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2025年「就労移行支援」報酬単価を上げる!事業所が知るべき加算・請求の極意

更新: 2026年1月7日

はじめに:2025年度報酬改定が就労移行支援事業所にもたらす変化#

2025年度の障害福祉サービス報酬改定は、質の高い支援を提供し、利用者の社会参加と就労定着を強力に推進する就労移行支援事業所にとって、報酬単価向上の大きなチャンスとなるでしょう。今回の改定では、事業所の専門性、支援の質、そして地域連携の強化がこれまで以上に評価される傾向にあります。

本記事では、就労移行支援事業所の経営者、管理者、サービス管理責任者の皆様が、2025年度改定の主要ポイントを理解し、各種加算を漏れなく、かつ適切に請求するための「極意」を解説します。単に単位数を増やすだけでなく、持続可能な事業運営と、より質の高いサービス提供体制を構築するための実践的な情報を提供します。

2025年度報酬改定の全体像と就労移行支援への影響#

2025年度の報酬改定では、障害者の就労支援を巡る社会情勢の変化や、これまでの支援実績が踏まえられ、以下のような点が重視されました。

  • 成果に基づく評価の強化: 就職実績や定着率に応じた報酬体系がより明確化され、事業所の支援効果が直接的に報酬に反映される仕組みが強化されました。
  • 専門性の高い人材の評価: サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員などの専門職の適切な配置や資質向上が、加算として評価される傾向が強まりました。特に、ジョブコーチなどの専門職配置は重要度が増しています。
  • 地域連携・多職種連携の促進: 地域における関係機関(医療機関、ハローワーク、企業、相談支援事業所など)との連携を深めることで、利用者の総合的な支援体制を強化する事業所が評価されます。
  • 個別支援の質の向上: 利用者一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかな個別支援計画の策定とその実践、及び定期的な見直しが重視されます。

就労移行支援事業所においては、これらの改定の方向性を理解し、事業所運営全体で質の向上と効率化を図ることが、報酬単価を最大化する鍵となります。

報酬単価を最大化するための主要加算と請求のポイント

2025年度改定における主要な加算項目とその請求のポイントを具体的に解説します。これらの加算は、事業所の支援体制や実績を適切に評価し、報酬に反映させるための重要な要素です。

1. 基本報酬体系の見直しと理解#

就労移行支援の基本報酬は、事業所の定員規模や利用期間、支援実績(就職率、定着率など)に応じて変動します。2025年度改定では、特に以下の点に注意が必要です。

  • 定員規模別の評価: 小規模事業所から大規模事業所まで、それぞれの特性に応じた報酬単価が設定されています。事業所の規模に見合った効率的な運営が求められます。
  • 利用期間に応じた評価: 就労移行支援や就労定着支援の報酬は、就職後の定着率(例:6ヶ月後)が高いほど高く設定される報酬体系であり、利用開始から一定期間が比較的手厚い報酬というわけではありません。定着率の高さに応じて報酬が変動する段階的な評価制度です1
  • 地域区分: 事業所の所在地に応じた地域区分が適用され、同じサービス内容でも地域によって単位数が異なります。

2. 就労定着支援体制加算#

就労移行支援事業所が、就労移行支援終了後も利用者の職場定着を支援する体制を構築し、実際に支援を提供した場合に算定できる加算です。

  • 要件:
    • 就労定着支援事業所に配置が義務付けられているのは、サービス管理責任者と就労定着支援員です。就労定着支援員には就労支援の経験が望ましいとされていますが、社会福祉士、精神保健福祉士、キャリアコンサルタントといった特定の専門職の配置が必須という規定はありません。これらの資格は「福祉専門職員配置等加算」の要件になる場合があります2
    • 就職した利用者に対し、定期的な面談や職場訪問、企業との連絡調整など、継続的な支援計画に基づいた支援を行っていること。
    • 当該支援の記録が適切に整備されていること。
  • 請求のポイント:
    • 就労移行支援から就労定着支援に移行する利用者の割合や、定着支援後の離職率などが評価の対象となることがあります。
    • 就労定着支援計画の作成と、計画に基づいた支援内容の具体的な記録が重要です。

3. 職場適応援助者配置加算(ジョブコーチ加算)#

障害者が職場に適応できるよう、専門的な支援を行う「職場適応援助者(ジョブコーチ)」を配置している事業所が算定できる加算です。

  • 要件:
    • 職場適応援助者は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)または厚生労働大臣が定める「職場適応援助者養成研修」を修了している必要があります3。都道府県等から認定を受ける必要があるという規定はありません。
    • 利用者の就職先の企業に出向き、利用者本人だけでなく、職場の同僚や上司に対しても指導・助言を行っていること。
    • 支援計画に基づき、定期的な訪問支援や相談対応を実施していること。
  • 請求のポイント:
    • ジョブコーチの配置人数や、支援対象となる利用者の数、支援時間などが算定要件に関わります。
    • ジョブコーチによる支援内容(アセスメント、訓練、企業側への調整、定着支援など)を具体的に記録し、支援の成果を明確にすることが重要です。

4. サービス管理責任者配置等加算#

サービス管理責任者の適切な配置と資質向上が評価される加算です。

  • 要件:
    • 指定基準に定められた数以上のサービス管理責任者を配置していること。
    • サービス管理責任者が定期的な研修(基礎研修、更新研修等)を受講し、専門性の維持・向上に努めていること。
    • 支援提供プロセス全体において、サービス管理責任者が適切な役割を果たしていること。
  • 請求のポイント:
    • サービス管理責任者の配置人数、常勤・非常勤の別、研修履歴を常に最新の状態に保つことが必要です。
    • 個別支援計画の質の向上や、会議体への参画状況なども間接的に評価されることがあります。

5. 質の高い支援体制加算(専門的支援体制加算など)#

事業所の職員配置、専門職の割合、または特定の専門性(例:精神科医、心理職との連携)に応じた加算です。

  • 要件:
    • 基準を上回る手厚い職員配置を行っていること(例:常勤職員の割合が高い、利用者に対する職員の比率が高い)。
    • 就労系障害福祉サービスの基本人員配置において、精神保健福祉士、社会福祉士、臨床心理士(公認心理師)、キャリアコンサルタントといった特定の専門職の配置が必須とはされていません。これらの資格は「福祉専門職員配置等加算」の要件になる場合があります4
    • 外部の専門機関との連携体制が確立されており、必要に応じて専門的助言を得られる体制にあること。
  • 請求のポイント:
    • 職員の資格、勤務形態、実務経験を正確に把握し、加算要件に合致しているか確認が必要です。
    • 外部連携の記録(連携協定書、会議議事録、助言内容など)を整備し、実態が伴っていることを証明できるようにしておきましょう。

6. 成果連動型加算(就職実績、定着実績)#

2025年度改定で特に注目されるのが、就職実績や定着実績に直結する成果連動型の加算の強化です。

  • 要件:
    • 一定期間内の就職者数や就職率が基準を上回ること。
    • 就労移行支援および就労定着支援では、就職後の定着率(例:6ヶ月後、1年後)が高いほど基本報酬が高くなる報酬体系が設定されています。しかし、特定の「基準を上回ること」が必須要件として定められているわけではなく、定着率に応じた段階的な報酬単価が適用されます5
    • 利用者の就労による賃金向上など、質的な成果も評価対象となる場合があります。
  • 請求のポイント:
    • 就職支援から就職後のフォローアップまで、一貫した支援体制を構築し、実績を積み重ねることが重要です。
    • 就職日、企業名、賃金、定着状況などを正確に記録し、行政への報告を適切に行う必要があります。

以下に、成果連動型報酬における定着率と報酬の一般的な関係をフローチャートで示します。

図: 成果連動型報酬における定着率と報酬単価の変動

7. 初期加算#

新規利用者が利用を開始した際に算定できる加算です。

  • 要件:
    • 利用開始日から30日または60日間の間、集中的な支援を提供すること6
    • 個別支援計画の作成を早期に行い、利用者の状況把握に努めること。
  • 請求のポイント:
    • 新規利用者の受け入れ体制を整備し、最初の支援がスムーズに行われるようにすることが重要です。
    • 算定期間を正確に把握し、漏れなく請求します。

8. 相談支援連携加算#

地域の相談支援事業所との連携を評価する加算です。

  • 要件:
    • 計画相談支援事業所と密接に連携し、利用者の地域生活全般にわたる支援ニーズに対応していること。
    • 定期的な情報交換や合同会議の実施、サービス担当者会議への参加など。
  • 請求のポイント:
    • 連携協定の締結、会議の議事録、情報共有の記録などを整備し、連携の実態を示す証拠を残しましょう。

請求実務における「極意」と注意点

加算要件を満たすだけでなく、それを適切に請求し、事業所の安定経営に繋げるためには、以下の「極意」を実践することが重要です。

  1. 徹底した情報収集と理解:

    • 厚生労働省からの通知、Q&A、自治体からの指導要綱など、最新情報を常に確認し、報酬改定の内容や加算要件を正確に理解する。不明点は必ず自治体や国保連に確認すること。
    • 加算要件チェックリストを作成し、定期的に自己点検を行う。
  2. 正確かつ詳細な記録の徹底:

    • 個別支援計画はもちろんのこと、日々の支援記録、面談記録、モニタリング記録、会議議事録など、あらゆる記録を正確かつ具体的に残す。
    • 特に、加算の根拠となる活動(ジョブコーチ支援の記録、定着支援の記録、連携活動の記録など)は、日時、内容、担当者、成果などを明確に記載する。
    • これらの記録は、実地指導・監査の際に最も重要視される書類です。
  3. 多職種・多機関との連携強化:

    • 事業所内の全職員が連携の重要性を認識し、情報共有を密に行う。
    • 地域の医療機関、ハローワーク、企業、相談支援専門員などとの関係性を構築し、定期的な情報交換や合同支援会議を積極的に実施する。連携実績が加算要件となるケースも多いため、記録を残すこと。
  4. PDCAサイクルの実践:

    • サービス提供計画(Plan)→支援実施(Do)→効果測定・評価(Check)→改善(Action)のサイクルを日常的に回す。
    • 特に「Check」の段階では、加算要件の充足状況や支援効果を客観的に評価し、必要に応じて「Action」で改善策を講じる。
  5. コンプライアンスの徹底と内部監査:

    • 報酬請求に関する法令・規則を遵守し、不正請求は絶対に避ける。
    • 定期的に内部監査を実施し、請求漏れや誤請求がないか、また加算要件が満たされているかを確認する体制を構築する。
  6. 専門職の育成と配置戦略:

    • サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、ジョブコーチなどの専門職の資格取得や研修受講を奨励し、質の高い人材を育成・確保する。
    • 手厚い人員配置が加算要件となる場合があるため、事業所の財政状況も考慮しつつ、戦略的な人員配置計画を立てる。

よくある質問と回答

Q1: 加算を多く算定すると、行政からの監査で不利になりますか?#

A1: いいえ、適切に要件を満たし、正当な根拠に基づいて加算を算定しているのであれば、監査で不利になることはありません。むしろ、積極的に加算を算定している事業所は、質の高いサービス提供体制を構築していると評価されることがあります。重要なのは、全ての加算について、その算定要件をクリアしている明確な証拠(記録、書類)を提示できることです。

Q2: サービス管理責任者の人員配置要件を満たすのが難しいです。どうすればいいですか?#

A2: サービス管理責任者の確保は多くの事業所にとって課題です。以下の対策を検討してください。

  • 複数人の育成: 既存職員に資格取得を促し、複数体制で育成を進める。
  • 外部からの採用: 経験者採用に力を入れる。
  • 計画的な配置: 利用者数の増減を見据え、計画的に配置を行う。
  • 兼務の検討: 一定の条件下で他の職種との兼務が認められる場合があるので、自治体に確認する。
  • 研修への積極的な参加: 研修期間中も要件を満たすための特例措置がないか、情報収集する。

Q3: 就職実績がなかなか上がらない場合、どのような加算が狙えますか?#

A3: 就職実績が伸び悩む場合でも、事業所の努力や体制を評価する加算はあります。

  • 質の高い支援体制加算: 職員配置基準の強化、専門職(精神保健福祉士等)の配置。
  • 個別支援計画作成加算: 個別支援計画の質と実施プロセスへの評価。
  • 相談支援連携加算: 地域の相談支援事業所との連携強化。
  • 初期加算: 新規利用者の丁寧なアセスメントと支援。 これらの加算は、就職という成果に至るまでのプロセスや体制を評価するものであり、事業所の基盤強化に繋がります。並行して、就職実績向上のための具体的な支援方法の見直しや企業開拓に注力することも不可欠です。

Q4: 2025年度改定で最も注目すべき変更点は何ですか?#

A4: 2025年度改定で最も注目すべきは、成果連動型報酬のさらなる強化と、専門性の高い支援への評価の深化です7。就職者数や定着率が直接的に報酬に反映される仕組みがより精緻化され、事業所の支援効果がダイレクトに評価されるようになりました。また、ジョブコーチや専門職配置に対する加算が手厚くなることで、より質の高い、専門的な支援を提供する事業所が優遇される傾向が強まっています。これは、単にサービスを提供するだけでなく、「どのような成果を出したか」「どのような質の高い支援を提供したか」が問われる時代への移行を明確に示しています。

まとめ:2025年度報酬改定をチャンスに変える#

2025年度の障害福祉サービス報酬改定は、就労移行支援事業所にとって、事業の質の向上と安定的な経営を両立させるための重要な機会です。単に既存のサービスを継続するだけでなく、改定の意図を深く理解し、事業所の強みを活かせる加算を戦略的に算定することで、報酬単価を最大化することが可能です。

そのためには、最新情報の継続的な学習、正確な記録の徹底、質の高い人材の育成、そして地域における多機関・多職種連携の強化が不可欠です。これらの「極意」を実践し、利用者の就労を通じた社会参加を一層促進するとともに、事業所自身の持続的な発展を目指しましょう。


脚注

Footnotes#

  1. 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P11-12)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P17,21)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、豊橋市「障害福祉サービス事業所に係る加算・減算に関するQ&A(P23)」(https://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/109613/kasanmanyuaru.pdf)

  2. 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P12)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P21)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、佐賀県「就労定着支援の指定に係る要件等について(P2-3)」(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003110118/3_110118_up_6ncdsyg0.pdf)、豊橋市「障害福祉サービス事業所に係る加算・減算に関するQ&A(P25)」(https://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/109613/kasanmanyuaru.pdf)

  3. 厚生労働省「障害者支援に関する地域連携・重度化対応に係る報酬・基準等について(P5)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001500700.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P22)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)

  4. 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P13)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf)、厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P11)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P18)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、沖縄県「就労選択支援における指定基準について(P4)」(https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/066/shurosentaku_youken.pdf)

  5. 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P11-12)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P17,21)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、佐賀県「就労定着支援の指定に係る要件等について(P2)」(https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003110118/3_110118_up_6ncdsyg0.pdf)、豊橋市「障害福祉サービス事業所に係る加算・減算に関するQ&A(P23)」(https://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/109613/kasanmanyuaru.pdf)、大阪市「令和6年度報酬改定に関するQ&Aの掲載について(P15)」(https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000529648.html)

  6. 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P11)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf)、厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P17)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A Vol.1(P24)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001488532.pdf)

  7. 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第19回)資料1(P17,21)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001590369.pdf)、厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(P13)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001571785.pdf)

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