【障害福祉サービス】送迎加算の取得条件と請求のポイントを解説(就労継続支援A型・B型向け)#
就労継続支援A型・B型事業所の経営者、管理者、サービス管理責任者の皆様、日々の事業運営お疲れ様です。利用者の皆様への質の高い支援提供と事業所の安定経営の両立は、常に私たちに課せられた重要な課題です。 本稿では、事業所の運営において重要な役割を担う「送迎加算」について、取得の条件と請求のポイントを解説します。利用者の利便性向上と事業所の経営基盤強化のために、ぜひ本記事をお役立てください。
1. 送迎加算とは?基本的な考え方#
送迎加算とは、指定障害福祉サービス事業所が、利用者に対して事業所と居宅間の送迎を実施した場合に算定できる加算のことです。利用者の通所負担を軽減し、安定したサービス利用を促進することを目的としています。 就労継続支援A型・B型事業所において、送迎サービスは利用者の継続的な通所を支援する上で非常に重要な役割を果たします。特に公共交通機関の利用が困難な方や、遠隔地にお住まいの方にとって、送迎はサービス利用の有無を左右する決定的な要素となり得ます。
1.1. 対象となるサービス#
送迎加算は、就労継続支援A型・B型の他に、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)などが主な対象サービスとなります。ここでは、就労継続支援A型・B型に特化して解説を進めます。
1.2. 単位数について#
送迎加算の単位数は、片道または往復の送迎に対して設定されています。この単位数は報酬改定等により変更される可能性があるため、必ず厚生労働省や各自治体の最新の告示をご確認ください。
送迎加算は、利用者の送迎を1回実施するごとに算定可能です。利用者数が増えるほど、事業所の報酬に与える影響は大きくなりますが、算定にあたっては後述する条件をすべて満たす必要があります。
2. 送迎加算の取得条件#
送迎加算を算定するためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。これらの条件を正確に理解し、適切に運営することが必須です。
2.1. 送迎の実施体制#
- 送迎車両の確保:
- 送迎に用いる自動車は、事業所の責任において安全管理が徹底されていることが重要です。
- 車両は、利用者の乗降に支障がない構造であること、安全装置が備わっていること、適切な整備・管理が行われていることなどが求められます。
- (※送迎車両の所有形態(事業所所有、リース、職員の自家用車など)に関する規定は、指定権者によって見解が異なる場合があるため、事業所を管轄する都道府県・市町村へ事前に確認することをお勧めします。)
- 送迎を行う職員:
- 事業所の職員が送迎を行うこと。原則として、運転免許を所持している職員が運転を担当します。
- 安全運転の意識が高く、利用者の状態に合わせた介助ができる人員が望ましいです。必要に応じて、添乗員を配置することも安全管理上推奨されます。
2.2. 対象となる利用者#
- 事業所の利用契約を締結している利用者であること。
- 個別支援計画において、送迎が必要であることが位置づけられていること。
- 利用者の居宅と事業所との間の送迎であること。
- (ただし、特別な事情がある場合は、居宅以外の場所(例えば最寄りの駅など)との送迎も認められる場合がありますが、その必要性を個別支援計画に明記する必要があります。)
2.3. 利用者からの費用徴収#
- 送迎加算を算定する場合、原則として送迎に要する費用を利用者から徴収することはできません。
- ただし、送迎加算の算定額を超える実費(燃料費など)がかかる場合に限り、その超えた部分について利用者から費用を徴収することが可能な場合があります。その際は、運営規程への明記、利用者への事前説明と同意が必須となります1。
2.4. 事前の届出#
- 送迎加算を算定する際には、事前に都道府県知事または市町村長へ「介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書」を提出する必要があります2。
- 届出内容には、送迎サービスの実施体制(車両、職員配置など)や、料金徴収のルールなどを記載します。
- 届出内容に変更が生じた場合は、速やかに変更届を提出する必要があります。
3. 単位数と請求の流れ#
送迎加算を適切に算定し、請求を行うための具体的な流れを説明します。
図: 送迎加算の計画から請求までのフロー
3.1. 単位数の計算#
- 実際に送迎を行った回数に応じて算定します。
- 複数の利用者が同時に送迎車両を利用した場合の算定方法については、利用者一人ひとりに算定できると解釈されるのが一般的ですが、念のため指定権者にご確認ください。
3.2. 請求の流れ#
- 送迎実績記録の作成:
- 送迎の実施ごとに、日付、利用者氏名、送迎区間(例: 居宅⇔事業所)、送迎担当者、時間などを詳細に記録します。
- この記録は、適正なサービス提供の証拠となるため、正確かつ抜け漏れなく記入することが重要です。
- 万が一の実地指導(監査)時に提示を求められる重要な資料となります。
- 介護給付費明細書への記載:
- 毎月の介護給付費明細書に、送迎加算の単位数と回数を記載し、国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求を行います。
- 請求ソフトを使用している場合、実績入力時に送迎加算を忘れず計上しましょう。
4. 送迎加算の注意点と実務上のポイント#
適正な加算算定と安全な送迎サービス提供のために、以下の点に留意してください。
4.1. 個別支援計画への位置づけ#
送迎サービスは、利用者のニーズに基づき提供されるべきものです。サービス管理責任者を中心に、個別支援計画作成時に送迎の必要性、送迎方法、頻度などを明確に位置づけ、利用者やその家族の同意を得ておく必要があります。
4.2. 送迎記録の徹底#
前述の通り、送迎記録は非常に重要です。以下の項目を確実に記録し、サービス提供日から5年間保存してください3。
図: 送迎記録の必須項目
4.3. 送迎車の安全管理と運転手の指導#
- 車両の日常点検・定期点検: 運行前点検を徹底し、安全を確保します。定期的な整備も欠かさず実施しましょう。
- 安全運転の徹底: 職員に対して安全運転講習を実施し、法令遵守、速度制限、飲酒運転の禁止などを徹底します。
- 緊急時の対応訓練: 事故や車両故障、利用者の急変など、緊急事態発生時の対応手順をマニュアル化し、職員に周知徹底、訓練を実施しておくことが重要です。
- 賠償責任保険への加入: 万が一の事故に備え、十分な補償内容の任意保険に加入しておくことは必須です。
4.4. 他加算との併算定の可否#
送迎加算は、多くの基本報酬や他の加算と併算定が可能です。就労継続支援A型・B型における送迎加算は、個別支援計画に基づくサービス提供日において算定可能です。
5. よくある質問(FAQ)#
Q1. 送迎加算の算定時に、利用者から送迎費用をもらえますか?#
A1. 原則として徴収できません。ただし、送迎加算の報酬額を超える実費(燃料費など)が発生する場合に限り、運営規程に定めた上で、利用者から同意を得てその差額分を徴収することは可能です1。
Q2. 職員の自家用車での送迎は認められますか?#
A2. 自家用車での送迎の可否は、指定権者(都道府県・市町村)の判断によります。認める場合でも、事業所が車両の使用に関する規定(保険加入状況の確認、点検義務、費用精算方法など)を設け、責任の所在を明確にすることが求められます。必ず事前に所管行政に確認してください。
Q3. 利用者が遅刻した場合も送迎加算は算定できますか?#
A3. 送迎加算は、実際に送迎サービスを提供した場合に算定されます。利用者の都合で送迎サービスがキャンセルされた場合は算定できません。送迎車両が迎えに行ったものの、利用者が遅れて乗車し、結果として送迎サービスが提供された場合は算定可能です。
Q4. 定員超過や人員欠如の減算期間中に送迎加算は算定できますか?#
A4. 定員超過減算や人員欠如減算の対象となっている期間中は、基本報酬だけでなく、多くの加算(送迎加算を含む)が算定できなくなります。減算の理由によっては一部算定可能な加算もありますが、事業所の運営基準を遵守し、適正な運営を行うことが大前提です4。詳細は指定権者にご確認ください。
6. まとめ#
送迎加算は、就労継続支援A型・B型事業所にとって、利用者の通所支援を強化し、事業所の安定した経営に貢献する重要な加算です。この加算を適切に活用するためには、本記事で解説した取得条件を厳守し、適切な送迎体制の整備、正確な記録、そして何よりも安全管理の徹底が求められます。
利用者の皆様が安心して事業所に通い、就労支援を受けられる環境を整えることは、事業所の使命です。送迎加算の適切な運用を通じて、より質の高い支援と、より安定した事業運営を目指してください。
出典
Footnotes#
-
埼玉県 令和7年度障害福祉サービス等報酬改定の概要 P18「利用者負担の取扱い」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19929/r7syougai.pdf ↩ ↩2
-
こども家庭庁 障害児支援に係る報酬改定事項(報酬告示・留意事項通知等)P40 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/cae840ab-0405-45cb-866b-df839469ff37/c1abcff2/20250813_policies_shougaijishien_shisaku_hoshukaitei_kasan_40.pdf ↩
-
船橋市 日中活動系サービス事業所のための運営ガイドライン P27「記録の整備」 https://www.city.funabashi.lg.jp/jigyou/fukushi_kosodate/002/02/p040694_d/fil/gaidorainnittyuu.pdf ↩
-
神戸市 指定障害児通所支援事業の手引き(報酬編) P12「人員欠如減算」 https://www.city.kobe.lg.jp/documents/12810/jidoushiteitebiki20250702.pdf (注: リンク先の資料は、類似制度や他自治体の事例として参考にしたものであり、就労継続支援サービスに直接適用される内容とは限りません。必ずご自身の事業所を管轄する指定権者の最新情報をご確認ください。) ↩