就労継続支援事業所の経営者、管理者、サービス管理責任者の皆様、日々の事業運営、誠にお疲れ様です。利用者様の新たなスタートを支える上で、関係機関との連携は極めて重要です。その連携の質を示す指標の一つに「初回加算」があります。
この加算は、皆様の事業所が直接算定するものではなく、主に計画相談支援事業所が算定するものです。しかし、その仕組みを深く理解することは、利用者様の円滑な受け入れ、相談支援専門員とのスムーズな連携、そして質の高い個別支援計画の策定に不可欠です。
本記事では、2025年度の報酬改定を見据え、就労継続支援の利用開始時に算定される「初回加算」に焦点を当てます。その算定要件や単位数を正しく理解し、相談支援事業所との連携を強化するための実務上のポイントを、専門的な視点から詳細に解説します。
1. 初回加算とは? 基本の理解#
初回加算は、主に計画相談支援事業所が、新規の利用者に対して質の高いアセスメントを行い、初めて「サービス等利用計画」を作成することを評価する加算です。利用者様が安心して適切な障害福祉サービス(就労継続支援を含む)の利用を開始し、その後の支援がスムーズに進むよう、初期段階での相談支援専門員の丁寧な関わりを促すことを目的としています。
1.1. 目的と趣旨#
初回加算の主な目的は以下の通りです。
- 利用者様の円滑なサービス利用開始の促進: 新規利用者様が適切なサービスに繋がり、安心して支援を受けられるよう、初期段階での手厚い相談支援を評価します。
- サービス等利用計画の早期策定と質の向上: 利用者の意向を尊重したアセスメントに基づき、サービス等利用計画を適切に作成することで、一人ひとりのニーズに応じた支援の土台を築きます。
- 多職種連携の強化: 就労継続支援事業所や医療機関など、関係機関との連携を初期段階から密に行うことで、利用者様への総合的な支援体制を構築します。
1.2. 対象サービス#
初回加算は、計画相談支援および障害児相談支援で算定可能です。本記事では、就労継続支援の利用者が対象となる計画相談支援に特化して解説します。
1.3. 算定のタイミング#
初回加算は、相談支援専門員が利用者様のサービス等利用計画を新規に作成した月に限り、1回のみ算定が可能です。
2. 2025年度 単位数と要件詳細#
2025年度においても、初回加算の基本的な考え方は維持される見込みです。ここでは現行制度に基づいた単位数と要件を解説します。
2.1. 単位数#
計画相談支援における初回加算は、利用者1人につき 300単位/月 です1。 これは1単位10円で換算すると、利用者1人あたり3,000円の加算となります(※金額は地域区分により異なります)2。
| サービス種別 | 算定単位数 | 金額換算(1単位10円の場合) | 算定回数 |
|---|---|---|---|
| 計画相談支援 | 300単位 | 3,000円 | 1回のみ |
2.2. 具体的な算定要件#
初回加算を算定するためには、計画相談支援事業所が以下のいずれかの要件を満たす必要があります3。
-
新規にサービス等利用計画を作成した場合:
- 当該利用者について、初めてサービス等利用計画を作成した場合。
-
一定期間サービス利用がなかった利用者の計画を再度作成した場合:
- 障害福祉サービスを利用する月の前6ヶ月間において、当該利用者がいかなる障害福祉サービスも利用していない場合。
上記のいずれかを満たし、相談支援専門員がアセスメントを実施し、サービス担当者会議等を経てサービス等利用計画を作成・交付した場合に算定されます。
図: 初回加算の算定可否判断フロー
3. 円滑な連携と利用者支援のための実務ポイント#
就労継続支援事業所が初回加算の制度を理解し、相談支援事業所と効果的に連携するためのポイントを解説します。
3.1. サービス等利用計画と個別支援計画の連携#
- 情報提供の重要性: 利用者様の受け入れを検討する段階で、事業所の支援内容や特色、受け入れ可能な配慮事項などを相談支援専門員へ正確に伝えます。これにより、サービス等利用計画の現実性と精度が高まります。
- サービス担当者会議への積極的な参加: サービス担当者会議は、多職種が連携する重要な場です。サービス管理責任者(サビ管)が積極的に参加し、専門的見地から意見を述べることで、より質の高い計画作成に貢献できます。
- 計画の整合性を図る: 相談支援専門員が作成したサービス等利用計画の意向や目標を踏まえ、サビ管は具体的な支援内容を盛り込んだ個別支援計画を作成します。両計画の整合性が取れていることが、一貫した支援の鍵となります。
3.2. 相談支援専門員との日頃からの関係構築#
- 密な情報共有: 新規利用者様の受け入れ前面談や体験利用の様子など、アセスメントに資する情報を速やかに相談支援専門員と共有します。
- 地域のネットワーク活用: 地域の自立支援協議会や連絡会などに積極的に参加し、地域の相談支援事業所との顔の見える関係を築いておくことが、いざという時の円滑な連携につながります。
3.3. 記録の徹底と連携の可視化#
- 連携プロセスの記録: 相談支援専門員との電話や会議の内容(日時、担当者、内容)など、連携のプロセスを支援記録に詳細に残しておきましょう。これは、支援の経過を振り返る上で重要なだけでなく、適切な連携が行われていることの証跡にもなります。
- 個別支援計画作成のタイミング: 個別支援計画は、サービスの利用開始前までに作成し、利用者様の同意を得ておく必要があります4。利用開始後に作成することは運営指導の指摘対象となるため、相談支援事業所からの情報提供を受け次第、速やかに作成プロセスを進めることが重要です。
3.4. サービス管理責任者の役割#
サビ管は、相談支援専門員との連携における「要」となる存在です。
- 連携のハブ機能: 相談支援専門員から提供された情報を現場職員に正確に伝え、現場からの情報を集約して相談支援専門員にフィードバックする、連携のハブとしての役割を担います。
- 専門性の発揮: サービス等利用計画の内容を深く理解し、それを事業所の支援にどう落とし込むかを具体的に示す専門性が求められます。
4. よくある質問(FAQ)#
Q1: 一度退所した利用者様が、再度同じ事業所を利用する場合、初回加算の対象になりますか?#
A1: 初回加算を算定するのは計画相談支援事業所です。就労継続支援事業所を一度退所し、6ヶ月以上どの障害福祉サービスも利用していなかった方が、再度サービス利用を希望し、計画相談支援事業所が新たにサービス等利用計画を作成した場合は、初回加算の対象となります3。
Q2: 利用者様が短期間で退所した場合でも、初回加算は算定されますか?#
A2: はい。初回加算はサービス等利用計画を新規に作成したことに対する評価です。算定要件を満たしていれば、その後のサービス利用期間の長短に関わらず、計画相談支援事業所は加算を算定できます5。
Q3: 他の就労継続支援事業所から移ってきた利用者様の場合はどうですか?#
A3: この場合も、その利用者様が「過去6ヶ月間、障害福祉サービスを利用していなかった」等の要件を満たせば、計画相談支援事業所は初回加算を算定できます。どの事業所を利用していたかではなく、サービス利用の空白期間などが判断基準となります3。
Q4: 計画相談支援事業所に相談支援専門員がいない場合、初回加算は算定できますか?#
A4: いいえ、算定できません。初回加算は、計画相談支援事業所に配置された相談支援専門員が、サービス等利用計画の作成という専門的な業務を行うことに対して算定されるためです6。相談支援専門員の適切な配置と職務遂行が、加算算定の大前提です。
5. まとめ#
障害福祉サービスの「初回加算」は、計画相談支援事業所が新規利用者の支援の土台を築く上で重要な評価です。就労継続支援事業所の皆様がこの加算を直接算定することはありませんが、その仕組みを理解することは、利用者様への支援の質を大きく左右します。
相談支援専門員が質の高いサービス等利用計画を作成できるよう、事業所の情報を積極的に提供し、サービス担当者会議で専門性を発揮すること。そして、その計画に基づき、利用開始前に質の高い個別支援計画を策定すること。この一連の円滑な連携こそが、利用者様の希望に満ちたスタートを支え、事業所全体の支援の質を高める鍵となります。
本記事が、皆様の事業所運営と、より良い地域連携の一助となれば幸いです。
脚注
Footnotes#
-
神戸市「計画相談支援マニュアル(第4.1版)」P.18 (https://www.city.kobe.lg.jp/documents/56675/202504keikakumanyuarudai4_1hann.pdf) ↩
-
下関市「令和元年度障害福祉サービス事業者等集団指導資料」P.27 (https://www.city.shimonoseki.lg.jp/uploaded/life/1916_305137_misc.pdf) ↩
-
墨田区「相談支援事業の手引き(運営・報酬請求編)」P.19 (https://www.city.sumida.lg.jp/online_service/sinsei/syougai/soudanshien.files/tebikiunneihousyuuseikyuu.pdf) ↩