障害福祉サービス【2025年】医療連携体制加算で報酬アップ!算定ポイント#
はじめに
2025年度の障害福祉サービス報酬改定は、障害を持つ方々が地域で安心して生活し、就労を継続できる環境を整備することを目的として、多岐にわたる見直しが行われました。その中でも、特に注目すべき加算の一つが「医療連携体制加算」です。就労継続支援A型・B型事業所において、利用者の医療的ニーズへの対応は、サービスの質向上と安定した事業運営に不可欠です。
本記事では、2025年度の医療連携体制加算の算定要件、単位数、そして実務上の重要なポイントを、事業所の経営者、管理者、サービス管理責任者の皆様に向けて詳しく解説します。この加算を適切に活用することで、事業所の報酬アップはもちろん、利用者の安全・安心な就労支援体制を強化することができます。
医療連携体制加算とは?
医療連携体制加算は、障害福祉サービス事業所が利用者の医療的なニーズに対し、適切に対応できる体制を整備した場合に算定できる加算です。特に就労継続支援A型・B型事業所においては、体調不良時の対応、服薬管理、定期的な健康状態の把握など、医療との連携が欠かせません。この加算は、そのような医療的サポート体制の構築を評価し、事業所の運営を支援することを目的としています。
この加算を算定することで、事業所は以下のようなメリットを享受できます。
- 報酬の増加: サービスの質に応じた適正な報酬を得られます。
- 利用者の安心感向上: 医療的な支援が手厚くなることで、利用者とその家族は安心してサービスを利用できます。
- 職員の専門性向上: 医療知識を持つ専門職との連携により、職員のスキルアップにも繋がります。
- 緊急時の対応強化: 体調急変時など、緊急事態への迅速かつ適切な対応が可能になります。
2025年度の算定要件と単位数#
医療連携体制加算は、その実施体制に応じて複数の区分が設けられています。就労継続支援A型・B型において主に算定が想定される加算区分と、その要件・単位数を解説します。
図: 医療連携体制加算の区分と概要
医療連携体制加算(Ⅰ)
最も基本的な区分であり、事業所内に看護職員を配置することで算定できます。
- 算定要件: 事業所の従業者として、看護職員(保健師、助産師、看護師又は准看護師)を1名以上配置し、利用者の健康管理や医療的ケアに関する調整等を行う体制を整えていること。この看護職員は、常勤換算で1以上であることが求められる場合があります1。
- 主なサービス内容: 利用者の健康状態の把握、服薬管理、体調不良時の観察・初期対応、医療機関との連絡調整、個別支援計画への医療的視点からの助言など。
- 単位数: 利用定員や事業所の規模によって異なりますが、1日につき数十単位から加算されます2。
医療連携体制加算(Ⅱ)
医療機関等との連携により、看護職員が事業所を訪問し、利用者への看護を行う場合に算定できます。
- 算定要件: 医療機関や訪問看護ステーション等との連携体制を構築し、当該医療機関等の看護職員が、事業所を訪問して利用者に必要な看護を行うこと。この訪問は、利用者ごとの個別支援計画に基づき、定期的に行われる必要があります。
- 主なサービス内容: 事業所内での医療的ケア(インスリン注射の介助、簡易的な処置など)、体調管理の指導、職員への医療的研修など。
- 単位数: 訪問回数や滞在時間によって変動します。※具体的な単位数については、報酬改定の正式な告示をご確認ください。
医療連携体制加算(Ⅲ)
利用者が医療機関を訪問し、看護を受ける場合に算定できます。
- 算定要件: 医療機関との連携体制を構築し、利用者が当該医療機関を訪問して、看護を受けることが可能である体制を整えていること。利用者の同意と個別支援計画に基づき、医療機関への受診調整や付き添いなどが適切に行われる必要があります。
- 主なサービス内容: 定期的な健康相談、専門的な医療的アドバイス、症状悪化時の迅速な受診対応など。
- 単位数: 月に数回以上の訪問を要件とすることがあります。※具体的な単位数については、報酬改定の正式な告示をご確認ください。
医療連携体制加算(Ⅳ)〜(Ⅷ)
これらの区分は、特に医療的ケア(たん吸引、経管栄養など)が必要な利用者に対し、より専門的かつ手厚い医療連携体制を構築した場合に算定されます。
- 算定要件: 看護職員の常時配置や、医療機関との緊密な連携により、特定医療的ケアを必要とする利用者への支援を確保していること。利用者数に応じた看護職員の配置基準が設けられている場合があります3。
- 主なサービス内容: たん吸引、経管栄養、人工呼吸器管理など、日常的な医療的ケアの実施、利用者への医療機器の管理指導、緊急時の医療機関との連携など。
- 単位数: 医療的ケアの重症度や頻度、看護職員の配置状況に応じて、1日につき32単位から800単位といった高額な単位が加算される可能性があります2。
算定における実務上のポイント
医療連携体制加算を円滑に算定し、効果的に運用するためには、いくつかの実務上のポイントを押さえる必要があります。
1. 医療機関との連携体制の構築と維持#
最も重要なのは、事業所の近隣にある病院、診療所、訪問看護ステーションなどとの連携体制を具体的に構築することです。
- 連携協定の締結: 協力医療機関として、書面による協定を結ぶことが原則として必要です。指定申請時に協定書の提出が求められる場合もあります1。緊急時の対応、利用者情報の共有に関する取り決めなどを明確にします。
- 定期的な連絡・情報交換: 連携医療機関の担当者と定期的に情報交換を行い、利用者の健康状態や医療的ニーズの変化を共有します。
- 職員研修の実施: 連携医療機関の協力を得て、事業所職員向けの医療的ケアに関する研修を実施することで、全体の対応能力を向上させます。
2. 看護職員の確保と配置#
医療連携体制加算(Ⅰ)や(Ⅳ)〜(Ⅷ)の算定には、看護職員の配置が必須です。
- 資格要件の確認: 保健師、助産師、看護師、准看護師のいずれかの資格を持つ職員を配置します。
- 常勤換算の遵守: 常勤換算1名以上といった要件がある場合、非常勤職員を複数配置して要件を満たすことも可能ですが、勤務時間の合計を正確に管理する必要があります。
- 役割の明確化: 配置された看護職員の具体的な業務内容(健康管理、医療的ケア、職員への指導、医療機関との連携など)を明確にし、個別支援計画に反映させます。
3. 記録の徹底と管理#
算定の根拠となる記録は非常に重要です。監査時にも確認されるため、日々の記録を正確に行う必要があります。
- 看護記録: 看護職員が行った健康チェック、服薬管理、医療的ケア、緊急対応などの内容を詳細に記録します。
- 連携記録: 医療機関との連絡内容、助言、指示、受診結果などを記録します。
- 個別支援計画への反映: 利用者の医療的ニーズと、それに対する支援内容、医療連携体制加算の算定計画を個別支援計画に具体的に記載します。
- 利用者・家族への説明と同意: 医療連携体制に関する説明を十分に行い、同意を得た上でサービスを提供します。
4. サービス管理責任者の役割#
サービス管理責任者は、医療連携体制加算の算定において中心的な役割を担います。
- アセスメントと個別支援計画の策定: 利用者の医療的ニーズを正確にアセスメントし、適切な医療連携体制加算の区分を選定し、個別支援計画に盛り込みます。
- 多職種連携の推進: 事業所内の職員(生活支援員、職業指導員)と看護職員、外部の医療機関との連携を円滑に進めます。
- 体制整備の管理: 必要な記録が適切に行われているか、看護職員の勤務体制が要件を満たしているかなどを管理・監督します。
5. 事前準備と計画#
- 現状把握: 現在の利用者の医療的ニーズ、職員体制、連携医療機関の状況を把握します。
- 加算区分の検討: どの医療連携体制加算を算定できるか、または算定すべきかを検討します。
- 職員の増員・研修計画: 必要に応じて看護職員の採用や、既存職員への研修計画を立てます。
- 予算計画: 加算による収入増を見込み、必要な設備投資や人件費を検討します。
よくある質問(Q&A)#
Q1: 複数の医療連携体制加算を同時に算定できますか?#
A1: 原則として、複数の医療連携体制加算を同時に算定することはできません。最も要件が重く、かつ最も高い単位数の加算を一つ選択して算定することになります。※この点については、報酬改定の正式な告示や自治体のQ&Aをご確認ください。
Q2: 看護職員は非常勤でも良いですか?#
A2: 医療連携体制加算の区分によっては、非常勤の看護職員でも算定が可能です。ただし、「常勤換算で1以上」といった要件が設けられている場合があります。この場合、複数の非常勤職員の勤務時間を合計して、常勤職員1人分の勤務時間(週32時間以上が一般的)を満たせば要件を満たすことができます3。
Q3: どのような場合に算定が認められないことがありますか?#
A3: 主に以下のような場合に算定が認められない可能性があります。
- 算定要件を満たしていない場合(看護職員の配置不足、連携体制の不備など)。
- 記録が不十分である場合(看護記録、連携記録、個別支援計画への記載漏れなど)。
- 医療連携体制が形骸化しており、実質的な医療的支援が行われていないと判断された場合。
- 利用者やその家族への説明と同意が適切に行われていない場合。
Q4: 連携する医療機関に指定はありますか?#
A4: 特定の医療機関の指定はありませんが、原則として保険医療機関であることが求められます。また、利用者の状況や事業所の所在地を考慮し、緊急時に迅速な対応が可能な距離にある医療機関や、障害者医療に理解のある医療機関との連携が望ましいでしょう。
Q5: 医療的ケアが必要な利用者以外にも医療連携体制加算は算定できますか?#
A5: はい、医療的ケア(たん吸引や経管栄養など)が必要な利用者以外にも、医療連携体制加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)などは算定の対象となり得ます2。これらの加算は、利用者の一般的な健康管理や体調不良時の対応、服薬管理など、幅広い医療的ニーズに対応する体制を評価するものです。特定の医療的ケアが必要な利用者向けの加算(医療連携体制加算(Ⅳ)以降)は、その要件を満たす利用者への支援がある場合に算定できます。
まとめ
2025年度の医療連携体制加算は、就労継続支援A型・B型事業所が、利用者の医療的ニーズにきめ細かく対応し、より質の高い支援を提供するための重要な報酬項目です。この加算を適切に算定することは、事業所の安定経営に寄与するだけでなく、利用者が安心して地域で生活し、就労を継続するための基盤を強化することに直結します。
利用者の「働きたい」という思いを、医療面からも強力にサポートしていくことが、これからの就労継続支援事業所に求められる役割です。
出典
Footnotes#
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豊橋市「障害福祉サービス事業の手引き」(https://www.city.toyohashi.lg.jp/secure/116716/01_1shogaishatebiki.pdf) ↩ ↩2
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京都市会「令和7年度国の施策及び予算に関する提案・要望書(厚生労働省関係)資料」(https://www2.city.kyoto.lg.jp/shikai/img/iinkai/kankyohukushi/R07/date/070421_hofuku3.pdf) ↩ ↩2 ↩3
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大阪府「障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等について」(https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/4965/sya--tebiki.pdf) ↩ ↩2