構造は、前掲の**ウ(6時間未満にならざるを得ない利用者に1日2時間以内を加算できる特例)**と対応しています。障害特性でどうしても6時間未満になる利用者について、この段差の影響を緩和する仕組みだと読めます。
障害支援区分による差#
同じ条件(定員5人以下・8時間以上9時間未満)で障害支援区分だけを変えると、次のようになります2。
| 障害支援区分 | 単位数(1日につき) |
|---|---|
| (一)区分6 | 1,733単位 |
| (二)区分5 | 1,312単位 |
| (三)区分4 | 927単位 |
| (四)区分3 | 837単位 |
| (五)区分2以下 | 767単位 |
区分6と区分5の差が421単位と最も大きく、区分4以下は差が縮まります。区分6の利用者が多い事業所ほど基本報酬が厚くなる設計です。
なお、上記はいずれも定員5人以下の単価です。定員規模が大きくなるほど1人あたりの単価は下がるため、実際の単価は自事業所の定員区分で確認してください。
減算・逓減のバリエーション#
基本報酬には、次の減算・逓減が組み合わさります2。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| 生活介護計画が作成されない場合(未計画減算) | 減算が適用される月から2月目まで×70%/3月以上連続して減算の場合**×50%** |
| 地方公共団体が設置する事業所(地公) | ×96.5%(地方公共団体が設置する指定生活介護事業所又は指定障害者支援施設の場合) |
| 医師配置がない場合(医減) | 12単位減算 |
| 定員81人以上の事業所(大所) | ×99.1% |
これらは重複して適用され、サービスコード上も「生活介護1072・地公・未計画1・医減」のように組み合わせで表現されます2。
共生型・基準該当には別の減算がある#
共生型生活介護サービス費・基準該当生活介護サービス費には、上記とは別に次の減算が設定されています2。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| 開所時間減算 | 開所時間が4時間未満×50%/4時間以上6時間未満×70% |
| 短時間利用減算 | 利用時間5時間未満の利用者が全利用者の50%以上の場合 ×70% |
共生型生活介護サービス費は、指定児童発達支援事業所・指定通所介護事業所等が行う場合が**(Ⅰ)、指定小規模多機能型居宅介護事業所等が行う場合が(Ⅱ)**に分かれます1。
施設入所者の特則#
指定障害者支援施設等が昼間実施サービスとして行う指定生活介護において、施設入所者については8時間以上9時間未満の所要時間の基本報酬は算定できません1。
ただし、同じ事業所でも指定生活介護のみの利用者(施設に入所していない通所利用者)については、生活介護計画に位置付けた標準的な時間に応じて報酬を算定できます1。施設入所者と通所者で扱いが分かれる点に注意してください。
実務チェックリスト#
- 利用者ごとに生活介護計画へ標準的な時間を位置付けているか(報酬区分の根拠はここ)
- 標準的な時間から送迎時間を除いているか(原則として含まない)
- 計画上の標準時間と実際の提供時間が乖離し続けていないか(続くなら計画見直し)
- 送迎が往復3時間以上の利用者について、片道=事業所を出発して戻るまでで数えているか
- ウの2時間加算を使う場合、サービス担当者会議での検討とサービス等利用計画への位置付けがあるか
- 送迎時の居宅内介助を加える場合、生活介護計画に位置付けた上で1日1時間以内に収めているか
- 施設入所者について8〜9時間の基本報酬を算定していないか
よくある質問#
Q. 利用者が早退した日は、報酬区分を下げる必要がありますか?#
原則として不要です。所要時間は現に要した時間ではなく生活介護計画上の標準的な時間で算定するため、当日の道路状況・天候・本人の心身の状況などやむを得ない事情で短くなった場合は、計画に位置付けられた標準的な時間に基づき算定して差し支えないとされています1。ただし短い状態が続く場合は計画の見直しを検討します1。
Q. 送迎の時間は所要時間に含めますか?#
原則として含めません1。例外は2つで、①必要なサービスを提供する事業所が利用者の居住地域になく送迎が往復3時間以上になる場合に1時間を加えられること、②送迎時に実施した居宅内での介助等(着替え・移乗・戸締り等)を生活介護計画に位置付けた上で1日1時間以内を限度に加えられること、です1。
Q. 「往復3時間以上」の3時間はどう数えますか?#
片道=送迎車両等が事業所を出発してから戻ってくるまでに要した時間、往復=往路(片道)と復路(片道)の合計です1。利用者を乗せている時間だけではなく、事業所を出て戻るまでの時間で数えます。
Q. 6時間未満の利用が多い利用者がいます。何か手立てはありますか?#
医療的ケアスコアに該当する者、重症心身障害者、行動関連項目の合計点数が10点以上である者、盲ろう者等であって、障害特性等に起因するやむを得ない理由によりサービス提供時間が6時間未満にならざるを得ない利用者については、受け入れ準備・翌日の受け入れのための申し送り事項の整理・主治医への伝達事項の整理などに実際に要した時間を、1日2時間以内を限度として標準的な時間に加えられます1。ただしサービス担当者会議での検討とサービス等利用計画への位置付けが前提です1。
Q. 介護者の都合で予定より長く預かった場合はどうなりますか?#
実際の所要時間が、居宅において介護を行う者等の就業その他の理由により計画上の標準的な時間より長時間に及ぶ場合であって、日常生活上の世話を行う場合には、実際に要した時間に応じた報酬単価を算定して差し支えないとされています1。この場合だけは実績時間で算定できます。
制度上の根拠#
- 留意事項通知「生活介護サービス費について」(対象者要件・所要時間の考え方・ア〜オの調整・施設入所者の特則・共生型)1
- 報酬算定構造「イ 生活介護サービス費」(障害支援区分5区分×利用定員10区分×所要時間7区分の単価表、未計画・地公・医減・大所の逓減、共生型の開所時間減算・短時間利用減算)2
Footnotes#
-
厚生労働省「令和6年度 費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」p.113〜116 https://www.mhlw.go.jp/content/001494356.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23
-
厚生労働省「令和8年6月施行 障害福祉サービス費等の報酬算定構造」p.389〜393・p.437 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001696433.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9